『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第40話 強制認識改変魔法

 

頼りのヒーローユニットたちは天使たちにほぼ駆逐され、ロボ軍団と6体の鬼神は魔法具を持っただけの一般人たちで対処しなければならなくなった。

しかし一般人と言えど非常識の街麻帆良で暮らす優秀でトンデモな生徒たちばかり。

古のように気を扱う力すら持っている者もいる。

学園結界の対処を千雨に任せた魔法使いたちの妨害工作もあり、彼らはかろうじて、鬼神とロボ軍団の進軍を抑えることができていた。

 

だがすでに麻帆良側の戦力はボロボロだ。

魔法使いの大半は戦線離脱、残存戦力も精神的なダメージや疲労は大きい。

タカミチやチャチャゼロやネギの従者の少女たちの一部がかろうじて抗えているような状態だ。

超はネギと委員長が、リンネはエヴァが抑えているがどちらも膠着しており、こちらから援軍を送る余裕などなく敵を倒した彼らが援軍として駆け付けることも期待できない。

千雨も奮闘してくれているが、茶々丸と葉加瀬の二人が相手ではかろうじて押し返すのが精一杯。

そして、未だに儀式の魔法陣は見つからずその術者も不明。

賞金を提示して生徒たちに捜索と情報提供を呼び掛けているが発見したという報告なし。

 

(じり貧だ……勝ち目がないとは理解していたが、ここまでいいようにやられるのか!?

 もはや僕らには、世界樹の魔力が減衰を始めるまでの時間稼ぎに徹するしか……!)

 

「っ!?明石教授!鬼神が!」

 

「何っ……!?」

 

麻帆良の生徒たちからの抵抗を受けながらも少しずつ前へと進んでいた6体の鬼神が、突如として咆哮を上げ幻のように消え失せたのだ。

 

「反応、完全に消滅しています……送還されたのでしょうか?」

 

「だとしても何故このタイミングで……」

 

明石教授は時計を見る。現在19時過ぎ。

間もなく世界樹の魔力が最大まで活性化する時間帯だ。

儀式を敢行するためには急いで拠点を落とさねばならない状況だというのに、結界を解除させてまで動かした鬼神をここで下げる理由がわからない。

 

「っ!?湖から超巨大なエネルギー反応!」

 

「なんだって!?」

 

「映像、出します!!」

 

「……なんだこれはっ!?」

 

湖の中からゆっくりと浮上してきたのは、世界樹に迫る巨体。

強固な装甲と無数の砲塔で構成された鋼の機兵が、背中の純白の翼を大きく広げた。

 

それはネギたちも知らない10体目の機動天使。

 

アザゼル

 

 

 

『ついに、ついにラスボスが姿を現しました!

 これが最後の戦いです!

 皆さん、急いで湖に向かって下さい!!』

 

 

 

「「「!?」」」

 

司会の朝倉の声を聞いた参加者たちが、拠点を放棄して一斉に湖へと走り出してしまった。

そして再びスーパーカーの姿に変形した天使が6体、誰もいなくなった魔力スポットへと爆走する。

 

『おい朝倉!テメェ何してやがる!?』

 

「ち……が……!あ、た……!」

 

通信を繋いだ千雨が怒鳴るが、彼女のモニタに映るのは苦悶の表情で震えながらなんとか言葉を絞り出そうとする朝倉。

そして、彼女の隣に浮かぶ。

 

 

 

『う、うらめしやぁ〜……』

 

 

 

『相坂、さよ!?』

 

先日リンネに助けてもらったさよは恩人の要請に応じ、武道会の時から気付かれないようにずっと朝倉に取り憑き情報を流していた。

そして葉加瀬からの合図に合わせて、朝倉に金縛りを仕掛けたのだ。

 

『先程の朝倉さんの声は、こちらが用意した合成音声ですよー。

 武道会の司会の録画からサンプリングして作りました。よくできてたでしょー?』

 

『なっ!?テメェら、最初からこれが狙いか!?

 今までアタシに押されてたのは演技か!?』

 

『いいえ。私と葉加瀬は全力で挑んでいました。

 押し負けると判断したので次善策に切り替えさせていただきました。

 我々と千雨さんの勝負は、我々の完敗です。

 ……ですが、全体の勝敗は別です』

 

『〜〜っ!!』

 

作戦を、逆手に取られた。

こちらの主戦力は事情を知らない一般人。

だからこそ簡単な嘘に引っかかり誘導されてしまった。

千雨たちは鬼神を止めるために麻帆良結界の再展開に尽力していたが無駄になった。

天使は魔に属するものではなく麻帆良の結界では止められない。自軍のエヴァが弱体化するだけ。

強力過ぎる天使を一般人相手にぶつけることはしないと考えていたが、一般人がいなくなれば進軍は容易。

残る僅かな魔法使いを抑えるなら天使が3体もいれば十分。

そもそも、スーパーカーに変形した天使は速すぎて魔法使いでも追いつけない。

 

『ちうさまっ、全拠点制圧されましたっ!』

『魔力の胎動を感知!認識改変魔法が発動しますっ!』

 

『……まだだ!今すぐ儀式場を破壊すりゃあ……っ!』

 

結局今まで見つからなかったが、流石に術式が発動すれば魔力探知に引っかかる。

残存する戦力に伝えて直ちに向かわせようと、魔法陣の座標を表示した。

 

 

 

『……くっ、そぉぉぉおおお!!』

 

 

 

魔法陣は高度4千メートルに浮かぶ、飛行船の上だった。

あれほどの高さになると、地上から砲撃しようとしても射程が足りない。

向かうにも時間と戦力が足りない。

 

『発動まであと数分……間に合わねぇっ!

 ネギ先生が……アタシらの、世界が……っ!』

 

もはや打つ手無し。

千雨も麻帆良の魔法使いたちも絶望に支配されていた。

 

 

『あ、あのぉ〜、どうして皆さんは、そんなに深刻になってるんです?』

 

 

だから千雨は、耳に入ってきたさよのとぼけた発言に激昂して喰いかかる。

 

『決まってんだろうが!

 認識改変魔法で魔法がバラされたら世界中が大混乱になる!

 魔法使い連中も、この麻帆良学園も、何もかもお終いだ!!』

 

『え?え?違いますよ?』

 

『何が違うってんだ!!』

 

 

 

『認識改変魔法の内容、全然違うものでしたよ?』

 

 

 

『…………何?』

 

『超さんたちが内容書き込むところ、ちゃんと見せてもらってます。

 あれなら誰も困らないし、ただの勝負なら私もお手伝いしようかなって……あ!

 これ秘密にしなきゃダメなんでしたっけ!?』

 

『構いませんよー、さよさん。

 もう勝負はつきましたしー』

 

そしてついに儀式が発動し、世界樹から光の柱が昇り、認識改変が行われた。

麻帆良学園に居た者全て……朝倉や千雨すらも改変の対象になった。

 

 

「……え?あれ!?

 今の感覚は……これが認識改変の内容!?」

 

『オイ!どういうことだ葉加瀬!』

 

『皆さんが感じた通りですよー。

 認識改変の内容は、最初から……』

 

 

 

 

『『世界が平和でありますように』です』

 

 

 

やがて『武装解除魔法』を込めた砲弾で参加者たちを攻撃していたアザゼルは儀式の発動を見届けてから、敗北を演出するように自己崩壊し姿を消した。

続けて朝倉の合成音声を用いた葉加瀬により、第78回まほら学園祭最終イベント『ロボ軍団VS魔法騎士団』の戦いは、魔法騎士団の勝利とアナウンスされた。

 

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