『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第22話

 

一日、また一日と時間は過ぎ、第78回麻帆良学園祭が開かれるまであと1週間足らず。

リンネの参戦により3-Aの設営準備は順風満帆……なのだが、ネギや生徒たちの方はそうでもなかった。

 

生徒たちに愛される我らがネギ先生は愛されすぎており、生徒たちのほぼ全員から『自分が所属する部活や個人での出し物にも遊びに来て』と勧誘されていた。

紳士かつ生徒の頼みを断れない彼は次々と二つ返事でOKを出してしまい。

更に小太郎から学園祭で開かれる武道会に一緒に参加しようと誘われ。

大人しい性格なのにこと恋愛に対してはとんでもない度胸を発揮するのどかに学祭デートに誘われ。

触発された委員長にも誘われたネギは身の危険すら感じて了承し。

しかも詳細は知らないが聞いたところによると、学祭中は魔法先生としての仕事があるとか。

 

「うわぁーーーーーん!

 こんなの体一つじゃ足りないよぉーーーーつ!!」

 

「うひゃあ~~、こりゃホンマにえらいことになってしもとるなぁ」

 

「あ、あの、やっぱり私と回るのは結構ですので……」

「わ、わたくしも……」

 

「!?いえ、何とかしてお二人との時間は取りますので!!

 どこか削れるところ……やっぱり」

 

「武道会出るの辞めるとか言わんよなぁ、ネギ?」

 

「ひぃぃぃっ!!」

 

今日もエヴァの別荘に集まるネギパーティー一行。

連日の設営作業で疲れているからと、修行仲間でない千雨もこの場を借りて休憩時間を確保していた。

3-Aの中でも精神的に大人びており半ば部外者だからこそ第三者目線でいられる彼女にも意見も出してもらい、全員でネギのスケジュール表を見て『あーでもない』『こーでもない』と議論していたが、やはりどうしようもなく。

 

 

「んで、また儂か」

 

「「「「「お願いします、姐御!!」」」」」

 

別荘に呼び出されたリンネが参戦し、状況を確認する。

しかし彼女の結論もまた『ネギが一人ではどうしようもない』というものだった。

 

「なんで、ネギを増やそう」

 

「「「「「は?」」」」」

 

リンネは取り出した白紙を使い即興で呪符を作りあげ、ネギの額に張り付ける。

 

 

ボフン

 

「「「……へ?」」」

 

「「「「「増えたぁーーーーーっ!?」」」」」

 

「3人いりゃ何とかなるじゃろ」

 

 

式神による身代わりではなく、3人とも間違いなくネギ本人。

こんな高等な術をあっさりと作り上げ実行したリンネの技量に、陰陽術をかじっている刹那と高位の魔法使いであるエヴァが頭を抱える。

 

「すごい、すごいよ姐御!これなら全部解決じゃん!

 ……ていうか私らの分も用意してくんない!?」

 

「やめとけ。相応に負担がある術じゃ。

 ネギなら何とかなると判断したがお主らじゃ無理じゃよ」

 

まず完全に三等分しているので能力も三等分。一人当たりが著しく弱体化している。

生徒の出し物への顔出しは問題ないだろうが魔法先生の仕事と武道会には対応できまい。

あとおつむの方も三等分……とまではいかないがかなり弱くなっている。

おまけに元に戻ったときに、別れていた間の記憶が一気に統合され脳に多大な負担をかける。

 

「数分や数十分程度ならまだしも数時間にも及べば……最低でも激しい頭痛、下手すりゃパーじゃな」

 

「「「えぇぇっ!?」」」

 

「「「うげ……」」」

 

「人間離れした頑強さや頭脳がなければ耐えられん。

 天才のネギでもギリギリじゃろうな。

 どうしようもない状況でもなければ使うものではない」

 

自分もお願いしようとしていた明日菜・朝倉・ハルナが渋い顔になる。

ネギをもう一体増やしてとお願いしようとしていたのどかと、ネギを一人持ち帰ろうとしていた委員長も踏みとどまった。

 

「あと互いに思考の共有はしとらんから、互いの動きもわからん。

 事情を知らぬ者の前で同じ人間が顔を合わせれば面倒な事態になる。

 それぞれの行動範囲が被らぬようにちゃんと計画を立てておけ」

 

「「「は、はい!」」」

 

ボフン

 

3人のネギが一斉に返事をしたところで効果時間が切れ、一人に戻った。

直後、ネギが一瞬眉間に皺を寄せた。この短時間でもしっかり反動はあるようだ。

 

「解除は時間制限式。今のはお試しじゃから5分にしておいた。

 途中で強制解除するには3人が集合せねばならんから注意しろ。

 当日までに効果時間が長いものを多めに用意してやる」

 

「ありがとうございます!

