『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第6話 麻帆良学園女子中等部修学旅行

 

京都には、西日本における最大の魔法組織『関西呪術協会』が存在する。

麻帆良にある東日本最大の魔法組織『関東魔法協会』は魔法世界との関わりが強く『西洋魔術師』が多く在籍しているが、こちらは主に日本土着の『陰陽術師』により構成されている。

その性質や成り立ちの違い、過去のいざこざやここが『日本』であることなどから、関西呪術協会は関東魔法協会に対して強い敵愾心を抱いている。

 

その長年続いてきた諍いを収めたとなれば幼いネギ少年の確かな功績となる。

今の関西呪術協会の長はネギの父ナギの戦友であり学園長の義理の息子、そして木乃香の父である近衛詠春だ。

学園長は時間をかけ彼と協力して水面下で和平の準備を進めてきた。

その最後の一押しをネギに務めてもらう。

彼に親書を託して特使として派遣、これを以て東西の和睦を演出する計画である。

当然、和平を望まぬ関西の過激派による妨害が予想される。

修学旅行中という特殊な環境下で、親書と生徒たちを守りながら襲撃をはねのけ、関西呪術協会にまでたどり着く。

それが今回のネギの試練である。

 

そして彼の功績とするためには、彼以外の優秀な人物に頼ってはならない。

言うまでもなく『闇の福音』エヴァンジェリン、そして彼女の従者である茶々丸のことだ。幸いにも彼女らは彼の試練が終わるまでは不干渉を約束してくれた。

本当は同行すらさせたくなかったのだが、呪いを解いてしまった彼女を学園に押しとどめておくことなど不可能。

情けない話だが『旅行が終わればちゃんと学園に戻ってくる』と宣言しているだけでもありがたいくらいだ。

 

となればそこに外部の協力者を加えることなどもっての外である。

ネギは学園長から『この旅の間は六道リンネに頼ってはならない』と、今回ははっきり名指しで厳命されてしまった。

2年の期末試験というネギの試練を無意味にされ、おまけにどうやらエヴァの呪いも解いたのも彼女らしいとあれば学園長が『これ以上引っ掻き回されてはたまらない』と考えるのも無理はない。

ネギから彼女に伝えたところ、彼女自身がネギに試練を与えることに対し反対派とは言えネギが望むのならばと了承した。

そもそも修学旅行に保護者同伴というのもおかしな話だろう。

 

 

だが彼女を完全に封じるには言葉が足りなかった。

『旅の間』がアウトでも『旅の前』ならセーフだと、彼女は純朴なネギを丸め込んだのである。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「え~~っと……どうしよっか、カモくん」

 

「どうしやしょうかねぇ……」

 

そして今、京都へ向かう新幹線の中でネギとカモの前に横たわっているのは彼の生徒の一人の『桜咲刹那』である。

 

彼の師、六道リンネは陰陽師の最上位である『大陰陽師』でもある。

世界は違えど同じ陰陽師である関西の連中の扱う術がどんなものか容易に想像できた。

だからリンネはネギに二つの道具を用意し託していた。

一つは『呪符を無効化する呪符』。

引き裂くことで効果を発揮し、周囲の陰陽術の呪符及び呪符で行使された術や式神を破壊する。

もう一つは『触れた者の魔力または気を利用して相手を麻痺させる呪符』。

予め指定した人物……今回の場合はネギとカモ以外が触れると強烈な電撃が走る仕組みだ。

 

意気揚々と新幹線に乗り込んだ3-Aの一行が歓談中、早速敵が仕掛けてきたようで大量の蛙の式神が車内に溢れかえった。

ネギはすぐさま一つ目の呪符を使い式神を全て破壊。

そして二つ目の呪符を仕込んだ偽物の親書をこれ見よがしに表に出し、飛翔してきたツバメの式神にあえて奪わせた。

後は、ツバメから偽物の親書を受け取った術者に呪符の効果が発揮され動けなくなったところを拘束する。

これがリンネとカモが立てた計画だった。

生徒と親書を守るのではなく狙ってくる敵を先んじて撃破する、攻めの守りだ。

 

