『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第25話

 

麻帆良学園祭前日の朝。

リンネの助力のおかげで、3-Aのお化け屋敷は余裕をもって完成……しているはずだったのだが。

一部の生徒が『時間があるなら限界まで凝りたい』などと言い出し、ノリと勢いで大多数が賛成してしまったため結局彼女らは今日も徹夜してギリギリまで作業をしていた。

それはリンネがしばらく前……具体的には明日菜のデートの予行練習の後から姿を消してしまい、更に学園一の天才であり様々な機械を発明してくれる超も私用を理由に離れたため目算が外れたことによるものだが、全ては自業自得である。

 

それでも、完成の目途はついた。

部活でも出し物がある生徒は徹夜明けでも元気いっぱいでクラスを飛び出していき、そうでない生徒は引き続き残って作業の仕上げ。

教師であるネギは職員室へ向かおうとしたが、そこで学園長からの呼び出しがかかった。

内容は『麻帆良学園祭の間の任務についての緊急招集』。

伝えに来た源しずなから『できれば刹那も』と付け加えられたことで、これが魔法関係の仕事であることを察した。

居残り作業組でネギパーティーのまとめ役でもある委員長と、スクープの匂いを感じた朝倉も強引に同行を決め、4人は指定された世界樹前広場へと向かう。

 

 

普段なら人が溢れかえっているはずの広場に近づくほどに、逆に人影がまばらになっていく。

人払いの結界が張られていると察したが、ネギと刹那はもちろん委員長と朝倉も影響をはねのけ目的地へとたどり着く。

 

「待っとったぞ、ネギ君」

 

広場には学園長と、十数人の生徒や教師。

タカミチや小太郎、同じ麻帆良女子中等部の教師もいる。

 

「まだネギ君には紹介しておらんかったの。

 ここに集まっとるのは学園都市に勤務する魔法先生、および魔法生徒じゃよ。

 全員ではないがの」

 

驚愕するネギたちに、次々と挨拶してくる魔法使いたち。

彼らはネギがエヴァの弟子になったことを知っているが、それでもネギを好意的に見ていた。

魔法世界の英雄の息子という肩書、学園長やタカミチの情報操作、そして何より『京都修学旅行での事件はネギが解決した』と言うことになっているからだ。

学園長はリンネの参戦を不問とする代わりに、リンネの参戦の事実そのものを隠蔽した。

よってリョウメンスクナノカミを撃破し関西呪術協会を救ったのは『ネギ』と『エヴァ』と『木乃香を筆頭とした巻き込まれた生徒たち』だと、彼らは信じている。

だから彼らの中で元賞金首であるがエヴァに対する態度がほんのわずかに軟化しており、魔法関係者となったばかりの委員長と朝倉をこの場に連れて来たことを表立って咎める者もいなかった。

 

挨拶もそこそこに、本題に入る。

此度の緊急招集は麻帆良における『世界樹伝説』への対処。

期間中の特定の場所での『告白行為を阻止すること』だった。

 

世界樹は魔力を持つ神木であり、22年に一度の周期で内包する魔力が頂点に達し、発光と共に世界樹の周囲6か所に魔力溜まりを形成する。

この膨大な魔力が人の心に左右し、『心を操る願い』に反応してしまう。

そして麻帆良では『世界樹が光る学園祭最終日に告白すると成功する』という『世界樹伝説』が広まってしまっている。

 

「占いや迷信が好きな女子生徒を中心に、実行したがる人は少なくないと思われますね」

 

「マジでマズイのは学祭最終日じゃが今の段階からそれなりに影響が出始める。

 生徒らには悪いがこの6か所で告白が起きないよう見張っていてほしい」

 

「マジかー……せめて1週間早く言ってくれてりゃ、アタシが記事で誘導して伝説を信じる奴減らせたのに……」

 

「ふぅむ、確かに朝倉くんならできたじゃろうなぁ。

 じゃがホントは世界樹の活性化は来年のはずだったんじゃ。

 異常気象で1年早まってしまい、それで今回の緊急招集となった訳じゃ」

 

「なるほど、そりゃしょうがないね。

 ダメ元で今からでも噂を流そうかな?」

 

「噂?どんなですか?」

 

「その6か所以外でオススメの告白スポットを捏造して流布しちゃうんだよ。

 ちうっちにも協力お願いしてネットを騒がせれば多少は効果も見込めるはずさ。

 なんだかんだ言いつつ手を貸してくれるしいい子だよねぇ」

 

「フォッフォッフォ。頼もしいのぉ。

 ……じゃが実はネギ君たちには、別の仕事を優先してもらいたいのじゃ。

 刹那君だけでなく委員長君や朝倉君も同席してくれたのは好都合じゃった」

 

