『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第37話 麻帆良学園VS超一派

 

計画の決行は麻帆良学園祭三日目、19時頃。

超鈴音及びその一派は麻帆良学園の世界樹の周囲、6か所の魔力溜まりをロボット兵器群を用いて占拠する。

学園祭期間中に魔法使いたちが『告白防止スポット』と設定していた6か所だ。

『人の意識を操る願いを叶える』力を持つ世界樹の魔力を用いて儀式を行い、全世界規模の『認識改変魔法』を行使する。

それは軽度の催眠術程度の効力しかないが、地球上に存在する世界樹と同等規模の聖地12か所と共振し、世界中を覆い尽くす。

 

ならばもしこの認識改変魔法にて『魔法が存在する』と人々に刷り込めば。

 

「やがて世界中の人間が、自発的に魔法を信じるようになるってか……!」

 

「これが超さんと、マスターの計画……!?」

 

従者と共に学園長室に呼び出されたネギたちは、タカミチが持ち帰った計画書を確認し驚愕している。

 

「ロボット兵器およそ3000体、巨大生体兵器6体……超りんってそんなに頭数用意できるの?」

 

「ロボット兵器の方は一部を、武道会の地下で僕たちが確認したよ」

 

「田中さんがワラワラ出てきたのよ。

 お陰で先に進むの、すごい大変だったんだから」

 

「間違いありませんわ。

 侵入者の迎撃にあれだけの数を吐き出せるならば、数千体いてもおかしくはないかと」

 

「しかし……やはりにわかには信じがたいでござるよ」

 

「この計画書が虚偽である可能性は?」

 

「我々も判断しかねている。高畑先生たちが持ち帰った地下の情報を鑑みるに全てが嘘ということはないだろうが、鵜吞みにするのは危険だ」

 

 

 

「全て事実だろう。疑う時間の方が無駄だ」

 

 

 

この会合の場に参加しているのは学園長。

先ほど超と向かい合ったタカミチと魔法使いたち。

超の教師とクラスメイトでありリンネとも親しいネギとその従者や関係者たち。

そして。

 

「エヴァ、そう言い切る理由は?」

 

「奴らなら、計画を全部知られたところで力づくで勝てるからさ。

 この程度の情報公開ならば痛くも痒くもないということだろう」

 

「……だとしたら、舐められたものだな」

 

「舐めているのは貴様らだよ、魔法使いども。

 超という小娘の方はどれほどか知らんが、六道リンネは桁違いだ。

 奴を敵に回した時点でお前たちに勝ち目はない。

 最初からこれは負け戦だよ」

 

「……それほどなのか?」

 

「後でぼーやに記憶を見せてもらえ。

 残酷な現実を嫌でも思い知ることになるだろう」

 

「ではなぜお主は儂らにつくんかの?

 お主ならばリンネくんに勝てるということかの?」

 

超の協力者はリンネだけではない。

研究者仲間の葉加瀬、彼女らの製造した茶々丸、傭兵の龍宮も超側の戦力として記載されている。

この状況でエヴァが学園側に協力する意図がつかめない。

彼女は魔法バレなど気にする性格ではない。従者も向こう側。

最近は馴れ合いが続いているが学園の魔法使いとは敵対関係に近かったはずだ。

 

「いや、私がついても精々勝率がコンマ台で上昇する程度。

 1%未満であることは変わらんさ」

 

「な……!?」

 

「であれば、猶の事何故……?」

 

「個人的に、私が六道リンネと戦いたいのだ。

 それが結果的に貴様らを利するというだけのこと。

 協力ではなく、利害の一致と思えばいい。

 『闇の福音』の名にかけて宣誓しよう」

 

魔力が学園中に満ち溢れる学祭最終日ならば、麻帆良の結界があれど全盛期の7割程度の力は出せる。

劣勢である学園としては、タカミチや学園長に匹敵する戦力となるだろうエヴァの助力は喉から手が出るほど欲しい。

 

「……わかった、信じよう。学園の者たちにはそのように通達する」

 

「ありがとうございます、エヴァンジェリンさん!」

 

「えぇい引っ付くな!私のためだと言っただろう!

