『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第14話

 

ネギの呼びかけに答えて現れたリンネが、そのままネギの頭に掌を置く。

彼の記憶を探っているのだ。数秒でこの旅行で起きたすべてを把握したリンネは手を離す。

 

「「「!?」」」

 

「傷が……!?」

 

そして周囲に白い炎をまき散らした。

炎が消えると戦いで疲弊していたネギと小太郎、そして目に見えて大きな傷を負っていた刹那の肉体が完全に回復している。

木乃香のアーティファクトと同等……いやそれ以上の回復能力だ。

 

「……失敗したな、ネギ。

 何故明日菜、木乃香と仮契約したときに二人に呪符破壊の呪符も渡さなかった?」

 

「えっ……?」

 

「本山で襲撃を受けた時は敵の前だったのでできなかったのはわかる。

 じゃがあらかじめ彼女らに呪符破壊の呪符を預けていればあの程度の術者ならどうとでもできたじゃろう。

 少なくともここまで追い込まれる事態にはならなかったはず。

 ……まぁ最終的にあの小僧が出てくるとどうしようもなくなるんじゃが」

 

「いや姐御、お説教はちょっと待ってくだせぇ!今は時間がねぇんだ!」

 

「そうよ!早くしないと木乃香が!」

 

「慌てる必要はない。時間はある」

 

「「「へ?」」」

 

「リョウメンスクナを復活させ使役するために木乃香は生かしておかねばならぬ。

 この短時間では木乃香の体に余計な仕込みを入れる暇もあるまい」

 

「な……で、ですがリョウメンスクナが復活してしまえば!」

 

「『あれ』は確かに滅ぼすのは難しいが、倒すだけならそうでもない。

 少なくとも、儂やエヴァが怯えるほどの相手ではない。

 ……まずは落ち着け。急いては事を仕損じる」

 

「そ、そうなの……?」

 

「伝説の鬼神より、強い……!?」

 

「おい朝倉、てめぇアタシらより詳しいんだろ?

 あの人は一体なんなんだ?」

 

「私だってそこまで知らないって!魔法知ったのも昨日だし!

 あの人は魔法の方でもネギくんの先生らしいってことくらいしか聞いてないし!」

 

小声と言うにはボリュームが大きすぎる少女たちのヒソヒソ話を無視して、今のリンネの発言に違和感を感じたエヴァが鋭く追及する。

 

「まるでスクナとやらと戦ったことがあるような口ぶりだな?」

 

「ん、まぁ……な。悪いが秘密じゃ。

 その方が『カッコイイ』からな」

 

「チッ……」

 

リンネと出会っての数か月で、彼女が『秘密にする』と言えば絶対に口を割らない性格だと把握しているエヴァは舌打ちして引き下がる。

 

「……おぉ、戦ったことがあるといえば。

 詠春を探そう。あ奴なら戦力になる」

 

「ですが、おそらく長も石に……」

 

「儂なら治せる。先ほどの白い炎でな。

 詠春以外は悪いが後回しじゃ。足手まといになるしそこまで時間を割くのは惜しいのでな」

 

屋敷に向かうリンネを追って、一行が進む。

やがて屋敷の廊下で石になっている詠春を見つけた。

即座にリンネが白い炎で包み込む。

 

「……ゲホッ、ゲホッ……、石化が……!?」

 

「なまったな詠春。それでもサムライマスターと呼ばれた紅き翼のNo.2か?」

 

彼はかつて、ナギと共に魔法世界で戦った仲間の一人。

親しい仲としか思えぬ口ぶりで語り掛けるリンネを見て、やはり彼女はナギのチーム『紅き翼』の関係者なのだとエヴァは判断した。

 

 

「……貴女は、一体どなたでしょうか?

 お会いした記憶がないのですが……」

 

 

「!?」

 

だから詠春がリンネの素性を尋ねたことに驚愕した。

リンネ自身も表情を歪め、少し罰が悪そうに答える。

 

「……六道リンネ。ネギの保護者を務めていたものじゃ。

 それより行くぞ。木乃香が連れ去られた。連中の目的はリョウメンスクナじゃ」

 

「!?わかりました、急ぎましょう」

 

詠春はどこからか刀を取り出しを構える。

ネギ、エヴァ、刹那、小太郎も各々気迫をみなぎらせる。

 

「じゃあ、僕たちは木乃香さんを助けに行ってきます!

