『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

606 / 788
最終話の目途が付いたので1日2回投稿に切り替えます。
まだ頭の中ですが、今日の1日で出力する予定です。


第13話 タイガーモス号

 

パズーの家を離れたドーラたちは岸壁に隠していたドーラ一家の母船『タイガーモス号』へと乗り込んでいた。

ヒノカミたちが現れ次第すぐにでも出発できるようにと身構えていたが夜明けを過ぎても現れないため、彼女たちが軍に捕らえられた可能性を想定し始めていた。

『アイツらなら無事だ』などと楽観的に考えるわけにはいかない。

例え『そうであってくれ』と内心で願っていても、常に最悪の事態を想定し備えるのが組織のトップの務めだ。

むしろ彼らが捕らえられたとしたら、軍の野望を阻める者はドーラたちしかいない。

パズーの家で飛行石が放った光からラピュタのおおよその方角はわかっている。

ドーラ一家だけでもラピュタを目指すことは不可能ではない。

 

だがドーラが決断を下す前に、遠くの空から純白の飛行機が接近してきた。

間違いなくパズーの家の地下にあったものだ。

純粋に喜び手を振る部下や息子たちに呆れつつ、しかしそれを止めることはせずこっそりと安堵の息を吐く。

 

だがその機体が近づいてくる内に気付いた。シルエットが微妙に違う。

飛行機の下に大きくて丸い何かが。あんなものはついていなかったはずだ。

そしてタイガーモス号の真上まで来て速度を合わせ並走を始めた飛行機が、ゆっくりと降下していく。

パズーたちをこちらに乗り移らせるつもりだとしたらおかしな行動ではないのだが。

 

「へ?」

 

そのタイガーモス号の頂上の見張り台にいた末息子のアンリが、飛行機の下にあるものを見て気の抜けた声を上げる。

丸い何かに生えている、ゴーグル付ヘルメットのような何かがじっとこちらを見つめている。

そして飛行機とタイガーモス号の距離が短くなると。

 

 

ガバァッ

 

「うひゃぁっ!?」

 

丸い物体の表面に巻き付いていた何かが勢いよく開き、タイガーモス号の上部にがっしりと掴みかかる。

アンリは直前に大慌てで逃げ出した。それでも飛行船から落ちなかったあたりは流石と言うべきか。

 

「ママァ~~~っ!飛行機に化け物がぁ~~っ!!」

 

「待たせてすまんなドーラ」

 

「何がどうしたってんだい!?説明しなぁっ!」

 

「ちぃと待て。パズーたちも降ろすから」

 

飛行機から飛び降りて堂々と船に乗り込んできた顔なじみにドーラが怒鳴り声をあげる。

しかし相手は女海賊の剣幕に尻込むどころか、彼女を無視して梯子を伝って降りてくる子供たちを迎えに行く。

ペースを乱され頭痛がする。これだからコイツとは積極的に顔を合わせたくはないのだ。

 

人数が多いと操縦席では狭すぎるため、ドーラはヒノカミたちを連れて中央の大部屋へと移動した。

そこで3人はティディス要塞での出来事を全て説明する。

 

「そんで連れてきたってのかい……たった一体で軍の要塞をぶっ壊しちまうようなモンを……!」

 

「放置する方が危険じゃからな。

 残念ながらまともに空が飛べぬようでは道中の戦力とはならんがの」

 

「いよいよただのお荷物じゃないかい」

 

「あの……ごめんなさい、おばさま」

 

「……その分、パズーとシータにもしっかり働いてもらうよ?

 もちろんアンタもだ。客人扱いなんざしてやんないからね」

 

「「はい!」」

 

「すまんが儂は少し時間をもらいたい。

 飛行機の整備とロボット兵の応急処置くらいはしておきたいのでな。工具も借りるぞ」

 

そういってヒノカミは懐から取り出した金貨を一枚をドーラに投げ渡す。

 

「ハァ……好きにしな」

 

諦めたドーラはパズーとシータだけを連れていく。

ヒノカミは勝手に工具や材料を集めてさっさと飛行機とロボット兵のところへ戻っていった。

 

機械工見習いのパズーにはタイガーモス号の専属技師であるモトロの助手、シータには船の料理担当としての仕事を与えた。

二人とも真面目でよく働き、すぐにドーラ一家に歓迎された。

特にシータは野郎ばかりで飢えた男たちの清涼剤となったようだ。

ヒノカミ?アレは香辛料どころかドーラよりたちが悪い劇物である。

 

「それでは、今後の道程についてじゃが……」

 

その劇物二人組が操縦室で顔を突き合わせる。

居合わせたシャルルと部下の一人は矛先がこちらに向かないよう、口を堅く閉じてまっすぐに前だけを見ていた。

 

「飛行戦艦……ゴリアテじゃったか?」

 

「あぁ。アンタらに遅れることしばらくしてティディス要塞に到着したらしい。

 その後即座に出発して、今は無線封鎖して行方をくらませやがった」

 

「ラピュタの位置に気付いたということか。

 要塞で飛行石を晒したのは一瞬、あの騒動の中で察知されたとは思いたくなかったが……」

 

「飛行石から光が出てたと気づくだけで十分だろうさ。

 そうすりゃスラッグ渓谷での光の正体がなんだかわかるだろうよ」

 

要塞に向かう選択肢が間違っていたとは思わない。

ロボット兵を放置すればどこにいるのかわからないシータを探して地上を彷徨い続ける可能性があったのだ。

そして彼は攻撃されれば容赦なく反撃する。その結果は残された要塞の有様を見れば明らかだ。

とはいえ、軍にもラピュタの情報が漏れてしまったのはやはり痛い。

 

「動き出したのはこっちが先だが、ゴリアテの方が足が速い。

 追いつかれるのは時間の問題だね」

 

「そうなる前にラピュタに辿り着けるか否かか……。

 飛行石の光の方角を間違えてくれればと願うのは、希望的観測が過ぎるよな」

 

二人は机の上に置いた、光の線を放ち続ける飛行石に目をやる。

羅針盤替わりにシータから預かっているものだ。

 

「とにかく急ぐしかないよ。

 だってのに余計な荷物まで増やしやがって……」

 

「返す言葉もない。儂もモトロを手伝おう。

 少しでもこの船の速度を上げねば」

 

「わかってんならいいんだよ。キリキリ働きな!」

 

そしてパズーと同じくモトロの助手となったヒノカミは、彼のお株を奪う勢いで活躍した。

単純な技術力だけでも群を抜いているのに、エンジンの熱を制御して負荷を軽減しつつ効率を上げ、故障や不具合が起きればマジックハンド替わりの帯を伸ばして即座に修理する。

彼女が常に番をしているので、手の空いたモトロとパズーは船の外装の修理やメンテナンスに専念できた。

タイガーモス号は飛行石の導きの光に従って、過去最高速度で空を駆けていく。

 




原作ラピュタの流れ
(皆知ってるだろうけどネタバレなので注意)

・1日目
夜、シータが飛行船から落ちてパズーと出会う。
・2日目
朝、ドーラと軍に追われ地下へ。
昼、廃坑の外に出たところを軍に捕まる。
夕、パズーだけが解放される。
夜、ドーラ一家と協力しシータ救出作戦。
・3日目
朝、タイガーモス号がラピュタに向けて出発。
夜、ゴリアテと遭遇。
・4日目
朝、ラピュタ到達。
昼、ラピュタ脱出。
夕、パズーたちとドーラ一家の別れ。エンディング。

……こうして並べると密度濃すぎですよ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。