そして迷いましたが流石に出番なしはアレなので強引に混入させます。
行きと同じ道を、今度はゆっくりと歩いて戻り、再びラピュタの外に出た一行。
(((((ー・-・-)))))
「うわっ!」
「キャッ!」
彼らを待ち受けていたのは狭い通路にひしめく無数のロボット兵たちだった。
二人は反射的にヒノカミの後ろに隠れる。
「シータ、彼らへの指示は儂に任せてもらえるか?」
「え?え、えぇ……」
「よし。……聞いての通り、汝らの主より指揮権を任された。
これより儂が臨時に指揮を執る。
……だがまずは諸君らの働きに心よりの感謝を。
よくぞ期待に応えてくれた」
ゴリアテをあっさりと撃退するほどの力を持ったロボット兵たちの大群に囲まれても尚、ヒノカミは堂々と彼らに語り掛けていた。
「この上に、我らと共にこの地に戻った汝らの同胞がおる。急ぎ処置を頼む。
ラピュタ全体の老朽化も激しい。崩壊の危険が高い箇所から修理に当たれ。
第三層の園丁にも応援を要請せよ」
(((((・-・-・)))))
「そして誰か一機、未だ警戒し距離を取っているあの飛行船を迎えに行ってくれ。
汝らの主を再びこの地へと連れてきてくれたラピュタの大恩人じゃ。丁重に応対するように」
(-・・-)
「では、各自行動開始」
最後にヒノカミがパンと音を立てて掌を叩くと、ロボット兵たちが一斉に散らばって指示通りに動き始める。
「「…………」」
「怖がる気持ちもわかるが、彼らがシータに手を上げることはない。
彼らも邪険にされ続けては悲しもう。少しずつ歩み寄ってやれ。
……と、今お主らが気になっているのはこんなことではないか」
「……貴女は一体誰……!?」
「シータ……」
「……全て話すと約束したからな。
じゃがその前にドーラたちと合流しよう。
彼らにもその場に居合わせる権利があろう」
シータから畏怖の視線を向けられ少しだけ悲しそうに笑ったヒノカミは、背を向けて歩き出す。
ここから少し上にタイガーモス号も接舷できそうな広場があった。そこに向かうつもりのようだ。
(-・-・-)
「何?園丁のロボットがほとんど機能停止している?
……700年も経てば無理もない。
彼らの修復も並行して進めてくれ。」
(ーー・--)
「資材がない?印刷機は……動くはずもないか。
居住区周辺はしばらく使い道がないから後回しで。
まずは外壁を優先しこれ以上の崩壊を何としても阻止せよ」
(・-ー-・)
「いや、下手に根を切ったらむしろ倒壊が進むのではないか?
むしろそんだけでかいならそれを補強材代わりにして……よくわからん?
あぁもう、後で確認して図面引いておくから!」
そして道中ロボット兵が何度も彼女に指示を仰ぎに訪れる。
シータは感覚で何となくらしいが、どうやらヒノカミは彼らの言葉を完全に理解しているようだ。
そんな彼女の様子が、なんだか鉱山で部下たちを怒鳴りつける親方のようで。
「……ははっ。シータ、きっと大丈夫だよ」
「……えぇ。そうね」
先ほどまではあまりの事態に怯えていたが、こうして振舞う彼女はいつも通りだ。
ラピュタ突入からここに至るまで張り詰めていた緊張の糸がほぐれ、ようやく二人も少しだけ脱力できた。
(ー・-・・-・-)
「んぁ?……なんじゃと?」
しかしタイガーモス号に向かっていたはずのロボットが舞い戻り言葉を伝えると、ヒノカミの表情がまた険しいものとなった。
――――……
「おばさま!」
「みんな!無事だった!?」
「当たり前さね!海賊をなめんじゃないよ!」
やがてフラップターとタイガーモス号もラピュタへと到着し、一行は合流を喜ぶ。
そしてゴリアテはもういない。海賊ならば軍という脅威がないなら早速ラピュタの宝を探そうと言い出してもおかしくない状況だが。
「……あとは、アレか……」
彼らの視線はロボット兵たちの手によりタイガーモス号の近くに押さえつけられた、一機の軍の飛行機へと注がれている。
タイガーモス号へと使いに出したロボット兵は、ゴリアテが流れていった方角から飛んでくる機体を察知した。どうやら誰かが備え付けの飛行機を使って寸前で脱出したらしい。
ロボット兵もこれが敵だと認識してはいたが、ゴリアテとは違い少しでも攻撃したら間違いなく墜落して乗員を殺してしまう。
『主が人死にを望んでいない』と聞いていたロボット兵は、軍の飛行機への対処の指示を求めてヒノカミのところへ一度戻ってきたのだ。
そしてヒノカミは数機を連れてその飛行機を拘束し、ラピュタへ連行するように指示した。
「離れておれ」
今のところ動きがない飛行機に近づき、強引に扉を開ける。
「っ!」
中にいたスーツの男が懐から素早く拳銃を取り出すも、その姿が服の外にあらわになった瞬間にヒノカミは能力で火種を起こし拳銃を爆発させた。
「ぐぁぁぁっ!目がぁーーーっ!」
「ふん!」
「っ…………」
顔の真下で爆発したので、破片か煙が色眼鏡の隙間から飛び込んだのだろう。
その隙にヒノカミは錯乱する男の顎を的確に打ち抜き昏倒させる。
「シータ、こいつは?」
「黒眼鏡の男たちのリーダーです。
たしか……『ムスカ大佐』……?」
「ふむ、つまりこやつが軍のラピュタ探索の要だったわけか。
単身乗り込んでくるとはよほどの執着があったと見える」
ヒノカミはムスカを飛行機の中から引きずり出した後、彼をドーラたちに任せて飛行機の中を更に確認する。
他に乗員はおらず、本当に一人のようだ。
ともかく、これで今度こそ軍の無力化は完了した。
気絶しているムスカは後ろ手にして縛り上げた。
これで憂いなくお宝をいただけると飛び出そうとするドーラ一家だったが、ヒノカミが待ったをかける。
「なんだってんだい!?
財宝を前にした海賊に、まだ我慢しろってのかい!?」
「しばらくは余計な動きはしない方がいい。
まだ動き出したロボットたち全員にお主らの情報がいきわたっておらぬ。
事情を知らぬ者に略奪者と見なされ排除されてはかなわんじゃろ?」
「「「…………」」」
「慌てる必要はない。約束通り、山ほどの財宝をくれてやる。
だからまずは……挨拶にでも行くとしよう」
そこでヒノカミが、ゆっくりとこちらへ歩いてくる一機のロボットを指さす。
今もラピュタの至る所で働いている他のロボットと違い、腕に突起がなく体はひどく汚れている。一部は苔に覆われていた。
「このロボットは……?」
「第三層で唯一稼働し続けていた、園丁のロボットじゃ。700年間ずっとな」
「「「ずっと!?」」」
「案内したいところがあるらしい。全員で向かおう。
このムスカとやらは……目の届くところにあった方がよいか」
ヒノカミは小柄な体でムスカを肩に担ぎあげ、園丁のロボットに近づく。
すると園丁のロボットは元来た道を引き返していき、ヒノカミはその後ろに続いた。
パズーたちは互いに顔を見合わせた後、無言でヒノカミとロボットの後を追い歩き始めた。