『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第39話

 

ネギが超と対峙した同時刻、学園側でも異変が発生した。

学園警備システムメインコンピュータに何者かがハッキングを仕掛けてきた。

侵攻するロボ軍団へのハッキングによる妨害に専念していた千雨が気づいた時にはもう遅かった。

魔法使い自慢の防護壁が紙切れのように貫かれ、1分足らずで学園結界が機能停止した。

 

同時に、超の計画書に記されていた6体の『巨大生体兵器』が湖から姿を現す。

麻帆良の地下に封印されていた鬼神を科学による拘束具で使役したこれらは、魔の力を封じる学園結界があっては起動できない。だが邪魔な結界はたった今消えた。

鬼神は極大脱げビームを斉射しながら、6か所の魔力溜まりに向けて1体ずつ進軍していく。

 

鬼神は力の差が大きすぎて、参加者に渡した魔法具では雀の涙程度のダメージしか与えられない。

ヒーローユニットである魔法使いたちは急いでそれぞれの対処に向かったのだが。

 

『っ!?続けて湖から何かが飛び出してきました!

 数は9!すさまじいスピードで方々に散っていきます!』

 

朝倉のアーティファクト『渡鴉の人見』が捕らえた映像が上空に表示される。

 

「なんだありゃ!?」

「こっちに来るぞ!?」

 

その何かが、参加者たちを器用に回避しながら麻帆良の道を疾走する。

すれ違った参加者と、映像を確認した朝倉が揃って声を上げた。

 

「『……スーパーカー!?』」

 

鬼神を迎撃しようとするヒーローユニットたちに、鬼神を追い越して迫るスーパーカーは直前で大地から飛び跳ね、空中で姿を変える。

物理法則を無視した変形が終わると、それぞれの車の意匠を残した人型の巨大ロボとなった。

 

 

「「「変形したぁーーーーっ!!?」」」

「「「変形ロボだぁーーーっ!!!」」」

 

 

『『『…………!』』』

 

「「「ぐぁぁぁぁーーーーーっ!!」」」

 

翼を広げた9体の機動兵器が、手にした武器でヒーローユニットたちを薙ぎ払う。

 

『あ、あれは……!』

 

ネギの記憶の映像を見ている朝倉は、その姿に見覚えがあった。

かつてネギの故郷を襲った悪魔の軍勢を蹴散らした、リンネが召喚した機動天使。

 

ミカエル

ガブリエル

レミエル

メタトロン

サリエル

ラファエル

ウリエル

ゼルエル

ルシフェル

 

『……アークエンジェルズ!!』

 

「あれが、六道リンネが使役するという使い魔……!?」

 

「ぐっ……なんという力だ!」

 

「……まさか、私たちがコレと戦うことになるなんてね……!」

 

ネギパーティーや魔法使いたちはそれぞれ攻撃を開始するが、天使は物ともせずに突っ込んでくる。

学園側の事実上最高戦力であるタカミチが己の最強の技を放つが、彼と相対する最強の機動天使ルシフェルは手にしたメイスで拳撃を全て撃ち落し、そのままタカミチへと振り下ろした。

 

「ぐぅっ……!」

 

かろうじて直撃は避けたが、タカミチはこの一合で機動天使の実力を正確に把握した。

 

「ナギやエヴァと同格……どころじゃない!

 皆!この天使は1体1体がサウザンドマスターをも超える力を持っている!

 単独で挑むのは無理だ!連携して当たるんだ!!」

 

「なんですって!?」

「そんな敵が、9体も!?」

「……勝てるわけない……!」

 

ここにきてようやく、魔法使いたちも残酷な現実を受け入れざるを得なかった。

この戦いはエヴァの言う通り、勝率1%未満の負け戦なのだ。

隊列は乱れ統率は失われ、はぐれた者から一人ずつ各個撃破されていく。

攻撃をまともに喰らった者は外傷こそほとんどないが、魔力が著しく減衰し意識を失っていた。

『魂を砕く力』を応用した精神攻撃だった。

そして崩壊したヒーローたちの防衛網の隙間を通って、ロボ軍団を従えた6体の鬼神が進軍を再開する。

 

「抜かれたぞ!行かせるな……っ!」

 

『…………』

 

叫んだことで目立ってしまった魔法使いに狙いを定めたミカエルが、手にした刃を振り下ろす。

 

 

ガキィン!

 

 

「なっ……」

 

『チッ、マジデ強ェナ。

 本気ノオレノ手ガ痺レルナンザイツブリダ?』

 

「お前は……確か、チャチャゼロ!?」

 

『ゴ主人ガ手ェ貸シテヤレッテ言ウカラナァ。

 マ、本物カドウカ知ラネェガ、天使ッテンナラ斬ッテミテェカラヨォ!』

 

思わぬ援軍に九死に一生を得た魔法使いたちだったが、未だ彼らの前には傷一つない9体の天使が立ちはだかっていた。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

学園結界の機能停止により有利になるのは超一派だけではない。

今回に限り麻帆良に協力すると宣言したエヴァと彼女が操るチャチャゼロもまた、完全に全盛期の力を取り戻していた。

吸血鬼である彼女は天使との相性は最悪だが、アレらにかろうじて対抗できるのはタカミチの他にはエヴァくらいしかいない。

麻帆良の上空に浮かび地上の魔法使いたちに援護射撃を続けていたエヴァが地上に降りようとしたが、そこで敵の接近に気付き動きを止める。

 

「よぅ」

 

彼女の前に六道リンネ……いや、リンネの体を借りたナギが姿を現した。

 

「……ほぅ。ここでお出ましか」

 

「お前に麻帆良に付くよう頼んだのはオレだが、お前をフリーにしたらこっちにどんだけ被害が出るかわかったもんじゃねぇからな。

 ……『私とダンスを踊っていただけますか、レディ?』」

 

「ククク……『えぇ、喜んで』!

 リク・ラク・ラ・ラック・ライラック……『来たれ氷精、闇の精』!」

 

「『雷を纏いて吹きすさべ南洋の嵐』……派手に行くぜぇっ!!」

 

 

「『闇の吹雪』!」

「『雷の暴風』!」

 

 

最強の魔法使い同士が放つ同種の大魔法がぶつかり、生じた嵐が夜空を呑みこんだ。

二つの光は何度もぶつかりながら何度も衝撃を発生させ、遠く離れた眼下の麻帆良の地を揺るがした。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「ついに姐御が出てきやがったか。エヴァに向かったのは幸いだな。

 とにかく、今はあのデカブツを止めねぇと……オイ、魔法使いさんたちよ!

 アタシと代われ!結界はこっちで何とかする!!」

 

『!?だがっ……いや、頼む!』

 

「やるぞテメェら!」

 

『『『『『『『はい、ちうさま!!!』』』』』』』

 

ハッキングを仕掛けているのはおそらく茶々丸。

魔力で動くガイノイドだ。魔法使いでも人間の処理速度ではどうにもならない。

しかし桁外れのハッキング能力と、電子の王に相応しい権限を発揮するアーティファクトを持つ千雨ならば茶々丸にも対応できる……はずだった。

 

『そうはさせませんよー』

 

「っ!葉加瀬!?」

 

『まさかこの土壇場でこんなアーティファクトを手に入れるなんて……控えていてよかったです。

 申し訳ありませんが、ここからは私と茶々丸、二人がかりでお相手させてもらいますので』

 

『千雨さん……お覚悟を』

 

「っ……ざけんな、こっちだって一人と7匹がかりだ!行くぞ!!」

 

『『『『『『『はいっ!ちうさまっ!!!』』』』』』』

 

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