『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第34話 ネギVSリンネ

 

『一回戦でかの『デスメガネ・高畑』と大熱戦を繰り広げ、二回戦では謎の巨大人形相手に華麗な勝利を収めた驚異の子供先生『ネギ・スプリングフィールド』選手!

 対するは、一回戦では舞台を一撃で粉砕する剛腕を披露したかと思いきや、二回戦では流麗な剣舞を見せつけた謎の女戦士『六道リンネ』選手!

 ……しかもなんと、なんと!六道選手はネギ選手の保護者であり育ての親、そして武術の師匠であるとのことです!

 つまりこれは師弟対決!勝敗の行方に期待が高まります!』

 

司会の朝倉のアナウンスで大盛り上がりする観客たちに対し、ネギとその周囲の面々のテンションはだだ下がり状態だった。

今のリンネは普段の彼女ではない。

魔法使いになったばかりの委員長には甘かったが、裏社会の剣士である刹那には厳しかった。

であれば、わずか10才とは言え刹那にも劣らぬ力を持つ魔法使いのネギは……。

 

「だ、大丈夫ですよ先生!

 命まで取られることはなかったですし、後遺症もないですから!」

 

「でもものすごく痛かったんですよね!?」

 

「……えぇ……まぁ……正直、最初は死んだかと思いました」

 

「ぼーやなら痛みが原因でショック死するかもな」

 

「怖いこと言わんといてやれや!

 アンタが『死ぬ』とかいうとシャレにならんで!?」

 

「ですがリンネさんを倒さねば、ネギ先生のお父さんと戦えないですよ。

 ……偽物らしいですが」

 

「偽物だとしても、奴のアーティファクトで再現された『ソレ』は限りなく本物に近い存在だ。

 それこそ、先日リンネが模倣した『ガトウ』よりも更に精度は上だろう。

 いいか、何としても勝て。泣き落としでもなんでも使って決勝の舞台に上がるのだ」

 

「応援が私欲まみれじゃんエヴァちゃん……」

 

「いくら兄貴の親父さんに会いたいからってなぁ」

 

「そんなことしなくてもこの場の勝ちくらい譲ってやるっての」

 

「普段のマスターならそう言ってくれそうなんですけどね……ん?」

 

 

 

「「「「「…………でたぁ~~~~っ!?」」」」」

 

 

 

「なんだよ、人をお化けみてぇに……いや、似たようなモンか?」

 

控室から会場への廊下で足踏みしていた集団の中に、いつの間にか件の人物が紛れ込んでいた。

 

「……って姐御!今『勝ちを譲ってやる』って言ったか?」

 

「アル……クウネルの奴から直接事情は聴いたからな。

 全く戦わねぇってのはアレだから、まぁ、稽古つけてやるくらいで済ますさ」

 

「あ、ありがとうございますマスタぁ~~~~っ!」

 

「……さ、とにかく行くぞ。朝倉の嬢ちゃんと観客を待たせっぱなしだ」

 

「はい!」

 

先ほどの消沈はどこへ行ったのやら。

彼女が超の協力者であり世界中を巻き込む騒動を起こそうとしていることすら頭から抜けてしまったようだ。

リンネとその後に続いて軽快に進むネギの背中を少女たちが見送る。

 

 

「……いつもの姐御が帰ってきたみてぇだな」

 

「そのようですね……落差が激しすぎて、別人かと思いましたが」

 

「ネギせんせーの悩み、解決してよかったですー」

 

「……『別人』……?」

 

皆が安堵する中でただ一人、エヴァだけがその言葉を反芻する。

そして先ほどまでの試合でそうしていたように、様々な探知の術式を込めた眼でリンネの後ろ姿を見つめる。

 

(波長が……違う……?)

 

先ほどの試合までのリンネは、エヴァやネギたちが知る彼女とは性格が違うと感じたものの波長に関しては普段に近い形だった。

だが今のリンネは口調が少し違うような気がするものの性格はほぼ同じ、なのに波長がまるで別人かと思うほどに違う。

彼女が己の人格や波長を自在に変えられるのはガトウを模倣した件ではっきりしているが。

 

(であれば、今も誰かの模倣をしている……?

 この状況で何故そんなことをする必要がある?

 いや、そもそもこの波長には覚えが……)

 

そこで、遠く離れたリンネがちらりと後ろを振り向き、はっきりとエヴァと目線を合わせた。

そして諦めたかのように力なく、ふっと笑った。

 

(!?何だ、今の眼は!?

