『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第12話 ロボット

 

飛行機は何とか海原に浮かぶ孤島に辿り着き、砂浜に強引に胴体着陸した。

続いてロボットも減速しきれぬまま突っ込んできて、頭から砂浜に激突。

砂煙が消えると、ロボット兵は頭部が完全に埋まった状態で逆さまになって停止していた。

 

「だ、大丈夫なんですか……?」

 

「機体の付け根から車輪が取れてしもうたくらいじゃ。

 他に大きな損傷はない。エンジンは結構ギリギリじゃったがな」

 

「いやそっちもですけど……」

 

飛行機から降りた3人。

パズーとシータは砂に埋もれているロボット兵を距離を取って警戒するが、ヒノカミはそちらに構わず機体前面のエンジンに手を添え熱を放出させている。

 

 

ズボッ

 

「うわっ!?」

「キャッ!?」

 

ロボット兵は無事な右腕と壊れた左腕を使い砂の中から勢いよく顔を出した。

そして頭部がぐるりと360度回転すると、少しずつ後ずさりする二人組に、正確には少年の後ろに隠れている少女に視点を定めた。

 

(--・--・--)

 

ふらつきながら立ち上がったロボット兵は、こうして見上げるとかなりの巨体だ。

どうやら右足も足首から先がないらしい。右足だけ砂の中に深々と突き刺す形でバランスを取っている。

 

(-・-)

 

少し前かがみになったロボット兵はゆっくりと右手を胸元に添える。

するとシータの胸元から服を透過して伸びた光の線が、ロボット兵の胸にあるラピュタの紋章に繋がる。

 

「えっと……これは……?」

 

「敬礼しとるんじゃよ。主君に対してな」

 

出発直後にヒノカミから『軍が確保したラピュタのロボット兵が暴れているらしい』と聞かされたパズーたち。

彼女が嘘をつかないと知っていても、こうして目の当たりにしなければ信じ切ることはできなかっただろう。

そして『ロボット兵を見つけたから、軍がラピュタの実在を確信したのだろう』という彼女の推測にも納得できた。

 

「試しに何か命じてみよ」

 

「え!?その……無理して立たなくてもいいのよ?

 怪我した足だと大変でしょう?」

 

(-・-・-)

 

頭部中央のセンサーが何度か点滅すると、ロボット兵は四つん這いになった。

腕も足も無数の関節が蛇腹のようにつながった構造なので、肘や膝はないようだ。

左腕がないため三脚だが、少なくとも直立よりは楽な姿勢なのだろう。

 

「聞いてくれた……のかな?」

 

「そりゃラピュタ王家に仕えるロボットの兵隊じゃからな。

 飛行石を持つリュシータ王女に従うのは当然じゃろうて」

 

「ラピュタには……こんなに恐ろしいロボットがたくさんいるんですか……?」

 

実際に自分に従う姿を見ても、怯えるシータはパズーの後ろに隠れたままでいる。

 

「そう怖がってやるな。彼もまた必死だったのじゃろう」

 

「でも……っ」

 

改めて見るとロボットの体には攻撃を受けた痕が至るところにあり、軍に対する攻撃が正当防衛だったことは間違いあるまい。

だがつい先ほどまで圧倒的な力で破壊の限りを尽くした存在でもあるのだ。

あれだけの損害が出て犠牲者がいないはずがない。

このロボット兵は、多くの人間を殺した。

 

「……ならばお主がストッパーになってやれ」

 

「私が?」

 

「彼は良くも悪くも命令に忠実じゃ。

 最優先事項はお主の安全じゃろうから、お主が命の危機ともなれば禁を破りかねんが、お主が『やめて』と言えばそれに従うじゃろう」

 

「……お願い。もう人を傷つけたり、殺したりしないで」

 

(・ーー・)

 

「……『わかった』って」

 

「言葉がわかるの!?」

 

「そんな気がするだけ」

 

「うむうむ、とにかくこれで一安心じゃな。

 しかし此奴をどうするか……」

 

軍が追ってくるかも知れないしほったらかしにするわけにはいかない。

この周辺には無人島しかないはずだが絶対ではないし、偶然この近くに来た一般人に見つかればとんでもない騒動になる。

彼自身もリュシータ王女の傍にいることを望んでいるだろうし連れて行く以外の選択肢はないが、彼は損傷が激しくラピュタまで自力で飛んで着いてくるのは不可能だ。

 

「この飛行機で運ぶしかないか」

 

「でも重そうだよね……飛行石で浮かべられるかな?」

 

「正直厳しいじゃろうが、他に手はない。まずは試すとしよう。

 シータよ、彼にしばらくその場を動かぬよう頼んでくれ」

 

「え、あ、はい。ごめんなさい、しばらくそのままでいて?」

 

(ーー・・ーー)

 

 

 

そして数分後。

 

「ん~~、やはり完全には浮かばんか。

 だがこれだけ軽くなれば翼の揚力でなんとか……?」

 

「あの……もう少しなんとかならなかったんですか?」

 

(ーーーー)

 

ヒノカミはぷかぷかと浮かんでいる飛行機の胴体を、四つん這いになっているロボット兵の背中に乗せ、ロープでぐるぐるに巻きにして乱暴に固定した。

飛行機の底に当たるからとロボット兵が頭を下げているので、まるで重い荷物を背負わされ項垂れているようだ。

 

「時間も道具も材料もないんじゃ、仕方あるまい。

 ドーラたちを待たせておるし、すぐにでも出発するぞ」

 

「……わかりました」

 

「では乗り込め。そしてロボットよ、助走を頼むぞ」

 

(・・・・)

 

「ごめんなさい!本当にごめんなさい!」

 

3人が飛行機に乗り込みエンジンをかけ、シータが合図を送る。

するとロボット兵が頭を真下に向けたまま、胴体をできる限り上下させないようドタバタと疾走する。

何故飛行機を背負っているのかという理解不能な状況も相まって、何も知らない人間が正面から見たら相当なホラーだろう。

即座に逃げ出すだろうが、三本足であってもロボット兵の移動速度はそれこそオートモービルに迫るほど速かった。

 

「離陸!」

 

(-・-)

 

ロボット兵が速度を維持したまま一瞬手足を縮めて力をため、四つ足の姿勢のまま飛び跳ねる。

そして即座に腕を側面に、足を背中側に動かし、体を丸めた格納状態となる。

 

「よし、離陸成功。エンジンも問題なしじゃな。

 このまま軍の監視エリアを避けつつドーラとの合流地点に向かう」

 

いつの間にかすっかり夜が明けていた。

真っ青な海と空の間を、卵型の巨大な何かをぶら下げた純白の飛行機が飛んでいく。

 

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