『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第30話

 

「しかし……『魔法』でござるか。

 世界は広いでござるなぁ、ニンニン」

 

「それならあのネギ坊主の力も技も納得ネ。

 ……いやぁ~、でもまだ信じられないアルヨ!」

 

「私らからしたら、くーちゃんが一般人ってのが信じらんないけどね」

 

一回戦が全て終わり、ネギと愉快な仲間たちは古と楓を加えて控室に集まっていた。

勝ち残った選手の内クウネルとリンネは相変わらず控室にはこないので彼らの貸し切り状態だ。

 

二回戦までのインターバルに、二人は当然ネギたちのことを問い詰めに来た。

その追及が躱せるとも思えず、そして二人の実力はすでに裏でも通用する。

何より、リンネという強大な存在が敵となるかもしれない状況では彼女らの力は何としても借りたい。

 

「そして超と姐御が魔法をバラそうとしてるアルか……」

 

「確証はねぇが、今のところその可能性が一番高い。

 世界中を巻き込む大事件になるぞ」

 

「……超は親友ネ。だから超が悪いことしようとしてるなら、私が止めるアル!

 いくらでも手を貸すネ!……だけど」

 

「だけど?」

 

「……あの姐御は止められるアルか?」

 

「「「「「う”っ…………」」」」」

 

エヴァだけでなくタカミチも確認したが、やはりリンネは自己強化の術を一切使っていなかったそうだ。

彼女はエヴァの別荘で明日菜に『咸卦法』を披露したらしいので、それを使っていたというのならばあの威力にも納得はいくのだが。

 

ちなみにリンネは確かに術は使っていなかったが、端末に残る個性『ノー・モア・タイム』にストックされた力を使っていた。

個性は気や術ではなく身体機能の一種なので、エヴァたちでは感知できなかったのだ。

 

「もしあの拳がわたくしに振り下ろされていたと思うと……震えが止まりませんわね」

 

「強いとは思っとったが、桁が違うわ。流石のオレも全然ワクワクせぇへん」

 

「奴が魔法をほとんど覚えていないという理由がよく分かった。

 そもそも覚える必要がないのだな。

 素であれほどの力なら気や魔力で強化すれば敵無しだ」

 

『硬スギテ刻メネェカモナ。ツマンネェ』

 

「もしかして姐御が本気出したらこの街消し飛ぶんじゃない……?」

 

正解。彼女の持ちうる強化方法全て……『武装錬金』や『聖光気』、『界王拳』と『天神武装』の重ね掛けまで披露すれば、街どころかこの島国が世界地図から消えるだろう。

 

「実は、試合に出てきた六道さんの心を、のどかのアーティファクトで読んでみようとしていたのですが……」

 

「ペ、ページが全部まっくろになっちゃったんですー」

 

「『いどのえにっき』の表紙まで全部塗りつぶされそうだったから、慌てて解除させたんだけどね」

 

「宮崎のアーティファクトを知ってりゃ対策はしてるとは予想はしてたから、ダメ元だったがな」

 

「夏美がいたなら、私たちのアーティファクトの合わせ技も考えたのだけれど……」

 

「そいつぁ流石に危険すぎらぁ。できなくて正解だったぜ、那波の嬢ちゃん」

 

「次のリンネさんの試合は……せっちゃん、だいじょうぶ?」

 

「試合を見る限り、雪広さんを傷つけたくないようでした。

 少なくとも対戦相手を殺すつもりはないのでしょうが……私に勝ち目はありませんね。

 あの剛腕に加えて極まった陰陽術と多彩な特殊能力もある。

 彼女にとっては所詮オマケでしかないのでしょうが、それでも我々にとっては十分以上に脅威です」

 

「……いえ、そうじゃないと思います。

 以前、マスターが僕とカモくんに教えてくれたんですけど……信じられないかもしれませんが……」

 

ネギが言いよどみながら言葉を紡ぐ途中で、にわかに会場が騒がしくなる。

今はここまでの試合のハイライトと朝倉のトークで場をつなぎ、木っ端みじんにされた舞台を修理するための建材が集まるを待っているはずだが。

 