「「「「?」」」」

 

 

「『超鈴音』……彼女がこの学祭で、何か妙な計画を企てているという噂がある」

 

 

「「「「え!?」」」」

 

突然出てきたクラスメイトの名前に、ネギだけでなく3人の生徒も大きく反応する。

 

超鈴音は魔法使いではないが、魔法を知っていることを彼らは知っている。

エヴァの従者である茶々丸は彼女の手によってつくられたロボットだからだ。

茶々丸の動力には魔法が用いられており、魔法を知らない人間が作り上げられるはずがない。

超と同じく麻帆良大学工学部に研究室を借りており、共同で茶々丸を開発した葉加瀬聡美も同様である。

 

「前々から正体不明の人物じゃったが、最近になって明らかに怪しい動きを始めた。

 この噂そのものが、彼女が意図的に流したのではとすら勘繰っておる」

 

「あの~~、アタシ超から学祭中に仕事頼まれてるんだけど……」

 

「「「えぇっ!?」」」

 

「学園祭の格闘大会全部ひとまとめにして、伝説の『まほら武道会』を復活させるんだって。

 報酬につられて司会役引き受けちゃったんだよねぇ……まずかった?」

 

「伝説の武道会……なんや燃えるやんけ!えぇ奴やんソイツ!」

 

「ふむ、確かに申請は受けておるが……気にかかるのぅ」

 

「でも!普段の超さんはとてもいい生徒です!

 何か悪いことをするなんて……」

 

「もちろん儂らの杞憂であればそれに越したことはない。

 ならば儂らから彼女への疑念を晴らすつもりでいてくれればよい。

 朝倉君。それに、大会に参加するというのならネギ君と小太郎君。

 君らには超君たちの動きを注視しておいてもらいたい」

 

「わかりました!」

 

「他の者も、余裕があれば彼女の動きに気を配ってもらいたい」

 

「「「「「はっ」」」」」

 

「以上じゃ。では、解散」

 

学園長の合図と共に人払いの結界が消え、魔法使いたちと入れ替わりに一般人が大勢集まってきた。

ネギたちも学園祭に備えて動き始める。

 

 

 

「……ハッ!?ではわたくしもネギ先生に告白できないということでは!?」

 

「今更!?いやまぁ他の場所ならいいかもしれないけど……あんだけ入念に考えたデートプランを今から変えるのもねぇ」

 

「~~~~っ」

 

「あ、本屋にもちゃんと伝えとかないと」

 

 

 

そして前夜祭が始まり、世界樹の発光現象が確認される。

ほぼ徹夜明けだと言うのに夜通し騒ぎ続けていた3-Aの生徒たちは、一般入場が始まる前に慌ただしく教室へと走る。

 

 

『ただいまより第78回『麻帆良祭』を開催します!!』

 

 

パレード、航空ショー、凱旋門、等々。

彩られた麻帆良はまさしく魔法の国かのよう。

 

始めて学園祭を体験するネギは子供らしくはしゃぎつつも、自分のクラスの出し物を確認したり生徒から誘われた出し物に参加したりと初日から大忙しだった。

リンネからもらった『自分を分身させる呪符』で3人に分かれていなけばとてもこなせないスケジュールだった。

しかし結局明日菜のデートの予行練習の日からずっと、ネギたちの誰も彼女と顔を合わせていない。

本人から『忙しくなるから』と聞かされているしあれほど強い師に何かあったとは考えられないが、それでも一抹の不安は抱えていた。

 

そして夜。

まほら武道会の予選が行われる龍宮神社へと集まったネギとネギパーティーの少女たち。

朝倉からの前情報通り、超が学園祭で行われる予定だった格闘大会すべてを買収したためとんでもない人数が集まっていた。

『伝説の格闘大会の復活』に多くの武道家と格闘マニアたちが沸き立つ。

これが任務を兼ねているとはいえ、ネギも小太郎ほどではないが静かに楽しみにしていた。

 

しかし予選前の主催者挨拶として超が檀上に立ち、挨拶とルール説明を始めたところで、ネギの淡い希望は打ち砕かれる。

 

 

『飛び道具及び刃物の使用禁止!

 そして……『呪文詠唱の禁止』!

 この2点を守ればいかなる技を使用してもOKネ!!』

 

 

二つ目のルールの意味が分からず困惑する一般人たち。

だがネギと従者の少女たち、監視に来た魔法使い、裏の人間たちは超の発言の意図を正確に理解し動揺する。

 

そして予選参加者の人混みの中に一人で立っていたリンネの口が、歪な弧を描いた。

 

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