『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第12話 襲撃

 

修学旅行三日目の夜。

本殿の特に大きな一室を宛がわれたネギと3-A生徒一同。

 

「……っ!?茶々丸!!」

 

「はい、マスター」

 

真っ先に気付いたのは当然エヴァンジェリンだった。

彼女は姦しく騒ぐ生徒たちを押しのけて部屋の外へと通じる襖へと飛び出した。

 

「エヴァンジェリンさん!?」

 

そして何も知らぬ生徒たちの前でためらうことなく、右腕に魔力の剣を纏い勢いよく薙ぎ払う。

 

 

「「「!?」」」

 

 

「……気づかれていたか。

 これほどの術者がいるという情報はなかったが……」

 

流石は『闇の福音』と恐れられた最強最悪の魔法使い。

詠唱もなく発動した魔法で放った一撃は屋敷の一画とその向こう側の景色を消し飛ばした。

だがその破壊の中心に、ネギと年端も変わらぬ白髪の少年が無傷で立っていた。

 

「障壁……西洋魔術師か」

 

「……場所を変えよう。貴方ほどの相手とやり合うならば周囲を気遣う余裕はない。

 木乃香お嬢様を巻き込むのはそちらも本意ではないだろう?」

 

「……茶々丸、そいつらをまかせるぞ」

 

「はい、マスター」

 

襲撃者が目の前の小僧だけのはずがないと判断したエヴァは、自分とクラスメイト達の間に立ちふさがる茶々丸をその場に残し、天高く跳躍してその場を離れていった。

残されたのは杖を構えたネギと、刀を掴んだ刹那と、仮契約カードを構えた明日菜と木乃香。

そして目の前で起きた光景を処理できず呆然と口を開けたままの力なき少女たちだった。

 

「……え?何、撮影?ワイヤーアクション?

 あ、ドッキリ?」

 

「んなわけねぇだろ……ドッキリでこんな立派な屋敷と庭の一画を吹っ飛ばすかよ……!」

 

「エヴァちゃんが強いとは聞いてたけど、こんな無茶苦茶だとは聞いてないよぉ……」

 

「朝倉さん?何かご存じですの……?」

 

「襲撃者だと!?馬鹿な、本山には守護結界が!

 ……これほどの規模の破壊が起きたのに、誰も来ない……!?」

 

何も知らない生徒たちの発言に混ざり、違和感に気付いた刹那が声を上げる。

 

「静かすぎや……ウチは夜でも結構な数の人が働いとるのに……!」

 

「……生体レーダーに反応なし。

 現在この屋敷には皆さま以外の人間は存在しません」

 

「「「!?」」」

 

茶々丸の宣言にこれが異常事態と判断し、ネギたちは互いを見てうなずき合う。

 

「全員警戒しろ!確認に行くぜ!」

 

「オコジョが、しゃべった!?」

 

「うん!」

「はい!」

「「『来たれ』!!」」

 

ネギと刹那が勢いよく返事をして、明日菜と木乃香はアーティファクトを発動させる。

明日菜の手に巨大なハリセンが現れ、木乃香の服装が狩衣に代わり両手それぞれで持った扇を広げる。

 

「え?え!?手品ですの!?」

 

「ごめん、いいんちょ。みんなも今は何も言わずについてきて」

 

状況が分からないまま一丸となって夜の屋敷の廊下を歩く一行。

木乃香の案内で生徒たちの部屋から一番近い、使用人が詰めているはずの場所に向かうと。

 

 

「…………え?」

 

 

先ほど自分たちを歓待してくれた巫女たちと同じ姿の石像が立っていた。

まるで何かから逃げだそうとする姿勢のまま。

 

「なに……これ……!?」

 

「人が……石に!?」

 

「こいつは高等魔術の『石化』!陰陽術にもあったのか?

 いや、さっきのガキが西洋魔術師ならアイツの……!」

 

「まだそんな経ってへんはずや!ウチのアーティファクトで……!」

 

「!?お下がりくださいお嬢様!!」

 

扇を構えた木乃香を押しとどめ、背にした刹那が庭の方を睨みつける。

ネギと明日菜と茶々丸も並び、戦えない生徒たちを石像たちのある部屋へと押し込める。

石にされた人間が目の前に来て怯えた声を上げる者もいたが、今は彼女らを気遣う余裕はなかった。

 

 

「アッハッハ!まさか本山の結界をぶち抜くとはなぁ。

 こんなんやったら最初からあの新入りに任せといたらよかったわ」

 

「天ヶ崎、千草……!」

 

「ウチもおりますえー、先輩」

 

「嬉しいでネギ!こんな早く再戦の機会が巡ってくるなんてなぁ!」

 

「小太郎くん!?」

 

今までは奇襲を仕掛けてきた千草たち3人が、もはや身を隠す意味もないと堂々と姿を現した。

千草の両隣には着ぐるみのような式神が2体。構えている呪符を考慮すれば追加もまだあるだろう。

だがそれ以上に厄介なのが神鳴流剣士の月詠だ。

奴は典型的な戦闘狂。こんなところで暴れられたら木乃香や他の生徒たち、石にされた住人が巻き添えを喰らってしまう。

ならばと刹那はエヴァに倣って。

 

「……場所を変えるぞ、月詠」

 

「うふふふ♪はいな、先輩♪」

 

「ネギ、俺らも場所移そうや。

 女子供巻き込むんは趣味とちゃうからな」

 

「くっ……『契約執行900秒、ネギの従者『神楽坂明日菜』、『近衛木乃香』』!

 茶々丸さん、皆さんをお願いします!!」

 

「かしこまりました」

 

「明日菜さん!木乃香さん!」

 

「任せなさい!」

「気ぃつけて!」

 

刹那と月詠、ネギと小太郎も同じく森の中へと消える。

 

「ふんっ!残るはガラクタ人形と武器持っただけの素人のガキが一人!

 そんなんでウチを相手するつもりやなかろうなぁ!?」

 

「アンタこそいいの!?

 いいんちょと那波さんの家が怖くて手を引いたんでしょ!?」

 

「はっ!こうなったらもう総取りや!

 木乃香お嬢様と同じくそっちの嬢ちゃん二人も捕らえてしまえばえぇことやろ!

 人質にしてそいつらのお家も麻帆良を攻め滅ぼす戦力にしてやるわ!!」

 

「「!?」」

 

「こっ……のぉ!!」

 

激昂した明日菜に呼応したアーティファクトが、仮の姿であるハリセンから巨大な大剣『ハマノツルギ』へと変化する。

制限時間内であればどんな怪我でも治療できる『コチノヒオウギ』と『ハエノスエヒロ』を構えた木乃香が委員長たちを背に凛として立つ。

ガイノイドである茶々丸が装甲を展開し内蔵火器を露出させる。

 

「やるわよ木乃香!茶々丸さん!!」

 

「なんべんでも治したる!頼むで明日菜!!」

 

「これより、戦闘に移行します」

 

「返り討ちや!行きなぁ、猿鬼!熊鬼!!」

 

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