『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第41話 たった一人の戦い

 

世界樹直上4千メートルで発動した全世界に対する『強制認識改変魔法』は上空1万8千メートルまで打ち上げられた。

更に世界樹の魔力を吸い上げ、数分後には世界12か所の聖地と共鳴し、3時間後には全地球を覆い尽くすだろう。

 

だがその内容は『魔法などの超常の存在を信じやすくする』ではなく『世界平和』だった。

 

「お疲れさまですー、超さん」

 

「いやぁ、ネギ坊主といいんちょは強敵だたヨ。

 まさかカシオペアを使ても足止めが限界とハ。

 割と本気で倒してしまうつもりだたガ……面目ないネ」

 

「いえ、超鈴音。私たちも千雨さんを止めることができませんでした」

 

「……お、きたか。お主らもお疲れー」

 

世界樹から少し離れた芝生広場で学生たちが後夜祭を楽しんでいる頃、更に少し離れた場所で、超やリンネたちが互いの健闘をたたえ合っていた。

やがてその場にネギや学園の魔法使いたちが集まってきた。彼らの表情は一様に険しい。代表して未だわずかに余力があるタカミチが前に出る。

 

「……どういうことだい、超くん。

 君たちの目的は魔法の存在を世界にバラすことではなかったのかい?」

 

「正直に言うと、最初は本気でそのつもりで計画を進めてたヨ?

 でも事情が変わてネ。魔法バレを急ぐ必要はなくなタ。

 この騒ぎを起こしたのは別の目的ヨ」

 

「その目的とは?」

 

「いくつかあるが、君たちとは無関係な事情を省くと大きく二つ。

 一つ目はこの戦いを通じて『我々の実力と覚悟を知ってもらうため』。

 そういう意味でエヴァさんの参戦は助かたヨ。

 差がありすぎると我らとの戦いそのものを避けてしまうかも知れなかたからネ」

 

「……フン」

 

エヴァが鼻を鳴らす。

魔法使いたちは言い返そうとしたができなかった。

もし『闇の福音』と恐れられる最強格のエヴァすらいない状況で超の軍勢とリンネの戦力を把握していたら、計画の阻止を諦めていた可能性が高い。

麻帆良の安全や保全を諦め魔力スポットを大規模な破壊で消し飛ばしたり、超の計画の事後処理に専念して対処しようとしていたかもしれない。

 

「そして二つ目は……アナタ方にお願いがあるネ。

 一つ目もこれの説得力を増すためのモノ。

 勝負という形に切り替えたのも、勝てば耳を傾けてくれる可能性が高いと思たからヨ」

 

「お願い……?」

 

超はこの場にいる学園側の魔法使い全員。

目の前のタカミチやその後ろのネギ、彼の従者たちをもう一度見渡して、宣言する。

 

 

 

「『我々が進めている次の計画に、麻帆良学園にも協力してほしい』ネ」

 

 

 

「「「「「はぁ!?」」」」」

 

「我々に……テロリストに手を貸せと言うのか!?」

「何を馬鹿なことを!ふざけるのもいい加減に……っ!」

 

激怒した魔法使い数名が身構えるが、リンネが超の前に一歩踏み出したのを見て動きを止めた。

彼女が使役した天使の力は嫌と言うほど味わっており、全力のエヴァとの死闘も目撃している。

魔法使いたちの傍には相変わらずエヴァがいるが、学園結界が再展開された今の彼女は力が制限されている。

この状況でリンネが暴れ出せば、疲弊した魔法使いたちに彼女を止める手段はない。

 

「高畑先生、これを確認してほしイ」

 

「?これは……」

 

超が小さな彫像を取り出しタカミチに投げ渡す。

それは魔法世界にて流通している契約を必ず行使させる呪いの魔法具だった。

 

「……本物、で間違いないようだね」

 

確認したタカミチは、手を上げ掌を向けている超のジェスチャーを理解し投げ返す。

受け取った超は魔法具を掲げ宣言する。

 

 

「『これより夜明けまで、私は一切の嘘をつかないことを誓う』」

 

 

「「「!?」」」

 

超の手の中にある魔法具が光り、契約が履行された。

 

