『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第31話 リンネVS刹那

 

二回戦第一試合。

犬上小太郎VSクウネル・サンダース。

 

大豪院ポチという選手は本戦参加者の中でははっきり言って最底辺であり、彼を下したクウネルの実力を正しく測れていたのはリンネを除いていなかったようだ。

小太郎は『ただ者ではない』とは気づいていたがそれでも見積もりが甘かった。

試合開始直後の瞬動による接近を見切られ顎と背中に一撃ずつ。そこでようやく事実を理解した。

だがここで気付いたのは小太郎だけではなかった。

参加選手用の観戦席、そこに堂々と居座っている非参加者のエヴァに告げ口されたネギが舞台に向けて大声で叫ぶ。

 

「小太郎くん!その人、父さんの仲間だった人だって!」

 

「なんやとっ!?」

 

「おや、エヴァに気付かれてしまいましたか」

 

「本当の名前は、『アル……」

「ネギくん!!」

 

ここまで物静かな雰囲気だったローブの青年が大声を張り上げ、ネギの発言を妨げる。

 

「私のことは『クウネル・サンダース』とお呼びください」

 

「えっ?へっ?」

 

「相変わらずふざけた奴だ……!」

 

「アナタもこれからは是非そう呼んでくださいね、キティ」

 

「私をその名で呼ぶなーーーーっ!!!」

 

赤き翼が解散してから10年間、麻帆良の地下で食っちゃ寝生活していたから。

かつての戦いで負った傷を癒すためではあるのだが、そこから着想を得た偽名を彼はいたく気に入っていた。

そしてエヴァンジェリンの本名……『エヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェル』。

その中でも特に本人が気に入らない『キティ(子猫)』を連呼する当たり、流石はナギも警戒する性格の悪さと言ったところだ。

 

「へっ、なるほどな……アンタ、エヴァさんと同格かい。

 そりゃ今のオレやったら敵わんわけやな」

 

「おや、随分とあっさり認めるのですね」

 

「麻帆良きて散々ボコボコにされとるからな。いくら馬鹿のオレでも理解するわ。

 ……せやけどだからゆーて降参なんかせんからな!!」

 

多重分身と狗神召喚を駆使して挑む小太郎だが、どれだけ攻撃しても全く応えた様子がない。

いや、むしろ幻でも相手にしているような。

 

「……アンタまさか、その体!?」

 

「フフフ、気付かれましたか」

 

「分身体……ならいくら攻撃しても……反則やろ!?」

 

「申し訳ありません。どうしても勝たねばならぬ理由がありまして」

 

「くそっ!本体はどこに……がはっ!?」

 

本体を見つけ出そうと観客席に視線を走らせた小太郎は、しかしその隙を突かれた。

腹部に叩き込まれた掌底が決定打となり、小太郎は意識を失った。

 

『……犬上選手、気絶!クウネル選手勝利ーーーっ!』

 

「……尤も、このままでは私が勝ち残ったところで……どうしたものでしょうか」

 

ローブで姿を隠したままのアルビレオ……いやクウネルは舞台の上に倒れる小太郎を放置して立ち去って行った。

 

続いて二回戦第二試合。古VS楓

一回戦での龍宮との戦いで腕を骨折した古は棄権する予定だったが、超の調査のためには少しでも武道会の終わりを先延ばしにしたい。

よって彼女の怪我は木乃香により治療され、楓との試合が執り行われた。

しかし木乃香は治癒術師として優秀な才能を持つがまだ未熟。万全の状態にはできなかった。

彼女のアーティファクトは3分以上経過した怪我には効果を発揮せず、何よりそれらがなくとも、元より甲賀中忍である楓の方が実力が上。

古は敗北したが、観客たちは一回戦の彼女の激闘と負傷を思えばやむなしと、落胆する声は小さかった。

 

そして二回戦第三試合。高音VSネギ。

高音の全力戦闘形態『黒衣の夜想曲』は背後に影で作り出した巨大人形を背負い操るというもので、非常に派手だった。

そんな高音とネギの戦いを見た司会の朝倉が。

 

『何のモンスター映画だーーーー!?

 これは流石に私も『CGなんじゃね?』という疑問を拭いきれません!』

 

と援護射撃を加えたため、会場もネットもバカ騒ぎが広まった。

CG加工派が盛り返しているのを見て千雨が安堵する。

 

「……ま、そもそも16人のうち8人が女学生で2人がガキなんだ。

 武道会に参加する面子としては現実味がなさすぎる。

 やらせを疑う方が当然だわな」

 

「姐御も見た目アタシらとそう変わんないしねー。

 しかも一回戦でクウネルさん以外の大人の男は全滅しちゃったし」

 

そして間もなく高音にネギの一撃が加わり気絶。

だがなんと『己の衣服も含めて』彼女の魔法だったらしく、彼女が気を失うと同時に魔法が解除されてしまい。

一回戦に続いて二回戦でも、その裸体を観衆の前に晒すこととなった。

 

 

「責任取ってくださーーーい!!」

 

 

高音は司会の朝倉が勝敗を宣言する前に、ネギが身に着けていたローブをひったくって逃走した。

なお、この後運営側が流したリプレイ映像ではちゃんと高音の体はモザイクで隠されていた。

『人の心を捨てたマッドサイエンティスト』を自称する超であったが、それ以前に彼女もまた乙女。

例え視聴者の集客率が見込めるとしても、そこまで外道にはなり切れなかったようだ。

 

 

『お待たせしました!

 二回戦最終試合、桜咲選手対六道選手!

 この試合で学園最強ベスト4が決定します!』

 

 

刹那は超の仕込みで和風メイド服のようなものを身に着け、野太刀の代わりにデッキブラシを持ち込んでいる。

六道はいつもの真っ赤な和服と側頭部の鬼の仮面、左腕に巻いた帯、そして右腕には。

 

『!?六道選手、木刀を持っています!

 彼女が剣を使うという情報は入っていませんが……!?』

 

「……どういうつもりですか、六道さん?」

 

「一回戦は、正直悪かったと思ってな。

 相手を無視して舞台を壊して反則負けにさせるなど……相手を傷つけたくないとはいえ、武道会でやってよい所業ではなかったよ。

 故に二回戦では、ちゃんと対戦相手に合わせようと思うてな」

 

「それで、私と剣で勝負を?

 ……貴方の力は理解していますが、にわか仕込みの剣術で戦おうとは侮辱が過ぎます……!」

 

「だぁれが『にわか仕込み』じゃ」

 

リンネは右腕一本で持った木刀を頭上に持ち上げ。

 

 

「『月牙天衝』」

 

 

まっすぐに振り下ろす。

 

『…………雲が』

 

リンネの木刀から飛び出した衝撃波が、遠くの空に浮かんでいた雲を左右に両断した。

 

 

「儂が本来『後方支援要員』であるとはネギから聞いたようじゃな?

 ならばもう一つ教えてやる。儂が一番不得手とするのは『無手の肉弾戦』。近接戦闘では主に刀を使う。

 ……何を隠そう、儂は『剣術の達人』じゃ」

 

「なん……だと……!?」

 

『いや、あんな遠くの空まで届くんなら『近接戦闘』じゃなくない!?

 あぁもう、とにかく!

 二回戦最終試合……FIGHT!!』

 




ご報告。なんとか7月一杯は維持できましたがついにストックが尽きました。
またしばらく間を開けて、ストックを確保してから再開します。
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