『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第7話 狙われた少女

 

木乃香の悲鳴が聞こえた方へと一目散に駆け出す刹那とネギ。

何故ネギではなく木乃香が狙われたのか。

ネギたちはその理由を、丁度刹那から聞いていたところだったのだ。

 

木乃香は関西呪術協会の長である『近衛詠春』の娘であり、関東魔法協会の長『近衛近右衛門』の孫。

故に彼女の身柄を抑えれば両組織への人質となり得るが、彼女の影響力はそれだけにとどまらない。

優れた魔法使いの血統を持つ彼女は魔力量だけならばネギよりも、英雄と呼ばれたネギの父ナギよりも上だという。

故に魔法使いにとって彼女の利用価値は絶大なのだ。

 

詠春は婿養子であるため関西では彼を侮る者が多く、統率が取れているとは言い難い。

彼の娘であるが正式に近衛の血を継ぐ木乃香を傀儡として関西呪術協会を牛耳ろうと考えている者までいるくらいだ。

ならば『関西の裏切者』と呼ばれながらも義父が長く統治してきた麻帆良の方がまだ安全だろうと娘を送り出し、その護衛として刹那を派遣していた。

 

「木乃香さん!」

「お嬢様!」

 

二人と一匹が駆け付けると、小さな猿の式神が群がって木乃香を連れ去ろうとしているところだった。

明日菜も一緒だったが、裏の事情を知っているだけの一般人ではいいように弄ばれ抗うことはできなかったようだ。

 

「木乃香お嬢様に何をするか……斬る!!」

 

「待ちな嬢ちゃん!さっきの呪符を!!」

 

「ハッ!?わ、わかりました!」

 

木乃香に聞かれたらまずいと理解していても、彼女に敵の式神を破壊されてはたまらないと咄嗟にカモが声を上げる。

刹那は木乃香に近づいてネギからもらった呪符の一つを取り出し、勢いよく引きちぎった。

 

ボフンッ

 

「あ、あら?猿たちが……」

 

「な、なんやぁ~?」

 

周囲の術式が無効化され、猿の式神が一斉に消滅し人形の紙がはらりと床に落ちる。

ネギの肩から飛び降りたカモがその一つに顔を近づけ鼻を鳴らし、爪で紙を引き裂いた。

 

「……むむっ!!」

 

「わかったの、カモくん!?」

 

「あっちでさぁ!」

 

「行きましょう、刹那さん!」

 

「はいっ!」

 

「……せっちゃん?」

「ちょっと、どこ行くのよネギーっ!」

 

式神を放った術者はネギたちが乱入するや否や、作戦の失敗を予見して隠形の術を使い逃げ出していた。

そこまでは予想通りだ。だがネギとしては妨害は早めに対処すべきという方針に変わりはない。

だから敵の式神を逆に利用する計画を立てていた。

呪符の術式が無効化されても、人形と術者との間にはつながりがわずかに残っている。

なので紙に残された魔力の残滓と、人形が破壊されたときに生じる『呪いの返し』をオコジョ妖精の力で辿り、術者を追いかけようという作戦だった。

 

「そこを右!近づいてますぜ!!」

 

「……っ!これは人払いの呪符!

 まさか、計画的な犯行だったのか……!」

 

通り道に張り付けられていた札を見つけて刹那が戦慄する。

木乃香の利用価値は先に述べた通り。

そして木乃香を利用したい勢力にとっては彼女が京都に戻ってくる修学旅行は絶好の機会だと言うことは理解できる。

だが一般人が多くいる状況で、しかも生徒の一人が誘拐されたとなればとんでもない騒ぎになる。間違いなく警察沙汰だ。

木乃香が襲われる事態はあくまで可能性の一つとして低く見積もっていた。

東西の和睦を力尽くで阻もうとする過激派連中とはいえ、そこまで大事にはしたくないはずだと思い込んでしまっていた。

 

「もうすぐ追いつきまさぁ!」

 

「すごいよカモくん!こんなにはっきり追跡できるなんて!」

 

魔力の消耗を抑えるためと、刹那に合わせるために飛翔せず走るネギは、己の肩に乗った小さな相棒に心からの称賛を送る。

言葉には出さないが刹那も同じ気持ちだった。

計画を立てた時は彼も『できるかもしれない』と自信なさげで確証はなかったが、呪術師の隠形をここまで見事に暴くとは称賛に値する。

 

「ヘヘッ、俺っちが美女の匂いを辿れねぇはずがねぇってね!」

 

「美女?敵は女なのですか?」

 

「おぉよ、しかもかなりの上玉と見た!俺っちの鼻に狂いはねぇぜ!

 つまりは京美人……かぁーーっ!たまんねぇーーっ!

 とっ捕まえてひんひん言わせてやりやしょうぜ!!」

 

「「…………」」

 

折角上がっていた評価が一気に下落する音が聞こえた。

本当に、能力は高いのにいろいろと残念な使い魔である。

 

そしてついに一行は人気のない駅前広場で下手人を追いつめる。

 

「ちぃっ、しつこい連中や!

 ……まぁえぇ。先に邪魔者を片してしまえばお嬢様を連れ去るのも楽になるわ」

 

「貴様が、術者か!」

 

丸眼鏡をかけた、若い大人の女性。彼女の傍には猿と熊の着ぐるみが立っていた。

魔力を感じるため、あれが敵の使役する『前鬼』と『後鬼』なのだろう。

 

「出てきぃ月詠!」

 

「はぁ~~い」

 

女の呼び声に応えて、建物の影から小さな人影がのっそりと姿を現した。

大小2本の刀を構えたロリータ服を着た女の子だ。

 

「アンタはあっちの剣士の相手ぇしぃ」

 

「神鳴流の先輩さんですかぁ。

 でも護衛として雇われたからには本気でいかせてもらいますわぁー」

 

「こ、こんなのが神鳴流の剣士……?時代も変わったな……」

 

「おっほーっ♪こっちもまためんこい嬢ちゃんだぜぇーーっ♪」

 

「「「…………」」」

 

敵にも味方にも気の抜ける輩がいるせいで、命がけの戦場だと言うのに空気が緩んでしまう。

 

ちなみにカモはこれでもまともになった方なのだ。

リンネに躾られて、彼女の目の届く範囲では下着ドロや痴漢の類は一切しなくなったのだから。

しかしその反動のせいかリンネがいない場ではタガが外れてしまいがち。

おまけに敵ならばセクハラを遠慮する必要もなし。

何故なら彼を指導したリンネのモットーは『人でなしに人権なし』なので。

 

「……ハッ!?あかんあかん、呑まれるところやったわ!

 覚悟しぃや西洋魔術師の小僧!『お札さんお札さん……』!」

 

「!?ラス・テル・マ・スキル・マギステル……!」

 

敵の女が呪符を構え、ネギが始動キーを唱え、東西の術師が激突する。

 




引っ張るような切り方になってしまいましたが、ここの戦闘シーンはカット予定です。
刹那は原作そのまま、ネギにはパートナーの明日菜がいませんが相手に木乃香という人質もなく、原作より地力が上なネギなら千草程度に後れを取る理由がありませんので。
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