『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第27話 まほら武道会 本戦

 

まほら武道会会場、選手控室。

ネギたちがやってきたことでようやく15人が揃った。

そう、一人足りない。六道リンネの姿がなかった。

 

「……気配は感じる。この会場にいるのは間違いないと思うけど……」

 

「徹底的に俺らから距離とっとる感じやな。

 『後ろめたいことしとる』って白状しとるようなモンやろ」

 

「ですが、悪事だとしたらなぜリンネさんが協力を……」

 

「カモ、アンタわかんないの?」

 

「姐御はちょいちょい突拍子のない行動するからなぁ。

 ただ他人を振り回すことはしても巻き込むことは嫌がるお人だ。

 なのに超に手ぇ貸してこんな大事にしちまおうってんなら相応の理由があるんだろ。

 そんでこうしてオレっちたちに何も言わねぇってことは、『止められるもんなら止めてみろ』って挑戦状かもしれねぇな」

 

「超さんが魔法をバラそうとしているのなら、そうしなければならない理由が彼女にあるのか。

 もしくは超さんの計画に隠された裏があるのか、ですね。

 ……どちらにしろ戦うことになるわけですが」

 

「姐御はどこにも所属してねぇし、魔法使いじゃねぇんだ。

 仮に魔法バレしてもノーリスクだしな」

 

「試合の相手……加えて、場合によっては超さん共々衝突することになる……。

 こうして目前に控え、改めて言葉にすると、その恐ろしさを実感しますわね……」

 

 

「おーい、ネギ坊主ー!」

 

先に控室にいた古と楓の二人がネギに近づいてきた。

 

「昨日の予選見てたヨ!

 明日菜やいいんちょにも驚いたが、ネギ坊主まで強かたとはビックリネ!」

 

「幼いながらもその身のこなしはただ者ではないと感じてござったが、予想以上で拙者も驚いたでござるよ」

 

「いえ!僕こそお二人がこんなに強いなんてびっくりしました!」

 

「学園祭終わたら手合わせ願うネ。

 ホントは試合で戦えたら一番アルが、このトーナメント表を見る限り難しそうネ……」

 

「……僕の初戦の相手、タカミチですからね……」

 

「それ言たら私も真名ヨ……ま!強者と戦えるだけでも十分ネ!ナハハハ!」

 

「これこれ、最初から負けるつもりでいたら勝てる試合も勝てぬでござるよ」

 

やがて選手たちの前に超と朝倉が現れ、本戦におけるルール説明の通達が行われる。

 

 

 

そして観客席。

ネギパーティーの不参加組はネギたちからもらった最前列のチケットで真っ先に入場し、一塊になって試合開始を待っている。

ただしネギと小太郎の従者だけでなく、頼れるもう一人の姐御分の千雨がまたも連れてこられていた。

状況が状況だけに、事情を説明された彼女も協力を渋ることはしなかった。

千雨がノートパソコンの画面を指さし後ろにいる面々に確認を促す。

 

「この大会の掲示板だ。見てみろ」

 

「うひゃぁ~~……無茶苦茶盛り上がってんねぇ」

 

「まだ本戦が始まってすらいねぇのにこの盛況っぷり。

 おまけに『気』やら『魔法』やらの単語の数々……いくらなんでもできすぎだ」

 

「『気』はわかるのですが、『魔法』もですか?」

 

一般人でも厳しい修行を積めば『気』を習得できることは彼女らも把握しており、予選では気を放出する『遠当て』という技を使う参加者もいたと聞く。

であれば予選参加者や観戦者が広めたとすれば『気』だけなら納得はできるのだが。

 

「調べてみたが、1週間くらい前から急にネット上で『魔法』って単語が飛び交い始めてた。

 ……まるでこの大会に繋がるよう仕込んでたみてぇにな」

 

「じゃ、じゃあー、超さんの狙いは、やっぱりー……?」

 

「世界中に魔法をバラそうとしている、で間違いねぇだろうな」

 

「……大問題、だよね?」

 

「間違いなくな。歴史に残る大事件、世界中で騒動になる。

 下手なテロよりよっぽど影響でけぇぞ。

 麻帆良に住んでるアタシも完全に当事者。

 麻帆良所属の魔法使いになっちまってるお前らにゃ、比喩でなく死活問題だ。

 下手すりゃ全員オコジョだぞ?」

 

「「「ひぃぃっ!」」」

 

「あらあら、困ってしまうわね」

 

間もなくネット上で魔法否定派の盛り返しが始まった。

昨日のうちにタカミチたちから連絡を受け備えていた学園の魔法使いたちが介入を開始したのだろう。

 

「これが魔法使いの電子精霊ってヤツか。とんでもねぇな。

 だが押し切れてねぇ……超の奴は一体どんな方法で動いてやがんだ?

 何十人単位のバイト雇ってなけりゃこんな規模の論争できねぇが、それじゃこの統率力と連携を維持するのは不可能だろ……?

 そもそもただのバイトにこんな自然な誘導やさりげない書き込みができるのか……?」

 

「ようわかるなぁ、千雨ちゃん。

 ものすごい勢いで文字が流れとってウチさっぱりや」

 

「……ダメだ!こんなノートパソコンじゃアタシにゃ何もできねぇ!

