『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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再開します。
今度こそこの章の最後まで息切れしないよう頑張りますので。


第44話

 

まほら学園祭が終わり、また騒がしく非常識ながらも比較的まともな日常が帰ってきた。

そして宣言通り、超とリンネはおとなしく引き籠っていた。

超はリンネの借りているビルに引っ越し、二人でまたこそこそと何かをしているようだ。

学祭後に彼女たちが語った言葉が真実ならば魔法世界救済計画の準備とやらを進めているのだろう。

 

『迫る悲劇を防ぐために戦っていた』というのは嘘ではないのだろうが、麻帆良防衛戦にてあれほどの技術力と頭脳、そして戦闘力を示した二人を麻帆良の魔法使いは警戒していた。

だが学園長がこの事件を不問とし、不干渉を宣言した以上は麻帆良の魔法使いたちは何もできない。

だからもっぱら、魔法使いたちはエヴァを中継する形で超たちの情報を収集していた。

エヴァは麻帆良にいても魔法使いの組織に所属しているわけではないので学園長の言葉に縛られない。

そして彼女は何故か、学祭の後からずっとリンネの傍にいる。

その彼女が言うには二人はずっと大量のデータとにらめっこしながら議論を続けているらしい。

そのデータの詳細が何かはエヴァではわからないがどうやら宇宙関連のものだとか。

 

麻帆良防衛戦にてエヴァとチャチャゼロに助けられた者は多く、魔法使いたちは彼女への視線と態度を緩和させていた。

今までは『魔法世界の大悪党』というフィルター越しに彼女を見ていた魔法使いたちだったが、今回の件で色眼鏡が取れて気付く者も現れた。そして問い質されたエヴァは否定しなかった。

『当時10歳の幼女が自力で吸血鬼に変貌することなどできるはずがない。エヴァンジェリンは望まず化け物にされた被害者であった』のだと。

超の言う通り、麻帆良の魔法使いは誰も彼もが度を越したお人好し。

エヴァが悪の道を歩んできたのは事実だが、その始まりは守り救われるべき少女だと知って『今までの暴言を謝罪したい』と頭を下げてくる者まで出てくる始末だ。

エヴァは『身の毛がよだつ』と激しく拒絶したが幼い容姿も相まって子供の癇癪のように受け取られてしまい、おまけに力ずくで追い返すような真似もしないので態度を改めさせることもできず、鬱憤が溜まっているようだ。

 

その学園側も学祭以降は慌ただしく動いていた。

学園長とタカミチが秘匿していた情報を公開し、他の魔法使いやアーティファクトを手に入れた千雨に協力してもらい情報を精査したところ、『魔法世界の寿命が尽きる寸前である』という話は事実であると断定された。

本来魔法世界の国家の下部組織である関東魔法協会としてはこの情報をすぐに本国へ伝え協力体制を築くべきであるが……それで侵略戦争が早まるかもしれないと考えた。

調査の過程で数百年前に地球侵攻を企てたことも事実であると知った彼らもまた、魔法世界本国を危険視し始めていた。

 

察知されるわけにもいかないから大々的に動くことは避けねばならない。

そこで学園長は魔法世界のより詳細な情報を集めるため、そして信頼できる協力者を得るため、まもなくやってくる夏休みを使って少数精鋭の視察団を魔法世界に送り込むことにした。

 

代表はタカミチ。知名度と戦力、本人の熱意と信用もある。

例年なら夏休みや冬休みは休みを取る時間すらないほどの仕事を抱え世界中を飛び回っている彼だが、今回ばかりはそれらすべてをキャンセルしてことに望む覚悟だと言う。

納得の人選だ。これに関しては反論も意見も出なかった。

 

だが他の団員は『ネギとその従者の少女たち』で固めることに関しては大きな反発があった。

当然だ。彼らがすでに並みの魔法使いを超える実力を持っていることは先日証明されているが、わずか10才の少年と教師が守るべき中学生の少女たちなのだから。

そしてエヴァを通じて事情を知ったリンネも露骨に反応した。

 

ネギも随分成長したが、未だ方々からの干渉全てを跳ねのけるには力不足で実績も足りない。

タカミチがフォローを入れるにも限界がある。

そしてそれ以上にまずいのが明日菜……『アスナ姫』だ。

『完全なる世界』がすでに彼女を把握しているかは不明だが、連中の計画の要であるアスナを麻帆良の庇護下の外に出すだけでも危ういのに魔法世界に送るなど論外だ。

 

「敗北と喪失の恐怖を味わったばかりだというのに、意志が強いと言うか能天気な馬鹿と言うか。

 本当に無駄な行動力に溢れた連中だよ。

 麻帆良の後ろ盾を得るために『ネギま部』なる部活まで作る始末だ」

 

「あー、クラスでまき絵がギャーギャー騒いでたのはそういうコトカ。

 旅行がどーたら言てたから、多分夏休みにそのメンツで出かけることまでバレてるネ。

 行先が魔法世界とまでは知らないだろガ」

 

「アスナの事情も完全なる世界の残党も全部把握してるはずじゃろ!?

