以降は作者の妄想と推測と独自設定を垂れ流すだけの蛇足となります。
「一体コイツはアタシらをどこに連れて行こうっていうんだい?」
「第三層だそうじゃ。詳しくは知らんが、『ラピュタ人が戻れば案内するように』と命じられていたらしいな」
「その、さっきから言ってる『第何層』って何なんですか?」
「ラピュタは最初に突入した中枢部を除くと、大きく4つの層に分けられる。
先ほどまでいたのは最下層の第四層で、一般市民の居住区……いわば『王都』じゃな」
「なら、第三層とは……?」
「巨大庭園。太古の植物なども保存された……まぁ、とにかくでっかい庭じゃ」
「じゃあその上は何なんだ?」
「第二層が騎士階級、貴族の住居。
第一層が王族の住まう城の頂点。
……じゃが外から見る限り、これらは巨大な樹に飲み込まれてもう無いな」
ラピュタ人がラピュタを去る前から、700年以上も前から稼働し続けているというロボットが先頭。
その後ろに気絶したままのムスカを抱えたヒノカミ。
続いてパズーとシータ。
最後にドーラ一家の10人。
奇妙な一行はボロボロの通路を通り少しずつ上へ上へと登っていく。
ロボットの動きはのっそりとしているが、体が大きいため移動速度自体はパズーたちが歩くよりも速いくらいだ。
「なぁんかアイツだけ、他の奴らと違わない?
雰囲気っつぅかさぁ……」
「腕に突起がないじゃろ?つまり翼がなく、空を飛べぬ。
園丁のロボットは非戦闘用なんじゃよ」
「あ、ホントだ!」
「戦闘能力と専用のプログラムがない分、器用さや動作の正確さはこっちの方が上でな。
ラピュタの修繕のためにも彼らの助力が欲しかったんじゃが……」
通りすがりに何度も見かける、ラピュタを修理しているロボット兵たちと見比べてアンリは納得している。
そうこうしている間に一行は美しい庭園に辿り着き、大きな池を見つけたパズーが違和感を感じて覗き込む。
「!?街だ!水の中に街が沈んでる!」
「言うたじゃろ?第三層の下は第四層で、都じゃと。
この区画は排水口が瓦礫か植物の根かで潰れて、雨水が蓄積されたんじゃろう。
……こりゃ復旧は手間じゃなぁ。このエリアはいっそこのままにしておくべきか」
「「「…………」」」
どんな質問にもさらりと答えるヒノカミに、一行は当然疑念を抱いていた。
長年調べていたとはいえ、ラピュタ人の知人がいたとはいえ、いくら何でも詳しすぎる。
彼女が嘘をつかず、後で全て話すと宣言していなければすぐにでも問い詰めているところだ。
逆に彼女が自分から話すまではどれほど追求したところで無駄。
だから一行は何度ものどから出かかっている言葉を何度も飲み込んでいた。
歩いて行った先には巨大な入口。
その中は大きくて見たこともない植物が生い茂っている。
建物の内側だというのに鳥も飛んでいて、まるで森のようだ。
「あれ!?空がある!」
「一方向からのみ光を透過しとるんじゃ。
外からは見えぬが、中からは見える」
「立派な街だったんだ……科学もずっと進んでいたのにどうして……」
「……それを知るために、儂はここまで来たんじゃ。
そして手がかりはきっと、この先に……」
立ち止まっている内にロボットが一行を置いて進んでしまったため、急いで追いかける。
そしてようやく辿り着いたのは広い広い芝生の広場。
おそらくこのエリアには樹が生えないよう、園丁のロボットが整備していたのだろう。
そして中央には屋根を突き破る巨大な樹の幹。
あまりの大きさに、傍にいるロボットが小人に見えてくる。
「……!?」
「さっきのロボットじゃない!」
よく見るとそこにいたロボットは突っ立っているのではなく、足首まで地面に埋まっている。