 後は頼むぜ、魔法使いさんたちよ……!」

 

ことパソコンとネットに関しては千雨もまた人並み外れた能力を持つが、魔法使いと未来人の電子戦にはついていけなかった。

もはや彼女にできることは、この『まほら武道会』が平穏に終わるよう祈るばかりだ。

試合の勝敗なんかよりそっちの方が彼女にとって重要だった。

 

だが千雨の願いは叶わなかった。

 

第一試合。

愛衣も優秀な魔法使いらしいがどちらかと言えば後衛寄りで、狭い舞台の上で一対一は苦手とするところ。

元より戦士として高い技量を持ち、麻帆良に来てからエヴァやリンネにボコボコにされ急成長してきた小太郎には遠く及ばなかった。

小太郎が相手を傷つけないように気遣う余裕すらあり、勝負は一瞬で終わった。

とんでもない高速移動や人が吹き飛ぶ光景が耳目に晒されたが、これはまだマシな部類だった。

 

第二試合。

大豪院という男はどうやら気を使えるようだが表の人間で、おそらく裏の人間であるクウネルには敵わなかった。

その決着もカウンター気味の掌底一発と大人しいものだった。

 

第三試合。

中村も大豪院と同じく一般人の武闘家で、遠当てを披露し会場を沸かせたがその隙をつかれ楓に意識を奪われた。

ネットの方もいくらか盛り上がったが一瞬だけ。あっという間に鎮静化した。

 

上手くいったのはここまでだった。

問題は第四試合。

一般人でありながら裏の人間に迫る実力を持つ古と、裏の傭兵である龍宮の戦い。

これがとんでもなく派手だったのだ。

古は縮地染みた歩法や気による肉体の強化と硬化や布槍術、龍宮は弾丸並みの速度と威力で小銭を打ち出す羅漢銭なる技を披露し、明らかに人間離れした超人同士の戦いを繰り広げてしまったのだ。

未だに裏の事情を知らぬままの古に『超常を秘匿する』なんて意識があるはずもなく、龍宮の方はむしろ意図的に派手に見せているようにも取れる始末。

勝敗自体はほぼ引き分けという形で古が勝利したが、ネットに上がった今の試合の映像を利用して超常肯定派がとんでもない勢いで盛り返してきた。

 

続く第五試合にて、高音の対戦相手である田中が麻帆良大学工学部が開発したロボット兵器であることが発覚。

正式名称は『T-ANK-α3』。通称『田中さん』。

『気』とも『魔法』とも無関係だが現代の科学と比較しあまりに常識外れな技術力はネットを大いに騒めかせた。

非常識を非常識と認識できないのは結界の張られた麻帆良の中だけ。ネットの向こう側にある麻帆良の外では認識阻害は通用しない。

そしてレーザー攻撃を受け全世界に裸体を中継された高音の怒りの拳は田中を一撃で水底へと鎮めたが、彼女が失ったものはもう戻ってこなかった。

 

 

 

「くっそ!ネットの奴ら、今ので麻帆良そのものの異常性に目を向け始めやがった!

 アレが麻帆良工学部のロボなら、この流れも超の仕込みってことかよ!」

 

掲示板の動きを監視していた千雨が観客たちの歓声にも負けない怒号を上げる。

 

「んで次は高畑とネギ先生の試合……!

 ダメだ、話題性には事欠かねぇ!どうやったって騒ぎになる!」

 

「え?なんで高畑先生とネギくんだと騒ぎになるの?」

 

「常識的に考えて10才が先生ってのがおかしいだろうが!!」

 

「「「…………あ!!」」」

 

「毒されてんなぁテメェら!!」

 

千雨が一般人に近い視点を持てるのは彼女自身の性格もあるだろうが、ネットを通じて麻帆良の外と積極的に触れ合っていることもあるだろう。

そして魔法を知った後でも彼女の支えになってくれたネットの世界が、魔法を肯定する意見に侵食されようとしている。

下手をすれば魔法使いたちよりも精神的に追い詰められていた。

 

「……さっきのロボのレーザーで会場は修理中……時間はあるな。

 お前ら、アタシは少しここを離れる……いや、テメェらもついてこい」

 

「え?どこへ!?」

 

「選手控室だ。連中に状況を伝えに行く」

 

「!?ネギ先生たちに魔法を使うなと言うつもりですか!?」

 

ネギとタカミチはどちらもこの試合を楽しみにしていた。

理由は理解はできるが、夕映は二人の意志を尊重して千雨を止めるべきかと考えていたが。

 

 

「逆だ!馬鹿みてぇに派手にさせる!」

 

「「「えぇ!?」」」

 

「この流れで中途半端に否定しても火に油を注ぐだけだ!

 だったらもうとことん非現実的にして『やらせ』だと思い込ませる方がまだやりやすい!」

 

「……のった!やっぱ祭りは派手でないとね!!」

 

「わかったら行くぞ!……いや置いてくなお前ら!!」

 

ノートパソコンを脇に抱えた千雨が人込みをかき分け道を開こうとするが、魔法使いとなったネギパーティーの少女たちは人込みを飛び越えていく。

引き返した彼女らは千雨を抱え、本来は関係者以外立ち入り禁止の控室へと駆け込んだ。

 

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