『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第46話 魔法世界救済計画

 

魔法世界へのゲート全11か所の同時破壊テロ。

その連絡を受けた地球の魔法使いたちは大騒ぎ。特に麻帆良学園ではとんでもない騒動になっていた。

彼らは魔法世界が崩壊の危機にあると知っており、調査のために派遣したタカミチやネギたちとの連絡も途絶えてしまったのだから。

 

しかも、繋がりが絶たれたことで二つの世界の時間の流れにずれが生じる。

こうしている今も5倍近い速度で魔法世界の時間が進んでいく。

事件発生からすでに丸一日以上……であれば魔法世界では1週間近い時間が経過している計算だ。

 

状況を知った詠春も慌てて京都から飛んできた。一人娘が崩壊寸前の魔法世界に閉じ込められたのだから無理もあるまい。

学園長室には詠春だけでなく多くの魔法使いたちが詰めかけ、少しでも情報と状況を把握しようと慌てている。

彼らの大声が響き渡る中で、扉が開く音が妙に響いた。

 

「邪魔するぞ」

 

「お前たちは!?」

 

魔法使いたちが振り向くとリンネ、超、エヴァの3人が部屋の中へと押し行ってきた。

他二人は途中で立ち止まったがリンネだけはずかずかと前へ歩き、怯えた魔法使いたちの人垣が割れる。

やがてリンネは学園長が座る机の前で立ち止まった。

 

「近右衛門。貴様ならすでに理解しているはず。

 これは魔法世界を滅ぼそうとする『完全なる世界』の残党が起こしたテロじゃと」

 

「……わかっておる」

 

「あ奴が魔法世界に向かったから決行したのか、元からこのタイミングを狙っていたのか……。

 いずれにせよ『黄昏の姫御子』があちらにいる状況でのこの事態。

 もはや最悪の一歩手前。これを見過ごしては10年どころか明日にでも魔法世界が崩壊するやもしれぬ」

 

「「「!?」」」

 

『完全なる世界』の狙いを把握しているのは『紅き翼』の一員だった詠春もだ。

学園の魔法使いたちが青ざめ悲鳴を上げる中、学園長と彼だけが冷や汗を流すにとどまっている。

 

 

 

「時は一刻を争う……儂らは前倒しで計画を実行する。

 魔法世界救済計画をな」

 

 

「なんだと!?」

「次の春ではなかったのか!?」

「この状況で魔法世界救済!?可能なのか!?」

 

「煩い。少し黙っていろ」

 

エヴァが周囲をにらみつけると魔法使いたちが慌てて口を閉じる。

 

「事情が変わった。すまんが今この場で返答をもらいたい。

 麻帆良が我らの計画に賛同するか否か。

 是と答えたなら計画の全てを明かそう。

 否と言うならば我らで勝手にやらせてもらう。

 この世界と麻帆良が荒れることになるが……力づくでも」

 

「……これが儂一人の問題であればすぐにでも頷こう。

 だが麻帆良の長としてはそうはいかぬ」

 

近右衛門は魔法世界の出身者ではないが、魔法世界崩壊の危機を見過ごすわけにはいかない。

魔法世界を救う方法があると断言する者が現れたならば是非とも協力したい。

可愛い孫娘まで巻き込まれ危機に陥っている状況となればなおさらだ。

だが彼は関東魔法協会の長であり、ここ麻帆良学園の学園長。

多くの生徒たちを守り、魔法使いたちを導かねばならない立場である。

個人的な感情で物事を判断するわけにはいかない。相応の理由が必要なのだ。

 

「……何を求める?」

 

「根拠を。六道リンネという人間を信じるに足る根拠が欲しい。

 お主ならば魔法世界を救ってくれると、麻帆良の命運を預けることができると思える何かを示してほしい」

 

それは当然の要求であり、リンネの失態だった。彼女は秘密を作りすぎたのだ。

彼女はネギの故郷を救い、ネギを導き、圧倒的な力を持ちながらも己を律し、魔法世界を救うために行動をしている。

実績は十分。だが信用がない。

出自は不明。素性も不明。能力も不明。

組織の長がそんな相手をどうやって信用すればよいと言うのか。

 

「あー……クソ!クソ、クソッ!」

 

道理が通っていないのは己の方だ。

それを理解しているからこそリンネは悪態をつく。

 

