『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第4話

 

明日菜が自分自身のためにもネギの魔法バレを防がねばならなくなり、事情を知る同居人として尽力するようになったおかげだろうか。

以降のネギは他の生徒に疑われることなく教育実習生として真面目に働いていた。

 

初日の事故こそ例外だが、ネギは魔法に頼らずとも十分に教師を務められるようリンネが指導済みで、問題児だが能力は高いオコジョ妖精の使い魔カモがいる。

年齢による経験不足はいかんともしがたいが、普通の中学生相手なら問題なく教師を務められるよう備えをしてから麻帆良に来たはずだった。

 

しかし厄介なのが彼の受け持つクラスがとにかく普通でないことか。

いくら女子校と言えど『姦しい』なんて言葉で片付けられないほど騒がしく制御不能。

おまけに一部の優等生を除くと成績が低い者ばかりで、クラスの成績は万年学年最下位という有様だ。

 

だと言うのに学園長が『期末テストで2-Aが学年最下位を脱出できたら正式な先生として認める』などという課題を突き付けたものだからネギは大慌て。

これに関しては明日菜の力を頼ることはできない。

彼女は学年最下位クラスの中でも更に成績最下位の、『バカレンジャー』の一人『バカレッド』なので。

 

これを見かねたリンネが助け船を出し、バカレンジャーと呼ばれる5人を家に連れてくるよう命じた。

彼女はネギ先生の先生であり、何を隠そう『教師の達人』だ。

例え学年最底辺の成績であろうとも、中学生の期末テスト程度なら数日もあれば平均点を取れるようにしてやれる。

まず一晩5人の講師を務め、翌日学校で小テストをさせるようにネギに指示。

すると彼女らの成績が急上昇していた。特に勉強が嫌いなだけで地頭のいい綾瀬夕映に至ってはクラスの上位に食い込んでいた。

驚愕したクラスメイトたちがネギに詰め寄りその理由を問いただし、そこでこれも指示通りに自分の保護者にして教師の師匠を頼ったことを明かす。

そして『他にも希望する生徒がいれば全員連れてこい』と言っていたことも。

このままでは自分たちがバカレンジャーを襲名することになると怯えた生徒たちが殺到し、クラス全員の学力が底上げされ、見事2-Aは学年最下位を脱出した。

 

「これで僕も、正式な教師に……でも、いいのかな?」

 

「ほとんど姐御のおかげだからなぁ。

 一応は兄貴の試験なのに反則じゃねぇですかい?」

 

「『誰も頼るな』とは指示されておるまい?人脈も立派な力じゃ。

 ……つーか一番問題なのは少し前まで担任務めとったタカミチではないか。

 いくら多忙とは言えあんな状態で放置とか、生徒たちがかわいそうじゃろ」

 

タカミチは裏世界で名をはせた実力者。

その戦闘能力を頼られて各地の紛争などに対処しており、出張がとんでもなく多い。

理由は理解できるがほとんど学校にいないとわかっている教師に担任を持たせるのは、生徒たちに対してあまりに不誠実である。

後日学園長が苦言を申しに来た時、これらの問題点を指摘すると押し黙った。彼も自覚があったのだろう。

 

それでももう少し食い下がっても良さそうなものだが、学園長はあっさりと引いた。

ネギはすでに指導教員からも合格点をもらっていたとはいえ、あまりにあっけなく。

何故なら彼は、まもなくネギの魔法使いとしての実力を計ることができる大きな事件が起きると予見していたから。

 

 

 

「まぁ起こさんがな」

 

「まだ呪いが解けたことを伝えておらんのかい……」

 

「未だに気付いていない連中が悪い」

 

「そりゃ確かに。腑抜けすぎじゃな、監視体制が甘すぎる」

 

3学期が終わる直前、茶々丸を伴って家にやってきたエヴァがリンネの振舞った茶をすすりながら他人事のようにつぶやく。

彼女がナギにかけられた呪いを解こうとすれば血縁であるネギを襲うしかない。

だから学園長は、弱体化したとはいえ600年を生きる真祖の吸血鬼相手にネギがどこまで食い下がれるかを見物しようとしていたようだ。もちろん万が一の事態になれば割って入るつもりで。

しかしリンネによりとっくに呪いが解けているエヴァが無駄な労力を割く理由も、わざわざ学園長の掌の上で踊ってやる理由もない。

今頃彼はエヴァが襲撃の準備を始めないことを訝しんでいるだろう。知ったことではないが。

 

「んで、今日は何用じゃ?

 まさか茶を飲みに来ただけとは言うまい?」

 

「そのためだけに足を運んで良いと思うほど、貴様の茶と茶菓子は美味い。

 この私のお墨付きだ。誇ってよいぞ」

 

「……あの勉強会以来、マジで茶と茶菓子だけを目当てに2-Aの連中がやってきてたむろするんじゃよなぁ……にぎやかなのは嫌いではないが」

 

「ククク、いっそ喫茶店でも開けばいい。お得意様になってやろう。

 ……本題だ。『別荘』の準備ができた。

 春休みから面倒を見てやろう。ぼーやに伝えておけ」

 

「そりゃありがたい。しかしそれは、ネギがお眼鏡にかなったと言うことでいいのか?」

 

「普段まったく魔法を使っていないんだ。わからんに決まっているだろう。

 ……安易に魔法に頼らん姿勢は嫌いではないがな。

 だがそろそろ時間もない。だから直接見てやることにした」

 

「『時間がない』?」

 

「私との戦いの見物という目論見が外れたジジイが今度は何をしでかすかわからんが、動くとすれば新年度になってまもなくの修学旅行だろう。

 ……久しぶりに堂々と麻帆良の外に出られるんだ。存分に満喫したい。

 そのためには引率のぼーやが未熟だと困るんだよ」

 

「なるほどな。わかった、明日にでもお主の正体も含めて全て伝えておく。

 別荘には時折儂も顔を出し茶と料理を振舞おう」

 

「よし、茶々丸。この機会にコイツの技術を盗み取っておけ」

 

「了解しました、マスター」

 

「そんなことせんでも尋ねられたら教えるわい……秘匿する理由もないしな」

 

「ほぅ、飯のタネではないのか?」

 

「とうの昔に飢えも何も無くした身よ」

 

「……いつか、貴様の正体も暴いてみせよう」

 

「くけけ、楽しみに待っておるぞ」

 

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