『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第9話

 

激動の初日が終わり、修学旅行二日目。

今日は奈良での班別自由行動。

人気者のネギ先生を取り合って幾人かの生徒が『自分たちの班と行動しよう』と迫ってきた。

しかし明日菜、木乃香と情報を共有し仮契約まで済ませたネギは最初から彼女らが所属する第5班と共に行動するつもりだった。

迫る生徒の中に5班の宮崎のどかがいたため、好都合と彼女の誘いに応じる形を取った。

 

ちなみに刹那は第6班なのだがその班員はエヴァと茶々丸、そしてクラスの中で最も謎に包まれている無口無表情な少女『ザジ・レイニーディ』なので、刹那一人が抜け出して第5班と共にしたいと言い出してもとがめることはなかった。

刹那と木乃香が1年の頃からずっとギクシャクしていたのはクラスでも有名だったので、どうやら和解したらしい二人を一緒にさせてやろうと、のどかを含む図書館探検部の3人は刹那を受け入れていた。

 

尤も、ネギを筆頭とする4人と一匹は何も知らない少女たちほど気楽ではいられなかったが。

敵が親書だけでなく、木乃香の身柄そのものを狙ってきていると判明したのだ。

親友を奪われまいとする明日菜、自分の事情にクラスメイトを巻き込んでしまう可能性を恐れる木乃香の気合の入れようは相当なものだった。傍から見ると空回りしていたような気がしないでもないが。

 

だが幸いと言うべきか、二日目は敵の襲撃はなかった。

初日の襲撃はおそらく敵にとっては様子見、うまくいけば御の字程度のものだったのだろうが、千草はそこで大量の呪符を消費している。

子供と侮っていたネギの意外な実力を知った今、中途半端な備えでは打倒は難しいと理解しているはず。

呪符の補充に一日を費やすことにしたのだろう。

 

だが敵の襲撃がないから平穏な一日だったとは言えない。

今は修学旅行中。教師であるネギの役割は生徒たちの引率。

そして彼の受け持つクラスの生徒は、誰もかれもが一癖も二癖もある問題児。

 

 

「私……私、ネギ先生のこと大好きです!!」

 

 

「…………え?」

 

自由行動中に宮崎のどかがネギに愛の告白をしたのだ。

予想外の奇襲にネギだけでなく、ハルナたちに少し離れた場に引き離されていた明日菜たちすら動きを止める。

これが普段からネギへの好意を隠さぬ委員長やまき絵ならともかく、まさか大人しく引っ込み思案ののどかがこのような場で真っ先に行動するなどと、彼女の恋心を知っていた明日菜や木乃香でも想像していなかった。

『自分の気持ちを知ってもらいたかっただけ』というのどかは走り去り、その場に一人残されたネギは知恵熱を出して倒れた。

立て続けに襲い掛かるイベントを処理しきれず、まだ幼い脳がオーバーフローを起こしたらしい。

彼女は悪くない。ただ、どこまでも間が悪かった。

 

夕方になりホテルに戻ってからもネギのCPUは復旧しきれず誤作動を起こし続け使い物にならない。

それでも襲撃を警戒せねばならないからと見回りのためにフラフラとホテルの外に歩いていく。

そこでネギは交通事故に巻き込まれそうな子猫を見つけ。

慌てて魔法を使い救出。

 

そして隠れて彼を尾行していた生徒の一人、朝倉和美にその現場を目撃されてしまったのである。

 

「ひ~~~ん!これほどいてよぉーーっ!!」

 

「よ、よりにもよって朝倉に……」

 

事故直後、朝倉が隠れて見ていたことに気付いたネギは即座に彼女を魔法で拘束。

対応を相談するために明日菜ら魔法関係者の集まる場に彼女を引きずってきた。

 

そもそも朝倉がネギを尾行していたのは、明らかなネギの奇行をいぶかしむ何も知らない生徒たちに『原因を調べてほしい』と依頼されてのことだった。

彼女は学園の報道部に所属する通称『麻帆良のパパラッチ』。

スクープがあればどこにでも現れ、あらゆる秘密を丸裸にされ、翌朝には麻帆良中に噂が広まると言われている。

そんな相手に、魔法使いだとバレたのだ。

 

「やはり、記憶を消してしまうしかないのでは?」

 

「そ、そうですよねー……ちょっとパーになるかもしれないけど」

 

「ひぃぃっ!?秘密にするから許してよぉ~~っ!!

