『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第38話 麻帆良祭合同イベント

 

麻帆良祭合同イベント変更のお知らせ

『ロボ軍団VS学園防衛魔法騎士団』

 

今年の学園祭最終日のイベントは学園全体での隠れんぼの予定だった。

前年度の鬼ごっこは非常に盛り上がり、今年は自粛して大人しめにすると言う話だったので、急なイベント変更に生徒たちは驚いたが好意的に受け止められた。

麻帆良の学生たちはどいつもこいつも派手好き祭り好き。

些細なことは気にしないし、面白くなりそうならどんな非常識でも大歓迎だ。

 

今回のイベントは、所謂『サバゲー』。

参加者は支給された武器とローブを身につけて、侵略してくるロボ軍団を迎撃するというものだ。

ただしその武器は『自律型魔導ゴーレムを機能停止させる本物の魔法具』であり、ローブも防護魔法を組み込んだもの。

学園長が本国と交渉し、急遽数を揃えてもらった。それぞれ数千もあれば参加者全員に問題なく行き渡る。

そしてイベントの主催は例年通り『雪広コンツェルン』。

直前になって独断でイベント内容を変更するような強権を振りかざす行為は委員長の嫌うところだが、ことの重大さを理解している彼女は今回ばかりは躊躇わなかった。

敬愛するネギと今生の別れになるやも知れぬとなれば無理もあるまい。

鬼気迫るどころか鬼をも退けかねない気迫である。

 

この作戦において、魔法使いたちは『ヒーローユニット』として活動する。

運営側が用意した強大な戦闘力を持つという『演出』のお助けキャラ扱いだ。

魔法使いたちが大っぴらに魔法を使える口実を用意しつつ、ついでに『まほら武道会はこのイベントのデモンストレーションだった』という噂を流してネットの騒動の火消しを計る。

 

 

「へっ、小賢しいガキだぜ……こういうやり方は嫌いじゃねーがな」

 

今回ばかりは傍観者でいられないと、ついに戦場に立つ決意をした千雨が忙しなく指を動かしながら不敵に笑う。

とは言え、彼女の戦場は現実世界ではなく電脳世界だ。

ネギとの仮契約で出現した彼女のアーティファクト『力の王笏』は直接戦闘では一切役に立たないが、ネットワークをはじめとするシステムにアクセスしハッキングすることができる。

そして超が用いるのは科学であり操る敵は機械の兵隊。

今回に限って言えば仮契約でアーティファクトを手に入れた『だけ』の千雨が、修行してきた先輩従者たちを大きく上回る戦力となり得る。

 

『ちうさまっ!敵の動きを感知しましたっ!』

 

「っ!?くそ、もう動き出しやがったか!!」

 

ネズミ姿の電子精霊の一体が、ネットでのイベント広報活動を行っていた千雨に報告する。

世界樹の魔力が最大限活性化するのは19時半頃なので計画開始は1時間前と推測し、イベント開始時間は18時半と告知していた。

多少ずらしてくる可能性は考慮していたが、現在の時刻は17時半前。想定よりもかなり早い。

 

「朝倉ぁっ!!」

 

 

 

「了解っ!」

『皆さま!緊急事態です!

 イベント開始の鐘が鳴る前ですが、敵ロボ軍団が侵攻を開始する兆候をキャッチしました!』

 

司会役を引き受けた朝倉が、千雨からの連絡を受けてイベント会場全体にアナウンスする。

朝倉自身も戦力となり得るが、この戦いを『イベント』として扱うために、武道会に引き続き彼女に進行と誘導を引き受けてもらった。

 

間もなく湖より、大量のロボ軍団が姿を現した。

前もって『敵は湖から攻めてくる』という情報を噂として流していたので多くの参加者がすでに陣取っていた。

そしてロボ軍団たちは容赦なく、一般人である参加者たちに攻撃を開始した。

 

 

「「「キャァァァァアアアアアアッ!!!」」」

 

 

武道会でも高音相手に披露した、人体にダメージを与えず武装や衣服のみを焼却する熱光線……通称『脱げビーム』である。

 

『ロボ軍団が奇襲を仕掛けてきました!すでに麻帆良湖岸では戦端が開かれています!

 魔法使いの皆さん、準備はよろしいですか!?