しかしツバメを追いかけている途中に現れた刹那が式神を破壊し、偽物の親書を拾い上げてしまった。

 

破壊された式神の残骸が彼女の足元に転がっていることから、彼女が術師でないことは明らかだ。

返しが来るので式神を不用意に破壊するのは好ましくないとリンネから聞いている。刹那が術者なら式神から親書を受け取るだけで済むので破壊するのはデメリットにしかならない。

そして呪符の効果が発揮されたということは、彼女は一定以上の魔力か気を所有している、つまり裏の人間の可能性が高い。

ひとまず事情を聴かねばと、同じく引率の教師である源しずなに断りを入れ刹那を別の車両の人気の少ないところにまで連れて行き、先程の状況に至る。

 

 

 

「申し訳ありませんでした!

 まさかそのような計画を練っておられたとは……!」

 

「い、いえ。僕たちも刹那さんが魔法関係者だって気付いてなくて……」

 

そして麻痺を治し事情を説明した直後、刹那は美しい土下座を披露した。

彼女の立場なら旅の前に予め話を通してしかるべきだったが、彼女は幼く頼りないネギを信じ切れていなかったのだ。

今日にいたるまで魔法使いとしての力を見せておらず、普段生徒たちにいいように弄ばれている姿を見ていれば仕方ないのかもしれない。

 

今度はネギが刹那から事情を聴く。

刹那は『京都神鳴流』の使い手であり木乃香の幼馴染。

元々は関西呪術協会側の人間だったが離反し、関西呪術協会の長である木乃香の護衛を陰ながら務めていたらしい。

 

「あー、それでよくチラチラと僕たちを見ていたんですね」

 

「!?気付いておられたのですか!?」

 

「姐御に言われてだがな。俺っちたちへの敵意は薄いから無視していいって言われてたんだが……」

 

「……御見それしました!侮った無礼をお許しください!」

 

「いいってことよ。だがワリィと思ってんなら俺っちたちに手を貸してくれ。

 学園長から『エヴァたちには頼るな』っつわれてるがエヴァ以外ならいいだろ。

 魔法生徒、しかも敵の事情に明るい退魔の剣士の協力は喉から手が出るほど欲しいぜ」

 

「これ、マスターからもらった呪符破壊の呪符です。

 こっちはたくさんあるのでいくつかお預けしますね」

 

「ありがとうございます。

 木乃香お嬢様を守ることを優先させていただきますが、此度の汚名をそそぐためにもできる限り協力させていただきます」

 

明日菜に続いて事情を知る協力者を得たネギたち。

しかも刹那は明日菜とは違い、戦う力を持った裏の人間だ。頼もしい戦力となる。

今回は明日菜にも旅行を楽しんでもらおうと、裏の事情は明かしていない。

以降は二人と一匹で連携して周囲の警戒に当たるが、結局旅館に着くまではこれ以上の敵の襲撃や嫌がらせはなかった。

新幹線でのやり取りをどこかで見ていて、安易に手を出すのは危険と判断したのだろう。

 

だがその夜。

旅館に辿り着き改めて互いに事情と状況を話し合う彼らの場に。

甲高い叫び声が届いた。

 

「こ、この悲鳴は!?」

 

「木乃香お嬢様!?」

 




ヒノカミはシャーマンキングの『大陰陽師』ハオの直弟子でもあります。
ハオの術は一通り修めており式神も呪符も呪詛返しも全部使える。
BLEACHの世界における死神でもあるため退魔の剣士の要素も兼ね備えており、関西呪術協会に所属する全ての術者たちの完全上位互換となります。

……だから参戦したらたとえ出力を制限してても技術だけで勝ち確なんですよね。
理由をつけて少し遠ざけました。
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