 だが私はあの目を……どこかで……!)

 

 

 

『さぁ、いよいよ準決勝第二試合を始めます!』

 

舞台の上で距離を取った二人が身構える。

 

『!?二人の構えが全くの同じです!

 まさしく写し鏡のよう!流石は師弟ということでしょうか!』

 

「試合の制限時間は15分……10分で切り上げだ。

 それくらいは持たせてみせろよ?」

 

「はい、マスター!」

 

「そんじゃ……稽古つけてやるぜ、ネギ!」

 

 

『FIGHT!!』

 

 

二人は魔法の射手を周囲に出現させ、背負ったまま突っ込む。

瞬動を駆使した高速戦闘を繰り広げながら雷の魔法が飛び交い、やがて『舞台では狭い』とでも言うかのように二人は空を飛び、無詠唱とは思えない出力のリンネの大魔法が会場の遥か彼方にまで届き学園都市全体を揺るがす。

 

中継で武道会を警戒しているだけだった学園の魔法使いたちもその圧力を察知した。

『魔法使いではない』という外様の人間が放った一撃に、彼らもまた戦慄していた。

 

 

 

「…………まさか」

 

「あ……ぁ、あぁぁっ……!」

 

だがたった二人。異なる視点でリンネを見つめていたものたちがいた。

彼らの眼には、少女に重なる赤毛の青年の姿が見えていた。

 

 

 

試合開始から10分後。

彼女は突如としてギブアップを宣言。

『弟子の成長に満足した』とか、適当な理由を並べてさっさと姿を消してしまった。

朝倉も観衆も呆然としていたが一方が試合を放棄したのなら残っている方が勝利に決まっている。

六道リンネという選手は最初から最後までマイペースに、武道会を好き放題にかき乱してから立ち去った。

 

 

 

その本人は試合後、武道会会場から少し離れた広場に移動しぼんやりと立っていた。

周囲に人影はない。人払いの結界が敷かれているようだ。

 

そこに現れる二人の人影。

 

「……よぉ、お前らならすぐに来ると思ってたぜ」

 

「六道リンネさん……いえ、アナタは……!」

 

「おっと、それ以上は厳禁だぜアル。

 『素性や正体を追求しない』って『コイツ』と約束してただろ?」

 

「……!?」

 

そう言って不敵に嗤ったリンネは右手の親指で自分自身を指さす。

その発言と振る舞いから、『今の彼女の体を操っているのは別の人間』だとはっきりした。

 

「休憩時間はそう長くないはずだ。

 さっさと会場に戻りな。ネギを待たせんじゃねぇぞ」

 

「……かしこまりました。ですが一つだけ」

 

「んだよ」

 

「どんな形でも……また会えたこと、嬉しく思いますよ」

 

「っ!?やめろよ恥ずい!とっとと行っちまえ!」

 

顔をしかめたリンネに追い払われクウネル……アルビレオが姿を消す。

これでこの場に残るのは、リンネともう一人の来訪者だけ。

 

「……演技、ではないのだな?先日のガトウのような……」

 

「逆さ。ネギやお前らの前ではずっと演技してたんだ。

 この体の持ち主に近づけてな……でねぇと一発でバレちまうからよ」

 

「別人の体、か。そして一回戦と二回戦でその体を動かしていたのが本来の持ち主というわけだな」

 

「ま、そういうことだ。

 アルの奴が出張ってこなきゃ最後まで隠し通すつもりだったんだがなぁ。

 ……アイツに頼んだのは昔のオレだったんだがな」

 

「つまり、貴様は学園来訪初日からずっと目の前にいたのだな。

 これからは『幸せの青い鳥』の主人公を、愚かと笑えんよ」

 

「ハハッ、それ言ったら何年も一緒だったネギはどうなるんだって話さ。

 まぁネギは昔の『オレ』と顔を合わせたこともなかったから仕方ねぇけどよ」

 

「言いたいこと、問い詰めたいこと、いくらでもある。だがまずは……」

 

 

 

「15年ぶりだな。『ナギ・スプリングフィールド』」

 

「おう」

 

すぐ目の前にまで来たエヴァの頭を、ナギは無造作に撫でた。

かつて麻帆良で彼女と別れた時と同じように。

 

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