 では……ゲーム、開始!!』

 

本物の魔法具を装備し魔法使いに扮した一般人たちが、大量のロボ軍団と衝突する。

同時に、ヒーローユニットである学園の魔法使いたちが一斉に動き出した。

その中には当然、女子中等部3-Aの若き魔法使いたちの姿もあった。

 

 

「行くよ、刹那さん!」

 

「ハイッ、明日菜さん!」

 

 

「こちら、救護班ですー。怪我した人いたらウチを呼んでやー」

 

 

「前衛は任せるですよハルナ!

 フォア・ゾ・クラティカ・ソクラティカ……『白き雷』!」

 

「いけぇ!『炎の魔人(インフェルノ・アニキ)』!!」

 

「えと、えと……!『風精召喚 戦の乙女 11柱』!!」

 

「ナント、本屋たちもこんなに強かたトハ!

 私も負けてられないアルヨ!」

 

 

「狗神!『疾空黒狼牙』!」

「『魔法の射手 連弾・影の43矢』!」

 

「あらあら、あの子達息ピッタリね♪」

 

 

「真名……!」

 

「フフフ。お前とは本気でやってみたかったよ、楓」

 

 

『ヒーローユニットが各地で大暴れです!

 彼らにはポイントは付与されませんが、彼らの撃破ポイントは皆さんには加算されません!

 さぁ魔法使いの皆さん!彼らに負けないよう頑張らないと、賞金は手に入りませんよ!?』

 

 

従者や仲間たちが戦う中で、ネギは一人の従者だけを伴って独自行動していた。

その従者とは『雪広あやか』。

彼女のアーティファクト『白薔薇の先触れ』は『どんな人物だろうがアポイント無しで面会できる』という能力を持つ。

どんな妨害も無視して、だ。

つまりゲームで例えるなら彼女は『道中のダンジョンや敵を無視して一気にラスボス戦に挑むことができる』。

同行者の数に制限があり彼女自身も戦場に向かわねばならない危険はあるが、今回の相手は『超鈴音』。

敵となったがクラスメイトであり、ルールに則った勝負を提案してきたのも彼女だ。

ネギはともかく委員長に対して過剰に攻撃したり、彼女を人質に取ったりはしないはず。

 

参加した生徒たちや学園の魔法使いたちが拠点防衛で時間を稼いでいる内に、ネギと委員長が超を倒し、儀式を止めさせる。

これが麻帆良側の計画であった。

 

 

「残念♪いいんちょのアーティファクトの存在を知てれば、対策するのは当然ヨ」

 

だがネギたちが辿り着いたのは何の変哲もない、戦場から離れた人気のない街外れ。

そこに超が一人でポツンと立っていた。

儀式に必要な巨大な魔法陣を配置できるようなスペースは当然ない。

 

「この計画において、私はただの一人の『戦闘員』ヨ。

 儀式発動の術者でもなければ、私を倒したところで計画は止まらなイ」

 

「そんな……じゃあまさか、術者はマスター!?」

 

「ナハハハ、それも違うヨ。

 彼女ほどの戦力を遊ばせておくのは惜しいからネ。

 ……術者は君たちも知らない人物ヨ。

 いいんちょのアーティファクトで直接向かうことはできないネ」

 

「くっ……!」

 

ローブを脱いだ超は特殊な戦闘スーツを身に着けていた。

その背中には時計のような機械が埋め込まれている。

 

「私の役目は『ネギ坊主たちの足止め』ヨ。

 しばらく付き合てもらうネ」

 

「あぁん!?テメェ一人で兄貴を止めようってのかい!?」

 

「ならばこちらは、超さんを倒して情報を頂きますわ!」

 

「……リンネさんに言われて時間跳躍弾の使用は止めたし、過去への時間移動も禁じた。

 でも同時間軸・同空間への跳躍は駄目と言われてないネ」

 

「時間……?」

 

単語の意味がわからず呟くネギはそれでも目の前の超から意識を逸らしていなかった。

一瞬も油断はしていなかったはずだ。

 

「ガッ!?」

 

「兄貴!?」

「ネギ先生!?」

 

だが気付けば超はネギの背後にいて、彼女の放った拳がネギに突き刺さり吹き飛ばす。

 

「おまけに『呪文回路解放』も禁止されてるが……カシオペアがあれば十分ヨ。

 何しろ『タイムマシン』。時間稼ぎなら得意中の得意ネ♪」

 

「タイム、マシン……!?」

 

「さぁネギ坊主。見事私を倒し、先へと進むことができるかナ?」

 

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