「こちらからお願いする立場ヨ。私の事情を説明するは当然の礼儀ネ。

 そして私の話はこうでもしないと信じてもらえそうになくてネ」

 

「……聞かせてもらおう」

 

「ウム、まずは私が何者かから明かそう。

 私の正体は、ナント……!」

 

 

 

「火星から来た火星人ネ!!」

 

 

 

「「「ふざけんなぁーーーーっ!!!」」」

 

タカミチの後ろにいた超のクラスメイトの少女たちが怒りのままに飛び掛かる。

攻撃ではなくじゃれ合いと認識したリンネがさっと脇によけたため、超は少女たちにもみくちゃにされる。

 

「アタタタタ!へるぷ!へるぷネーーーッ!」

 

「テメェこの場面で下らねぇ嘘つくんじゃねぇ!!」

 

「……待ってください皆さん!超さんは、先ほど……!」

 

「「「……あ」」」

 

嘘をつかないと誓った。そして魔法具は応じた。

であれば彼女の発言は……。

 

「ひぃ、ひぃ……そう、嘘じゃないヨ。

 今後百年で、火星は人の住める星になる」

 

「百年……?」

 

「そう、私は『タイムマシン』を使い未来の火星から来た火星人ネ。

 より正確に言えば……」

 

 

 

「この時代からおよそ10年後に崩壊する『裏火星』……『魔法世界』の生き残りが、長い年月をかけてテラフォーミングした未来の火星からやってきた火星人ヨ」

 

 

 

「「「!?!?!?」」」

 

魔法世界が火星を触媒とした人造異界であること、そして崩壊の危機が迫っていることは、魔法世界でもごく一部の人間しか知らないトップシークレットだ。

この場にいる魔法使い側では、タカミチがそれにあたる。

 

「待ってくれ超くん!魔法世界のタイムリミットは……あと10年しかないのか!?」

 

「高畑先生!?」

 

「その通り。正しくは9年と数か月ネ。

 魔力の枯渇により魔法世界は崩壊し、魔法世界12億人の9割以上が同時に消滅する。

 そして生き残った数千万人の住民たちも、火星の荒野に投げ出されることになるヨ」

 

「そ……んな……」

 

「高畑先生……まさか、事実なのですか!?」

「魔法世界が、火星!?あと10年で滅びる!?」

 

「まもなく魔法世界のお偉いさん方もその事実を把握するヨ。

 ……そして崩壊の数年前に魔法世界の国家『メガロメセンブリア』は新たな国土を求め、地球への侵略戦争を開始する」

 

「「「なぁ……っ!?」」」

 

「……ありえません!正しくあるべき魔法使いが、地球に攻め入るなど!!」

 

「いや、メガロの連中なら間違いなくやるだろう」

 

「っ、エヴァンジェリンさん……!」

 

「そう、何しろ『これが初めての地球侵攻ではない』からネ。

 今より数百年前にも行われ……それを撃退し地球を守り抜いたのが当時のエヴァンジェリンさんヨ」

 

「「「えぇっ!?」」」

 

「当然連中は真実を隠蔽し、全てエヴァンジェリンさんが悪いことにしたネ。

 彼女に『闇の福音』という二つ名がつき、懸賞金がかけられることになたのは、この事件が発端ヨ」

 

「っ!?冤罪じゃん!エヴァちゃん悪くないじゃん!!」

 

「下らん過去を蒸し返すな。……とっとと続きを話せ」

 

「ナハハハ……今から数年後の地球侵攻も、結果的には失敗したネ。

 メガロメセンブリア軍は撃退され、地球人類は守られた。

 しかし問題は『地球人類に多大な犠牲者が出てしまったこと』と、『この事件が魔法の存在が大々的に知れ渡る切っ掛けになってしまったこと』」

 

「「「……?」」」

 

 

 

「『魔法使い』は地球への侵略者……地球人類にとっての『悪』として認識されてしまった。

 隣人を受け入れられぬなら排除するしかない……地球全土で『魔女狩り』が始まったネ」

 




超の語る未来の歴史や超の出自は作者の独自解釈によるオリジナル設定です。
情報を精査する限り、超の世界の歴史は『ネギま』とも『UQホルダー』とも別であると判断しています。
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