『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第49話 ジャック・ラカン

 

「おぉ~~、テメェがナギの息子か。

 ホントにガキだな!ガハハハハ!」

 

仕事に戻ると部屋を出たクルトと入れ替わりで押し入ってきたラカンがネギの頭をわしゃわしゃと撫でまわす。

巨漢の彼と10才のネギでは身長差がありすぎて、まるで上から掌で押しつぶすようだった。

 

「んでこっちのが詠春の娘ってか!

 大層な美人じゃねーか、遺伝子どーなってんだぁ!?」

 

「うひゃぁぁぁぁぁ」

 

「お嬢様!?」

 

「そんで、お前も久しぶりだなタカミチ」

 

「ラカンさん……予想はしていますが、一応尋ねておきます。

 我々がこちらに来た時にメガロメセンブリアにいらっしゃらなかったのは何故ですか?」

 

「すっぽかした。10年も隠居してっと人里に出るのも億劫でよー」

 

「「「……」」」

 

謝罪どころか悪いとも思っていない様子で言い放つラカンに、アスナ以外の白き翼一行は言葉を失っている。

 

「わかったでしょ?こういう人なのよ」

 

「……嬢ちゃん」

 

「久しぶりね、ラカンさん」

 

「アスナくんはすでに記憶を取り戻しています」

 

「……そーかそーか!デカくなったじゃねぇかアスナ!」

 

「ラカンさんに『デカくなった』なんて言われてもね。

 それに、そっちは良くも悪くも相変わらずみたいだし。

 ……ってそうじゃなくて!

 ラカンさんはなんで突然大会に出たりしたのよ!?」

 

「ぼーずの試合の映像見せてもらったが、タカミチから聞いてた通り小せぇ癖に大した才能だったからな。

 ちぃと戦り合ってみてぇと思ってよぉ!」

 

「今はそれどころじゃないの!

 魔法世界の崩壊が近い話、ラカンさんも知ってるでしょ!?

 ネギがこの大会に優勝しなきゃ、クルトさんからの協力が……!」

 

「だったらぼーずが力不足ってだけだろうが。

 それとも何か?八百長でもしてほしいってか?

 200万ドラクマ積んだら考えてやってもいいぜぇ~?」

 

「~~あぁもうっ!!」

 

やはり説得は不可能。

しかしまともにぶつかれば勝ち目はない。

記録映像ではなくこうして直接対峙することでネギや小太郎、魔法使いとなった少女たちはラカンの力の大きさを改めて実感していた。

 

 

 

「もういい、神楽坂。こりゃ駄目だ。

 拳闘大会の優勝は諦めよーぜ」

 

 

 

「「「えぇぇっ!?」」」

 

「千雨ちゃん!?」

 

だがこの場には未だに唯一人、魔法を知っただけの一般人がいた。

 

「何言ってんのよ!?魔法世界を救うためには、魔法世界側の協力がなきゃ……!」

 

「『なくてもできる』っつってたろ。超の奴がよ」

 

「「「あ!」」」

 

魔法世界の調査と、魔法世界の有力者の協力を取り付けるのがネギたち白き翼の役目だ。

だから『それを達成しなければ』と意気込む内に考え違いを起こしていた。

超が麻帆良と魔法使いたちの協力を求めたのは『魔法世界を救った後の二次災害を減らすため』。

魔法世界を救うだけなら超たちだけでも十分と宣言しており、二次災害が魔法世界を救う以上の被害をもたらすとは思えない。

 

「クルトさんからこっちでの調査データはもらってんだ。

 目的の半分は達成できてんだから成果としちゃ上々だろ。

 とっとと麻帆良に引き上げ……は、できねぇんだったか。

 なおさら大会棄権して、麻帆良に戻る方法を探そうぜ。その方が合理的だ」

 

「え?え!?」

 

「……ほぉ~う。わざわざ大会にまで出てやったオレ様から逃げるってか。

 そいつぁ賢い選択とは言えねぇぜ、カワイ子ちゃん?」

 

ラカンが僅かに怒気を孕ませ獰猛な笑みを見せるが。

 

「知るか。アンタがアタシらの都合に付き合う気がねぇってんなら、アタシらがアンタの都合に付き合う義理もねぇ」

 

「ちょっとちうっち!あんま挑発しちゃ駄目だって!