 ……それより、いいのかぼーや?」

 

「何がですか?」

 

「お前の方こそ学園側につかねばならん理由もあるまい。

 やり方は強引だが、魔法の存在が明るみになれば救われる者もいるだろう。

 それこそ、サウザンドマスターなら超に加担してもおかしくはない」

 

「「「え!?」」」

 

「ははは。確かに彼は、細かいことを気にしない人だったからね」

 

「「「えぇっ!?」」」

 

ナギを英雄としてしか知らぬ学園の魔法使いたちは驚愕するが、それを聞いてもネギは穏やかに笑う。

 

「……超さんの計画が正しいのか間違っているのか、僕にはわかりません。

 父さんなら手を貸すかもしれないし、実際にマスターは手を貸している。

 ……でも僕自身には、学園のために戦う理由があります」

 

「ほう、何だ?」

 

 

「だって、僕は先生です」

 

 

「「「……え?」」」

 

「魔法が世界にバレたら、僕はもう麻帆良学園にいられなくなります。

 皆さんが卒業するまでまだ半年以上あるのに……そんなの無責任じゃないですか。

 だから僕は魔法使いでも、マスターの弟子でもなく、教師として最善を尽くす義務があります」

 

「「「……ネギ先生ーーーっ!!」」」

 

ネギは感極まった生徒たちにもみくちゃにされた。

本人にそのつもりはなくとも折角ビシッと決まったところだったのに、台無しである。

 

「……フォッフォッフォ。天晴れじゃぞネギ先生」

 

「くっくっく、おい聞こえていたか?高畑先生?」

 

「勘弁してくれよエヴァ……教師としては、完全にネギくんに追い抜かれちゃったなぁ」

 

「……どれだけ決意しても、勝ち目が薄いことは変わりませんけどね。

 だから少しでも勝率が上がるように知恵を絞らないと」

 

「ついてはアンタら、オレっちたちの作戦に乗る気はあるかい?」

 

「ふむ……聞かせてもらおうかの」

 

今回の計画、主体は超だ。

だがタカミチが対面した限りでは協力者であるリンネを持て余しているようだった。

自陣営の最高戦力なのだから彼女の意見は蔑ろにできなくて当たり前。

そしてリンネのことを一番知っているのはネギとカモだ。

生徒たちは武道会での過激な彼女に驚愕していたが、ネギたちはそのようなリンネも見たことがある。

 

「まずマスターは、冗談や誤魔化しは言いますが嘘はつきません。

 なのでマスターの隣で超さんが『嘘偽りない』と宣言した以上、この計画は全て事実であると認識してください」

 

「そして姐御が嫌うのは無関係な者を争いに巻き込み傷つけること。特に子供にゃ相当甘ぇ。

 あとは外道な手段とルール違反だ。こっちが違反しねぇ限り敗色濃厚でもルールは守る。

 弱点は致命的に運が悪いこと……なんだが、こいつぁムラがあるしギャンブル勝負に持ち込むのは無理だから意味がねぇな」

 

そして大規模な儀式魔法であるため遮蔽物のない開けた場所に直径30メートルという巨大な魔法陣を用意する必要があり、発動には数十分の呪文詠唱が不可欠。

故に、基本的な作戦は『6か所の魔力溜まりを防衛している隙に術者である超を打ち倒す』ということになる。

リンネが超の護衛についていた場合に計画が破綻するが、それはもう神に祈るしかない。

 

「……だが、戦力差を考えれば1か所の防衛すら危うい。

 時間稼ぎができなきゃ意味がねぇ。追加の戦力が必要だ」

 

「だが本国からの応援は間に合わないぞ?」

 

「人員は無理でも大量の武器なら転移魔法で間に合うだろ?

 ……この街にゃあとっておきの予備戦力があるじゃねぇか」

 

「「「?」」」

 

 

「学園中の生徒たちに協力を呼びかけます。もちろん、魔法のことは秘密にして」

 

 

ネギが力強く宣言する。

リンネならば一般人を巻き込みかねない作戦など激怒しそうなものだが。

 

「魔力溜まりをロボ軍団で制圧するには、その場にいる一般人を押しのけねばなりません。

 つまり、先に一般人を巻き込むと決めたのは超さんとマスターです。

 であれば彼らを傷つけたり犠牲にしたりが前提の作戦でなければ、マスターも反論はできません。

 それにロボの進軍が開始すれば、どの道皆さんに隠し通すことなんてできませんし」

 

だったらこの争いを『争い』ではなく、学園祭の催しの一つとして『ゲーム』にする。

そして生徒たちをゲームの参加者としてこちらの戦力に取り込んでしまう。

 

リンネは己の性分として、何も知らぬ一般人を傷つけることができない。

仮に後で治療できるとしてもだ。武道会での委員長との戦いがそれを証明している。

故に、戦場に彼女が手出しできない人員が溢れかえっていれば少なくとも大規模な力の行使は不可能になる。

 

「……ククク。いやらしい手を考えるじゃないか、ぼーや」

 

「戦いと言うのは自分の得意を押し付け、相手に不得意を強要すること……マスターの教えです」

 

「ふむ、よかろう。ネギ君の案を下地として作戦を検討する」

 

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