 

 

『姐御!?ど、どうしたの?二回戦はまだまだ先だよ!?』

 

「いやな、会場ぶっ壊したのは流石にやりすぎだと怒られてな……。

 なんで責任もって儂が元通りにしようかと」

 

『あ、そっか、大工の達人……でもまだ材料が全然集まってないんだって。

 手は借りたいけどもうちょっと待ってて』

 

「んなもんいらん。すぐ終わる」

 

 

パン

 

 

壊れていない桟橋の上に立っていたリンネが掌を叩くと、音と共に光が広がる。

そして光が収まると湖の上には破壊されたはずの舞台があった。

 

『…………へ?』

 

「ついでに前より頑丈にしておいた。

 これを壊せるのは儂ぐらいじゃろ。

 あ、もう舞台を壊したりはせんからな。猛省しとる。

 そんじゃ、次の試合までまた引っ込むから」

 

『へ?へ!?』

 

呆然とする朝倉と観客たちを放置して、リンネは現れた時と同じように姿を消した。

 

 

その一部始終を、控室から顔を覗かせたネギたちもばっちり目にしていた。

 

「幻術……ではない……!?変成!?

 いやまさか、無からの物質生成だと!?」

 

「ありえない……それは神の御業だ!」

 

「……さっき兄貴が言いかけてたことの続きを言うぜ。

 ずっと前に兄貴が、姐御の本来の戦闘スタイルが何か尋ねたことがあったんだ。

 丁度兄貴が魔法剣士スタイルで行くと決めた頃の話さ」

 

リンネがネギの前で力を振るうのは、ネギに対して『ナギ』の戦い方を教える時くらいだった。

例外は二回。先日の京都修学旅行での戦いと6年前の悪魔の軍勢に対処した時。

前者は『ナギ』で、後者は『ヒノカミ』だった。

そしてヒノカミの端末である『六道リンネ』の適性とは。

 

「姐御は前衛の『戦士』か後衛の『魔法使い』かで言うなら、純粋な後者だそうだ。

 それも攻撃に参加するより仲間の治療や補助が得意な『サポート特化型』。

 その中でも特に、戦闘以外の面で友軍を支える『後方支援要員』だとよ……!」

 

「「「「「はぁぁぁっ!?」」」」」

 

「あんだけ強いアイツが後方支援のサポーター!?嘘やろ!?」

 

「つまり、あのパワーの方がオマケ……!?」

 

「確かに、一撃で舞台を破壊した力より一瞬で舞台を修復した術の方が……!」

 

「……えぇいっ!なんだあの化け物は!

 なぜあんな奴がこの世界にいる!?一体どこから湧いて出た!?」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「別の世界かららしいヨー」

 

控室の隠し監視カメラでネギたちの会話を盗み聞きしていた超が呟いた。

そして別のモニターに映る完全に元通りなった舞台を見てお腹を押さえていた。

 

「余計なこと言わなきゃよかタ……!」

 

『強大な神格を持つ神の端末』。

あんなものを見せられた以上疑う余地はないが、神様だったら奇跡の大安売りはやめていただきたいものだ。

協力を求めたのは自分だし頼もしいことこの上ないが、頼り切っては駄目になってしまいそうだ。胃が。

 

「……ムム!?」

 

どうやらタカミチたちは、リンネが試合に出るためこの場に縛られている隙に超を調べることにしたようだ。

この神社の地下の秘密の区画に、既に敗退した明日菜と委員長も同行して突入するつもりらしい。

 

「高畑先生だけでもキツイのに、今のアスナサンといいんちょはマズイネ……!」

 

麻帆良学園都市の最高戦力と、闇の福音の薫陶を受けた剣士と武闘家。

その闇の福音本人が敵に回っていないだけでもありがたいが……。

 

「いや、エヴァンジェリンサンが敵視してるのはリンネサンで……ともかく!

 ハカセ、警護用のロボを起動するネ!」

 

「了解!量産型『田中さん』軍団、発進です!」

 

「真名サンも迎撃ヨロシク!」

 

「やれやれ……まぁ、報酬分はしっかり働くさ」

 

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