こんな大勢の前で安易に『ヒノカミ』のことは明かせない。

彼女の存在と力は既存の組織や宗教や概念を完膚なきまでに破壊してしまうし、何より容易には信じられる話ではない。

彼女が如何に強大かを知らぬ者にどれだけ言葉を尽くしても大きな反発が起きるだろう。

下手に関係がこじれてしまえばやはり計画が台無しになりかねない。

 

だからこの状況でリンネが切れる手札は一つしかない。

 

 

「……これでいいかよ!?クソジジイ!!」

 

 

「「「!?」」」

 

少女の口調が変わり、魔力の波長が変わった。

少女の姿に重なるように赤毛の青年の姿が映しだされた。

 

「え……え!?」

「あの姿は……いや、だが!」

「幻術に決まっている!!」

 

「『闇の福音』の名において宣言しよう。

 ……『六道リンネ』の正体は、『ナギ・スプリングフィールド』だ」

 

「ちくしょう、まだネギにも明かしてねぇってのに……!

 つぅかテメェ気付いてたんだろ!

 学祭で碌に動きもせず、オレとエヴァの戦いずっと監視してやがったもんな!」

 

「フォフォフォ。こういうのは建前も大事なんじゃよ」

 

「ナギ……本当にお前なのか……!?」

 

「詠春……やっぱお前は気付きかけてたか。

 スクナとの戦いは前にやり合った時の焼き直しみたいなとこあったしな」

 

「だが能力が……それに何故そのような姿に……!」

 

「この体と能力は借り物なんだよ。コイツに関しちゃまだ何も言えねぇ。

 ……どうだ!この『サウザンドマスター』様が信用できねぇってのか!?」

 

ナギの気迫と魔力が学園長室に吹き荒れる。

魔法使いたちは状況の変化についていけず、腰を抜かして放心していた。

 

「あいわかった。その体の持ち主、六道リンネが何者かは未だわからぬ。

 だが『ナギ・スプリングフィールド』が信じる彼女を信じよう。

 早速お主らの計画とやらを聞きたい」

 

「ホントは全容から説明するべきだが時間がねぇ。今やるべきことから先に言う。

 魔法世界へのゲートが破壊されたのは大ピンチだ。

 ……だがこれはオレたちにとっちゃチャンスでもある!」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

話を終えた後、彼らはすぐに図書館島地下の深部へと向かった。

 

「……おや、よくいらっしゃいました『六道リンネ』さん。

 エヴァは学祭ぶりですね。

 学園長と詠春もお久しぶりです」

 

「久しぶりです、アル」

 

「今は隠さなくていい。コイツらはもうオレがナギだって知ってる」

 

エヴァ、詠春、近右衛門を連れたリンネがクウネル……アルビレオと対面する。

 

「そうですか。今日は一体何用で?

 ついにアナタの事情を説明してくださるのでしょうか?」

 

「わりぃがそいつは後だ。

 今日はこの下に用があってきた。

 ここを守ってるお前には話を通しておくべきだからな」

 

「この下と言うと……なるほど。

 『麻帆良地下に封印されたゲート』を使うおつもりですか」

 

地球上に存在する、世界樹を含めた全12か所の魔力スポット。

その膨大な魔力の運用を前提とした装置が魔法世界へのゲートだ。

テロで破壊されたのは稼働中だった11か所。

そして麻帆良の地下には『12個目』のゲートがある。

20年前の大戦にて滅びた廃都『オスティア』へと通じるゲートが。

辿り着く先は荒れ果てた廃墟であり危険極まりないが、魔法世界に繋がるゲートはもうこれ一つしか残っていない。

 

「ちげぇよ。ゲートに用があるのは確かだ。だが使うためじゃねぇ」

 

「ほぅ?」

 

ナギと超、そしてヒノカミの考える魔法世界救済計画。

これを実行するには一つ大きな問題があった。必要な前準備がとんでもない犯罪行為なのだ。

強行するのはたやすいが、生じる二次災害があまりに大きすぎるため混乱は必至。

だからナギたちはその混乱を治めるために麻帆良の魔法使いたちの協力を求めていた。

 

だから『完全なる世界』のテロは、ナギたちにとって千載一遇の好機でもあった。

計画の一部を変更してでも前倒しする価値があるほどの。

何しろ、自分たちが行うつもりだった悪事を連中が肩代わりしてくれたのだから。

 

 

「最後のゲートを破壊する。

 魔法世界と地球を、完全に分断すんだよ」

 

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