『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第43話 知られざる戦い

 

超の当初の計画では、認識改変魔法を発動させて世界中の人々に『魔法等の超常の存在を受け入れやすくする』予定だった。

だがもし計画の途中で自分が真っ向勝負に敗れた時は、仮に認識改変魔法が発動するとしてもその内容を差し替え、『憎しみも悲しみもなく世界が平和であるように』と願うつもりだった。

 

そしてヒノカミを仲間に引き入れてからは、最初から魔法の内容を『世界平和』にすると決めた。

これは魔法をバラす必要が無くなったからという消極的な理由で設定したのではない。

ヒノカミの計画において、世界中の人々に『世界平和』を願ってもらう必要があったのだ。

 

認識改変魔法の発動から間もなく3時間。魔法の効果は地球全土を覆い尽くしている。

今、世界中の人々は無意識に『世界平和』を願っているはずだ。

 

 

 

「束ねよ、『大願成珠』」

 

 

 

そして人々の祈りをかき集めて、女神は奇跡を起こそうとしている。

『歴史を改変しても平行世界の分岐が生じないようにするため』に。

以前ネギたちに例え話として挙げた『トロッコ問題』。

ヒノカミは暴走したトロッコが鉱山の火薬庫に辿り着く前に再びレールを切り替えることで悲劇を回避しようとしている。

 

超は今いるこの世界から繋がる未来からやってきた存在であり、超の世界にはヒノカミの痕跡が残されている。

なので超の世界の歴史から外れる行動を取るとそこで世界が分岐し、ヒノカミという存在もまた分岐してしまう。

その先にあるのはヒノカミ同士の衝突と、この世界を含めたいくつもの世界の消滅の危機。

だからヒノカミに魔法世界を救う力があっても、ヒノカミは魔法世界を救うことができない。

 

これを避けるために、ヒノカミは様々な可能性を検討し一つの解決策を導き出した。

『この世界のこの時代より先の世界を切り離し』、『切り離した世界からヒノカミの痕跡を抹消する』。

既に定まった未来を改変し、この世界の未来を完全な白紙にするのだ。

 

切り離した未来の世界は消滅するわけではない。

ヒノカミが存在する世界は今のところ一つだが、ヒノカミが存在しない平行世界ならいくらでも存在するのだ。

ヒノカミがいないだけで似たような歴史をたどった別の平行世界が存在することはすでに確認済み。

切り離した世界からヒノカミの痕跡が消えればそちらを宿り木としてその存在は維持される。

 

そして未来が白紙になれば、ヒノカミがどんな行動をしても平行世界は分岐しない。

超の記憶の中にだけはヒノカミの痕跡が残り続けるが……それくらいならば『予知』と同じようなものだ。

平行世界が分岐するほどの修正力は発生しないだろう。

 

方針は定まった。だが口にするほど容易いことではない。

『世界を切り離す』。

『世界を書き替える』。

どちらも神霊ヒノカミが全力で当たらねば実現できないほどの難易度だ。

そして更に厄介なのが、この二つを『全く同時に行わねばならない』ことだった。

 

世界を書き替える前に世界を切り離してしまえば、その時点でヒノカミが存在する世界が分岐してしまう。

世界を切り離す前に世界を書き替えようとすれば、それは今この世界にいるヒノカミの存在すら否定することになる。

ヒノカミの存在の消滅……までは起きないだろうが、ヒノカミはこの世界から拒絶され干渉ができなくなり、ヒノカミが今までこの世界で行ってきたすべてもリセットされるだろう。

最悪の場合、この改変が失敗した瞬間にこの世界が消滅する。超のいる未来の世界まで含めてだ。

仮に存続できたとしてもヒノカミがいなければやはり魔法世界は救えない。

1分1秒どころか刹那のズレすら許されない。

 

故にヒノカミは少しでもこの計画の成功率を上げるために、この世界の人々を巻き込み彼らの力を借りることにした。

 

このまま時代が進めばこの世界がどのような未来をたどるのかは、超が語った通りだ。

その未来は『世界平和』という人々の願いからかけ離れている。

だから『祈りを力に変えて奇跡を起こす』大願成珠を使い、人々の祈りを『絶望の未来を否定する力』に変えて奇跡を起こす。

ヒノカミは『世界を切り離す』作業を、この世界の人々の想いに託したのだ。

 

よってヒノカミは『世界を書き替える』作業一つに専念できる。

だがこちらを実行するにふさわしい能力を、ヒノカミは持っていない。

 

対象を作り変える能力と言えば『天卍改紅』があるが、あれは触れた物体や事象を対象として改変する能力だ。

『これから世界が辿る未来の歴史』なんて曖昧なものには触れられない。

過去の歴史や事実を書き換えるのなら『ブック・オブ・ジ・エンド』があるが、変えねばならないのは『過去』ではなく『未来』だ。やはりこちらも今の状況では使い物にならない。

一度超の時代に移動してから過去を改変すれば、とも考えたが危険だと判断した。

平行世界が生じる可能性が高いギリギリの状況でヒノカミが過去と未来を往復するような時間移動を行えば、やはり高確率で世界が分岐してしまう。

 

だからヒノカミは『この世界の未来を書き換えることができる能力』を新しく作った。

いや、正しくは彼女の記憶の中にある、今回の目的を達成できる能力の模倣再現を試みた。

……その能力の再現に今まで着手しなかった理由はある。難易度が高すぎる上に能力が凶悪すぎるからだ。

一つの世界を生み出すほどの神である彼女が、己のあらゆる能力を総動員して、なんとかそれらしき形にするのが精一杯だった。

だがそれも当然のこと。この能力は『創造神』としての側面が強いヒノカミとは相性が悪すぎるのだ。

 

 

「……この世界の未来から、ヒノカミの痕跡を『なかったことにする』」

 

 

だがそれでも再現に成功できたのは、この『過負荷(マイナス)』のベースである『手のひら孵し(ハンドレット・ガントレット)』の元々の所有者が、ヒノカミと融合した『安心院なじみ』だったからだろう。

 

さぁ、ご唱和あれ。

 

 

 

「…………『大嘘憑き(オールフィクション)』!!!」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

真夜中でも収まらぬお祭り騒ぎを続ける麻帆良学園の遥か上空。

未だに浮かび続ける巨大飛行船の上が一際強く輝いたことに気付いた者はいなかった。

 

この世界が書き換えられたことも、この世界が消滅の危機を乗り越えたことも、誰も気づいていなかった。

 

だが確かに、今この瞬間を以て。

 

 

この世界の未来は白紙となった。

 




長くなりましたが、ここでようやく『まほら学園祭』編が終わりました。
ヒノカミがフリーになったのでここからは駆け足になりますが……それでも50話でも終わんないなぁ。60超えるかもしんない。
間違いなく過去最長の外伝となります。
そして申し訳ありませんがストックがほぼなくなりました。
また少し間を開けさせていただきます。8月中には再開しますのでご容赦を。
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