 何考えとんじゃあのジジイ!?」

 

「その神楽坂明日菜自身が魔法世界行きを強く望んでいるらしい。

 それこそ、ぼーや以上の熱意でな。部の発足を働きかけたのも奴のようだ」

 

「なんじゃと!?」

 

「ともかく、説得するならタカミチでもぼーやでもなく奴だ。

 引き籠ってないでさっさと行ってこい。

 お前には神楽坂明日菜に言うべきことがあるだろう?」

 

「うぐっ……はぁ、わかった」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「待ぁてぇ~~!明日菜ぁ~~~~っ!!」

 

「ちづ姉や楓姉との旅行ずるいです~~っ!」

「ぼくらも連れてけぇ~~っ」

 

「あー!もー!しつこーーーいっ!!」

 

『英国文化研究俱楽部』……通称『ネギま部』を設立しその部長となった明日菜は、まき絵と鳴滝姉妹に追いかけ回されていた。

『ネギを顧問とした新しい部活が発足され、夏休みが始まったらネギの故郷であるイギリスに行く』。

事実の一部が魔法を知らぬクラスメイト達の間で拡散され、『自分たちも部に入れろ』と部長である明日菜に迫っているのだ。

 

秘密にしていたのに一体どこから漏れたのか。

普段なら朝倉かハルナを疑うところだが今回の彼女らは身内で事の重大さを思えば口を滑らすとも思えない。

何しろ行先は魔法世界。

エヴァに冤罪を着せ、英雄の息子であるネギを狙い、超の辿った未来では地球に侵略戦争を仕掛けた国がある世界なのだ。

いくらタカミチが一緒とはいえ何も知らず戦う力も持たない少女らを連れていけるはずなどない。

 

「……って、ゆーな!?」

 

「へっへっへ~、こんな面白そうなこと黙ってるなんて許せないにゃー?」

 

「アンタもうバスケ部入ってるでしょ!?」

 

「それ言ったら明日菜も美術部じゃんねぇ~~?」

 

「くっ、柿崎、桜子……!?」

 

いつの間にか他のクラスメイトたちに回り込まれ囲まれていた。

こういう時のまとめ役である委員長も今回はこちら側なので不在だというのに、なんという団結力。

 

(こーなったらもー……!)

 

「「「!?」」」

 

明日菜は彼女らが怪我の一つも負わないようにと逃げに徹していたが、どうやら全く収まる気配がない。

たんこぶできるくらいなら許容範囲かと判断し、少し乱暴な手段に訴えるつもりで意識を切り替える。

明日菜の気配が変わったことを感じ取った面々は一端怯むが踏みとどまった。

 

「……えぇ~~いっ!かかれぇーっ!」

 

「「「うぉりゃー!!」」」

 

ブロロロロォーーーーーーッ!

 

「「「へ?」」」

 

一人を取り囲んでいた少女たちが一斉に飛びかかろうとした瞬間、けたたましいエンジン音がその場に響く。

 

「え!?車!?」

「こっち来るよ!?」

「あれって……」

 

純白のボディのスーパーカーは少女たちの集団目がけて猛スピードで突っ込んできた。

逃げる間もなくあわや大惨事かというところ、10メートルほど手前でジャンプした車は物理法則を無視した変形をして人型となる。

 

「ミカエル!?」

「「「学祭のロボ!!!」」」

 

少女たちの頭上を通過する瞬間、機動天使ミカエルは真下に手を伸ばして集団の真ん中にいた明日菜を掴み、内側に取り込む形でまた車の形態に戻って着地し、スピードを維持したまま去っていく。

 

 

「「「……逃げられたぁーーーっ!!!」」」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

キキィーーーーッ!

 

バタン!

 

人気のない広場に停車したミカエルは明日菜を乗せた席のドアを勢いよく開く。

 

「え、えぇと……ありがと……?」

 

状況が良く理解できないながらも明日菜は車の外に出る。

するとミカエルは光の粒子となって消えていく。

 

「あっ……」

 

「よぅ」

 

ミカエルがいた場所の向こうには、その主人であるリンネが夕日を背負うように立っていた。

 

「時間、いいか?」

 

「……うん」

 

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