全身が苔に覆われておりピクリとも動かない。
そして視線を先に向けると、樹の幹にもたくさんのロボットの残骸が横たわっていた。
「ずっと昔に、壊れたんだ……」
「何百年もラピュタのために働いてくれていたんじゃな……。
彼らも直せればよいが……いや、なんとしても……!」
「あれ?じゃあさっきのロボットはどこに?」
「ふむ……離れたようじゃな。
目的地はここで間違いないんじゃろうが……」
そのまま近づくと、樹の幹に半ば呑みこまれている大きな黒い石碑が見えてきた。
壊れたロボットの足元の地面にももう一つ石碑が埋め込まれており、そちらに小さな花が添えられていることからこれが墓なのだろうとわかる。
「彫ってある字が読めるといいんだけど……」
「ヒノカミなら読めるんじゃねぇの?」
「あ、そうか!ねぇ先生、なんて書いてあるの?」
「…………」
「先生?」
既に彼女は解読を始めていたらしく、無言で二つの石碑に視線を走らせている。
そして一度目を閉じた後、抱えていたムスカをその場にどさりと落とし、彼女もまたしりもちをつく。
「……くけけ、けけ……げらげらげらげら!
あぁそうか!そういうことか!
まったく……この大馬鹿者どもめが!げらげらげら!」
「な、なにが書いてあったんです!?」
「ようやくわかった。なぜラピュタ人がラピュタを捨てたのか……。
いや、天空に移住した後のラピュタ人の辿った歴史が、全てな」
「本当に!?」
「あぁ……待たせたな。全てを話そう。
……墓参りを、済ませた後でな」
ヒノカミが脇に視線を向けると、先ほどまでの案内のロボットがこちらに近づいてきていた。
その指先には小さな花が挟まれている。石碑の上に置かれていたものと同じもので、彼はそれをゆっくりとシータに差し出した。
「シータ、手向けてやれ」
「……はい」
シータは目の前の花を受け取り、すでに置かれているものに並ぶように添える。
立ち上がったヒノカミが目を閉じ軽く頭を下げていたので他の者たちも彼女に倣い、帽子を取って死者の冥福を祈る。
「……これでようやく、我らの使命を果たせた。
では話そうか。まずは、なぜ儂がこれほどまでにラピュタに詳しいのかを」
ヒノカミは石碑の前に移動し、石碑を背にして一行を正面から見つめる。
ついにこの時が来たのだと、皆息を呑み沈黙する。
「詳しくて当たり前じゃ。
儂はこのラピュタ城の建造に関わった技術者の一人じゃからな。
設計図なら全てこの頭の中にある」
「「「「「…………は?」」」」」
全員が思わず、呆けた顔で聞き返す。ドーラでさえもだ。
「いやいや……ラピュタの建造?
何百年……何千年前の話だよ!?」
「いくらアンタでもそんな昔から……まさか!?」
「ホントにそんな時代から生きてたの!?」
「え、なに!?みんなどうしたの!?」
「コイツは年を取らないのさ……アタシと初めて会った時から何十年も経ってるが、ちっとも姿が変わってないんだ!」
「「!?」」
「くけけけ。初めて会ったのは、それこそドーラがシータぐらいの歳じゃったな。
見た目もよく似ておるよ。もうちょっと表情を勝気にすればそっくりじゃな」
「え!?ママが!?
じゃあシータもママみたいになるの!?」
「嘘だろ!?」
「信じられない!信じたくない!!」
「何が言いたいんだいこの馬鹿息子ども!」
ドーラたちの話が脱線しそうになったところを、ヒノカミが掌を叩いて打ち切り視線を集める。
「先日、パズーらには『儂にラピュタ人の知人がいた』と話したな?
その知人とは、まだラピュタが地上にあった頃のラピュタ王。つまりシータの先祖じゃ。
儂は当時、彼に食客として招かれラピュタに滞在していた」