 明日菜たちも知ってるなら私も見逃してくれたっていいじゃん!!」

 

「えっ!?う、う~~~ん……」

 

確かに言われてみれば、明日菜も朝倉と同じ魔法を知っただけの人間だ。

今では仮契約まで済ませたパートナーだが、ここで嫌がる朝倉の記憶だけを奪うのは不公平な気がする。

まぁ、明日菜の記憶は消さなかったのではなく消せなかったのだが。なぜか。

 

「一緒にするんじゃないわよ!

 アンタが秘密を守れると思わないからこうなってんの!」

 

「くっそぉ~~、日頃の行いかぁ~~……」

 

「……うっし、わかったぜブンヤの姉さん。

 ここはひとつ取引といこうや」

 

「取引?」

 

「この旅行の裏でちょっと揉め事が起きててよぉ。

 兄貴は今そっちに手一杯で魔法の秘匿に割く余力がねぇのさ。

 そこでだ、俺っちたちの秘密を守る協力者になっちゃくれねぇかい?

 応じてくれんなら記憶を消すのはナシだ。

 成果次第じゃ学園に帰った後に学園長に渡りをつけてやってもいーぜ?」

 

「ホント!?やるやる!!」

 

「ちょっとカモ!?」

 

「えぇの?カモくん」

 

「実際兄貴に余裕がなかったから魔法がバレちまったわけだしな。

 今はとにかく、穏便に修学旅行を終わらせることを最優先しましょうぜ。

 エヴァが言ってた通り今の状況は学園長の見通しの甘さが問題だしな。

 ちぃとくらいあっちにも苦労してもらわねぇと割に合わねぇッスよ」

 

「そーやねぇ、ウチも口利きしたるわ」

 

「よっし!報道部突撃班、朝倉和美。

 これからはネギ先生の秘密を守るエージェントとして頑張るよ!よろしく!」

 

「は、はい!」

 

「んじゃ、今の俺っちたちの状況を説明しとくぜ。

 もちろん他の連中には内緒にしてくれよ?」

 

「わかってるって。ベラベラ喋って広めるだけが報道じゃないってね」

 

「せやなぁ。むしろ口軽いゆぅたらハルナの方やしなぁ」

 

「……パルには絶対にバレないようにしなきゃね」

 

何とか話がまとまり、朝倉はクラスメイト達が魔法に気付かないようそれとなく誘導する役割を担うことになった。

親書や襲撃者、仮契約の話も全て明かしたが、朝倉にまで仮契約を提案することは避けた。

まだ彼女には仮にであっても従者にするほどの信用がなく、膨大な魔力を持つ木乃香や図抜けた身体能力を持つ明日菜と比べれば即戦力となる可能性も低いためだ。

 

「オッケー。だったらその『仮契約』ってのを提案したくなるくらい活躍してみせるのが、ひとまずの目標かな」

 

「でも朝倉、仮契約の方法って『チュー』なのよ!?」

 

「チュー!?ぅおっほぅ……ってことはアンタたちはネギくんとチューしたわけだ。

 いいんちょや告白したばっかの本屋あたりが知ったらどうなるか……」

 

「ちょっとぉ!?」

 

「大丈夫、秘密にするって。

 そうしなきゃいけない状況だってことくらいアタシでもわかるよ」

 

「ハァ……ホントに大丈夫なの?前途多難だわ」

 

「姐さん、『前途多難』なんて言葉知ってたんスか」

 

「私を何だと思ってんのよ!」

 

「そりゃ麻帆良が誇るバカレンジャーの……ぐぇぇぇっ!ギブ!ギブッス!!」

 

 

 

そして夜は更け、朝になる。

修学旅行三日目。京都での班別自由行動。

関西呪術協会に親書を届ける絶好の機会。

今日もネギを誘おうとする生徒たちのかく乱を朝倉に依頼し、木乃香の護衛を明日菜と刹那に託し、ネギはカモと共に総本山の鳥居をくぐる。

 

 

そこには千草たちの罠が仕掛けられていた。

ネギは千本鳥居の異空間に閉じ込められてしまった。

 

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