『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第50話

 

ジャック・ラカンと戦うと決意したネギと小太郎だったが、覚悟が決まるだけで勝てるなら苦労はしない。

相手は紅き翼の一人にしてナギ・スプリングフィールドと互角とされる圧倒的強者。

そして相手は偽物でもちろん手加減されていたが、まほら武道会でナギの強さは思い知っている。

超との戦いでナギに並ぶとされるエヴァの全力も目の当たりにしている。

単独の強さに加え多彩な能力を持つリンネには劣るとしても、彼らに並ぶラカンは格上どころか雲の上の存在なのだ。

今のネギたちではラカンの相方を務めるカゲタロウとやらにも及ばないだろう。

彼の素性は知らないが、ラカンの相方を務められるだけで魔法世界でも上澄み中の上澄みなのは間違いない。

 

だがラカンが去ってまもなく、都合よくネギたちに助け舟を出す者たちが現れた。

それはクルトにアポイントを取ってから面会に訪れた3人の魔法世界の要人。

 

ヘラス帝国第三皇女『テオドラ』。

メガロメセンブリア元老院議員『リカード』。

アリアドネー魔法騎士団総長『ヘラス』。

 

20年前の大戦時に紅き翼と共に完全なる世界と戦った者たちだ。

元々彼らはナギの息子であるネギに会ってみたいと長年望んでいたが皆多忙な身。地球に足を運ぶ余裕などあるはずがない。

なのでそのネギが魔法世界に来ていると聞いて仕事をほっぽり出してまで向かおうとしたが部下たちに泣きつかれ断念し、終戦記念式典を終えるや否や一斉に押しかけて来たのだ。

 

彼らはクルトやラカンとは違い、ネギの師匠が魔法世界救済のための準備を進めていると聞き即座に全面的な協力を約束した。

タカミチとアスナの口添えがあったとしても、六道リンネが正体不明の不審人物であるにも関わらずあっさりとだ。

ネギたちは喜びながらも『そんなに簡単に決めていいのか』と訝しんだが、彼らが魔法世界崩壊によりどれほどの被害を被るかを知っているアスナとタカミチは敢えて言葉にせずはぐらかした。

 

そして魔法世界救済計画をより万全にするためにはやはりクルトの協力も必要で、そのためにはラカンを倒さねばならない。

ラカンに対して色々と思うところがありすぎるテオドラたち3人は『あのバカに一泡吹かせられるなら』とネギと小太郎を鍛えると言い出した。

多忙なはずなのに時間は大丈夫なのかと尋ねたが、『そんなものはどうでもいい』と豪語する。

思った以上に気さくで自由で勢い任せな人たちだった。

 

テオドラは希少な魔法球を持ち出し修行場と時間を確保し。

リカードは模擬戦により主に小太郎を鍛え上げ。

ヘラスはネギの魔法理論の構築に知恵を貸した。

二人の模擬戦相手にはタカミチも立候補した。

 

特に魔法球は、闘技場の一室から出られず試合以外に自分を鍛えることができなかったネギたちにはこの上ない助けとなった。

試合を勝ち進みながら厳しい修行を続けること、現実時間換算で2週間。

明日は遂に決勝戦、ラカンとの戦いだ。

 

ネギと小太郎は、確かに大きく成長した。

カゲタロウ相手ならば1対1でも互角に戦えるだろう。

だがやはりラカンには届かない。

なまじ強さが近づいてしまったからこそ壁の大きさをはっきりと理解してしまった。

 

『バグキャラ』だのなんだの言われているが、彼はむしろ天才ではなく努力型。

奴隷剣闘士として少年時代にデビューし、何度も死にかけながらも戦い生き続け、ついには無敵と呼ばれるに至った男。

40年以上の戦闘経験に裏打ちされた確固たる強さ。

小手先の技術や小細工でつけ入る隙などない。

だと言うのに基礎スペックすらも桁外れだというのだから一体どうすれば倒せると言うのか。

 

「……小太郎くん、まだ起きてる?」

 

「んあ?」

 

夜中、全員が眠りについていた頃。

しかし明日の戦いを控えたネギと小太郎は布団の中でまだ眠れずにいた。

ネギに声をかけられ、小太郎は彼と共にこっそりと部屋を抜け出し夜空の見えるバルコニーへと移動する。

 

「……で、なんや?」

 

「小太郎くんは、ラカンさんに勝てると思う?」

 

「……フン、何やビビっとるから頼もしい言葉でもかけてほしかったんか?

 お生憎やな……勝ち目なんかあるかい」

 

「じゃあ、勝ちたいとは思ってる?」

 

「はぁ?当たり前やろ。負けるつもりで戦うアホがどこにおんねん。

 やるからには勝つつもりで……いや、お前何が言いたいんや?」

 

ぼやけた問いかけを続けるネギに、小太郎が疑問で返す。

 

 

「……ラカンさんを倒せる方法がある」

 

「なんやと!?」

 

「しーーっ!」

 

「おっと……」

 

思わず大声を上げてしまった小太郎をネギがいさめる。

幸い今の騒ぎで目を覚ました者はいなかったらしい。

 

「昔、マスターが教えてくれた技があるんだ。

 知ってるのは僕とカモくんだけ……ラカンさんも知らない技だ。

 失敗したら本当に勝ち目が無くなっちゃうけど、成功できたなら……!」

 

「あのオッサンでも倒せる……!?

 そんなんあるならなんで黙っとったんや!?」

 

「ご、ごめん!でも僕らがここまで成長できたからの選択肢なんだ。

 そうでなかったらこの技は確実に失敗してたと思う。

 それにこれは、多分小太郎くんがものすごく嫌がりそうな方法だし……」

 

「どういう意味や?」

 

「この技は僕一人じゃできないんだ。

 だから、小太郎くんにも協力してほしい」

 

「……どんな技やねん。詳しく聞かせぇ」

 

「それはね……」

 

ネギは小太郎の前で技の詳細を説明し、動きの一部を実演して見せた。

それを見た小太郎は最初は言葉を失い顎が外れかけるほど呆然としていたが、ネギがこの状況でくだらない冗談を言う性格ではないことは知っている。

 

「……どう?」

 

「確かにオレ好みやあらへんな……せやけど、あのふざけたオッサンをぶちのめすことができるっちゅーなら多少の不満は呑みこんだるわ!」

 

「ありがとう!今からみっちり練習すれば、明日の試合までにはきっと間に合うよ!」

 

「今のをみっちりか……しゃあない。

 お前の言う通りやったら失敗したら目も当てられんことになるしな」

 

それから二人はこっそりと魔法球の中に入り修行を始めた。

試合開始は明日の午後3時。

開始1時間前には出てくるからそれまで二人きりにしてほしいと書置きを残して。

 

 

 

そしてついに。

 

 

『さぁ!いよいよ決勝戦です!!』

 

直径300メートルの舞台の上で、12万人の観客の前で。

ネギと小太郎、ラカンとカゲタロウが対峙する。

 

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