 カモくん、もう一回スケジュールの見直し手伝ってくれない?」

 

「合点でさぁ!」

 

他の少女たちもネギにくっついて奥のテーブルがある部屋へと移動していった。

しかしその場に残る少女が一人。

 

「あのー……恋愛相談もOKでしたよね?」

 

「ん?……もしやタカミチと?」

 

「う、は、はい……『学園祭、一緒に回ってください』ってお願いするつもりなんだけど……。

 本屋ちゃんたちみたいな勇気が出なくて……」

 

タカミチと明日菜の背景を知っていれば、明日菜が誘えばよほどの事情がない限りタカミチは応じるだろう。

……それが明日菜への恋愛感情によるものでないことは明らかだろうが。

 

「……あ!もちろん告白まではしませんよ!?

 言われた通りちゃんと高校まで待ちます!

 ……でも、やっぱり中学最期の思い出とか欲しいし……」

 

「となるとただ一緒に歩くだけなのに、勇気が出ないか。

 他の連中には相談しとらんのか?」

 

「しようかと思ったんですけど、朝倉とかハルナとかいいんちょに話したら大惨事になりそうだし……。

 なのでネギとカモと木乃香にだけ相談したんです。

 そしたらカモは『場数踏め』なんて言って、ネギとデートさせようとしてきたんですけど、ガキのネギに高畑先生みたいな大人の渋みなんて出せるはずないし……」

 

「ふむ、では儂が予行練習の相手を務めようか?」

 

「……えぇっ!?」

 

「何を隠そう、儂は変装と演技の達人じゃ。

 タカミチに似た大人の男性じゃろ?

 条件に合いそうな男のふりをするくらい朝飯前じゃよ」

 

「で、でも……」

 

「他人の恋路は積極的に応援してやる主義でな。

 無駄そうだったらすぐに切り上げりゃいいだけの話じゃ。

 明日の休みでよいか?」

 

「……ホントに、大人の男の人の振りなんてできるんですか?」

 

「んむ。待ち合わせ時間と場所はどこにする?」

 

なんだかんだ頼りになるリンネなら無駄足にはならないだろうと考えた明日菜は素直に彼女に予行練習を頼むことになり。

こっそり隠れて聞いていたネギパーティーが茶化しに来て、本人を置いてデートプランを考えるのに盛り上がり始めたり。

最終的に明日菜が一喝して、最低限の段取りだけが決まった状態で挑むことになった。

 

 

そして翌日。

 

 

「えっ…………」

 

「おう、来たかい嬢ちゃん」

 

明日菜と陰から彼女を尾行する一団が、待ち合わせ場所のベンチに座る男を目にして硬直する。

明日菜を見つけた時の反応から彼が待ち合わせの相手……リンネの変装なのだろうが、体格も気配も全くの別物。

 

「ちぃと年いってるが、タカミチとよく似てんだろ?

 どっちかつぅとタカミチが俺を真似してるみてぇだがな」

 

年齢は一回りは上だが、白いスーツ。眼鏡。煙草。髪型。確かに共通点は多い。

しかし明日菜はそんなことよりも、目の前の男に対するどうしようもない既視感と、胸を締め付ける焦燥感に駆られていた。

 

「えっと、アトリエの写真にあった、ネギのお父さんの仲間の……」

 

「おう。予行演習だってんならタカミチ本人の方がいいんだろうが、タカミチに迷惑かけちまうからよ。

 なんで、リンネの知る中で一番タカミチに近い俺が代役ってワケだ」

 

ゆっくりとベンチから立ち上がった中年の男は、硬直する明日菜に近づき彼女の頭に掌を乗せる。

 

 

「改めて自己紹介しとくか……ガトウだ。よろしくな、嬢ちゃん」

 

「…………!?」

 




ネギを分けた術に関しては、UQホルダーにて近衛刀太に使用されています。
ヒノカミを味方につけた以上他を勧誘する必要はなく、ヒノカミが安易なタイムマシンの使用を嫌うため、超はネギにカシオペアを預けない予定です。
ですがそのままでは多忙すぎるネギが原作通りにイベントを消化できないのでこちらを採用しました。
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