 皆さんは屋敷で待機して、明日菜さんはその護衛を……」

 

「いや、全員で行くぞ」

 

「「「!?」」」

 

非戦闘員を置いていこうとしたネギをリンネが阻む。

 

「いやいや!そんな化け物がいるところにアタシらを連れてく気かよ!?」

 

「戦えん女子供を戦場に引っ張り出すなんざ正気の沙汰やないで!?」

 

「わたくしも、できるならこの手で木乃香さんを助けたいとは思っております。

 ですが多少武術を修めた程度の小娘……ネギ先生や皆さまのお力になれるとは……!」

 

「転移の使い手がおる以上、置き去りにしていく方が危険じゃ。

 先ほどの夏美のようにまた誰かを人質にしようとするやもしれん」

 

「「「!?」」」

 

「……確かに、結界が破壊された今となっては本殿の守りはない。

 目の届くところにいた方が危険は少ないでしょう」

 

「安心せい。儂の傍より安全な場所はこの世にないぞ?」

 

「ふん、大した自信だ……大ぼら吹きでないことを祈ろう」

 

「……覚悟、決めるしかないってことね!

 木乃香を助けに行くよ!夕映、のどか!」

 

「はいです!」

「う、うん!」

 

「へへっ、怖くて取材止めるくらいなら、麻帆良のパパラッチ名乗ってないよ!」

 

「くっそ~~……来るんじゃなかった……!」

 

「往生際が悪いですわよ、千雨さん。

 それに事はもはやわたくしたち3-Aだけの問題でもありません」

 

「わかってるよ……あのヤロー、麻帆良全部が敵だなんてぬかしやがった。

 とっ捕まってもらわねぇと安心して暮らせやしねぇ」

 

「夏美、大丈夫?」

 

「ちづ姉……正直、ちょっと怖い……」

 

「安心しろや。俺が絶対に守ったる。

 男として、あいつらに手ぇ貸してしもうた責任は取るわ」

 

「ふぇっ!?」

 

「……あらあらあら、春かしらねぇ~~」

 

微妙に緊張感のない一団が封印のある湖に向かって走る。

一般人に合わせているので移動速度は遅いが仕方がない。

戦闘員が抱えて移動しては、奇襲を受けた時に対処しきれなくなる。

 

川を上る形になり、水深が浅く開けた場所を通る途中で。

 

大量の化け物が突如として現れ、一行の行く手を阻んだ。

 

「「「「「!?」」」」」

 

『なんや、久々に呼ばれた思ったら嬢ちゃんばっかりやないかい』

 

『悪いな、呼ばれたからには手加減できんのや。恨まんといてな』

 

「な、な!なにこれ~~っ!?」

 

「妖魔の軍勢……お嬢様の魔力を利用して、手当たり次第に召喚したのか!」

 

「100体くらい軽くいるよ……こんなに大勢だと呪符も足りない……!」

 

千草が使役していた腑抜けた猿の式神とはまるで違う、本物の異形の化け物。

全包囲を取り囲まれ、決意を固めたはずの少女たちも己の考えが甘かったと実感する。

 

 

 

「『魔法の射手 連弾』……」

 

 

 

「『雷の10111矢』」

 

 

 

『『『『『!?!?!?!』』』』』

 

 

 

「失せろ」

 

 

 

しかし一団の一番前にいたリンネの周囲にとんでもない数の光の球体が現れ、彼女の宣言と同時に周囲の化け物に向かい一斉に降り注いだ。

轟音と光に耐え兼ね、少女たちは一斉に目を閉じ耳を塞ぐ。

 

彼女らが再び目を見開いた時、周囲にはただ破壊の跡が広がっていた。

 

「「「……」」」

 

「行くぞ」

 

「「「あ、はい」」」

 

再び歩き出したリンネにつられ、半ば放心した少女たちは言われるがままについていく。

 

「なんという威力と数……!」

 

「チッ……これほどとはな……」

 

だが歴戦の剣士である詠春と闇の魔法使いであるエヴァは立ち止まって周囲を確認し、彼女の実力に戦慄する。

そしてこの場の誰よりも付き合いの長い少年と使い魔は、時折今のように豹変する彼女のことを知っていた。

 

「カ、カモくん……」

 

「あぁ間違いねぇ。あいつらも馬鹿なことをしたもんだぜ。

 ……姐御を本気でキレさせやがった」

 

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