 そのオッサンマジでヤバイから!」

 

「なぁんでビビッてんだよテメェら。

 ……なぁネギ先生、委員長、桜咲。聞いていいか?」

 

「「「はい?」」」

 

 

 

 

「このオッサンと『姐御』、どっちが強い?」

 

 

 

 

「「「…………あ」」」

 

「あぁん!?」

 

千雨に戦う力はない。

直接目にするどころか、戦う姿を見比べてもどっちが強いかなんてわからない。

少なくとも仲間であるネギや小太郎やクラスメイトたちに関しては。

だが彼女の素人目で見ても、まほら武道会の六道リンネは隔絶していた。

 

「オイコラ。誰だか知らねぇがこの最強の戦士『千の刃』のジャック・ラカン様がその姐御ってのより弱いって言いてぇのか?」

 

「マスターです」

「「……リンネさんですね」」

 

「ぬな!?」

 

「事実です。ネギくんの師匠である六道リンネという女性……彼女はナギよりもはるかに強い。

 呪いが解けたエヴァと僕やネギくんたちを含めた麻帆良の魔法使い全員が本気で挑みましたが、実質彼女一人にいいようにやられてしまいましたから」

 

「……エヴァが?マジかよ」

 

「なぁオッサン、今のアンタはとんだ『井の中の蛙』だぜ?

 姐御が動いてる以上アンタが何やっても、ただのみみっちい『いやがらせ』にしかなりゃしねーよ。

 ……さ、わかったらとっとと撤収準備だ」

 

「ちょい待ち!姐御に敵わんでもオレらより強いのは確かやろ?

 せっかくやから挑んでみたいわ」

 

「僕も、棄権はしない方がいいかと。

 僕たちの試合を楽しみにしてる人たちが大勢いますし、勝てないにしても力を示す機会には違いないので……」

 

「……たしかに、アンタの悪評が立っちまいそーだな。

 わかった。好きにしな。

 よかったなぁオッサン。ネギ先生が『構ってくれる』ってよ?」

 

 

「……ダァーーーッハッハッハ!

 『チサメ』っつったか?大した嬢ちゃんだ!

 なぁネギ、お前の『コレ』か?」

 

「ふぇぁっ!?」

 

「ハァ!?ふざけんな!アタシはただの生徒だ!!」

 

「!?」

 

速攻で否定され、ネギが目に見えてしょんぼりする。

 

「ち~~さ~~め~~さぁ~~~~ん!?」

 

「ひぃぃっ!?」

 

「ネギ先生を傷つけるとは何事ですかぁーーーっ!!

 ネギ先生の何が気に入らないというのですかぁーーーーーっ!!!」

 

「お、落ち、落ち着けぇーーーっ!!」

 

インドア派の千雨と文武両道の委員長では元から大きな差があったが、後者が魔法使いとなった今その力の差は歴然。

千雨は瞬く間に取り押さえられ鬼の形相の委員長に責められていた。

世界は変われど騒がしいこと大好きな麻帆良女子中等部3-Aの少女たちは、記憶を取り戻して大人びたアスナを除いて委員長を止めるようとすらせず。

恋する乙女ののどかが妄想を加速させ頭がパンクしてしまい。

隣にいる夕映が難しい表情で顔を赤くし。

ハルナは濃密なラヴ臭を摂取していた。

 

「ガッハッハ。女に関しちゃナギも顔負けだな。

 ……そんじゃ、オレは行くぜ。

 ネギにゃあ『決勝で待ってる』って言っといてくれや」

 

「わかりましたよ、ラカン」

 

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