『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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ここから原作と乖離させ、一気に物語の完結まで進みます。
あと10話くらいを予定しています。


第53話 最強/最凶の二人

 

終戦20周年記念、オスティア拳闘大会『ナギ・スプリングフィールド』杯。

その優勝者は英雄の実の息子にしてわずか10才の少年『ネギ・スプリングフィールド』とそのパートナーの少年に決定した。

 

『それでは改めまして……ネギ・スプリングフィールド選手!

 そして犬上小太郎選手!おめでとうございます!』

 

整地された舞台の中央で二人の少年が拳を突き上げる。

『合体』技なんてとんでもないものを使っていても、一人一人の力はラカンに遠く及んでいなくても、間違いなく勝ちは勝ちだ。

 

『伝説の英雄、ジャック・ラカンを破っての優勝!

 もはや彼らが最高のタッグであることは疑いようもないでしょう!

 皆さん!盛大な拍手をお願いいたしまーーーす!!』

 

万雷の拍手が巨大なアリーナを揺らす。

ラカン自身もVIPルームにいるアスナたちの隣で拍手を送っている。

文句をつける者などいない。

 

 

 

「異議あり」

 

 

 

はずだった。

 

「貴様ら程度が最強の二人とは、片腹痛い。

 その称号を名乗るのは我らを降してからにしてもらおう」

 

全員の視線が舞台の中央上空へと向かう。

そこには全身をローブで隠した二人の人間が浮かんでいた。

 

「その声……!」

 

「アンタ、なんでこないなとこに!?」

 

突如として、停止していたはずの闘技場の結界が再展開される。

ネギと小太郎と司会、そして謎の乱入者二人が内側に取り残された。

そして二人の内の一人がローブを脱ぐ。

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

『闇の福音!?』

 

 

「貴様らに拒否権はない。

 ……始めるぞ。最強の二人を決める闘いをな……!」

 

司会が結界の隅にまで逃げ出したことを確認してから、宙に浮いていたエヴァともう一人がネギたちへと突撃してくる。

 

「!?」

 

「小太郎くん!」

 

エヴァは狙いを小太郎に定めており、攻撃を受け止めきれず吹き飛ばされた小太郎を追ってエヴァもネギから離れていく。

必然的に残ったもう一人の謎の人物が、ネギの前に降り立つ。

 

「くっ……!?」

 

咄嗟に構えを取ったネギ。

そして目の前にいる人物の構えもなぜか彼に酷似していた。

 

 

 

 

表彰式のはずが突如として始まったエキシビションマッチ。

しかもその相手は伝説の最凶最悪の魔法使い『エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル』。

会場全体に混乱と恐慌と熱狂の嵐が吹き荒れることとなった。

彼女はナギ・スプリングフィールドと死闘を繰り広げ敗れたという。

であればその息子であるネギを殺そうとしているのではと考えるのも無理はない。

強引に割り込もうとしても会場の結界が再展開されているため外側からは何もできず、観客たちは指をくわえて見ていることしかできずにいた。

 

だがエヴァがネギの師匠であることを知る白き翼一行はそんな事態にはならないと確信している。

つんけんしていても優しく頼もしい悪の魔法使いに、彼女たちは何度も助けられてきた。

それこそ彼女が偽物でもない限りは。だが。

 

「ハォ、古」

「皆さんお久しぶりです」

 

「超!」

「茶々丸さん!」

 

いつの間にかアスナたちの後ろには二人のクラスメイトが立っていた。

エヴァと同じく麻帆良にいるはずの彼女らがここにいる。

この時点で、今舞台の上にいるエヴァが偽物という線はまず消えた。

 

「お二人が魔法世界にいらっしゃるということは……もしやゲートの修復が終わったのですか!?」

 

「いや、ゲートはまだ使用不可能なままヨ。

 だから別の方法で地球からやてきたネ。

 もちろん帰還も問題なし。これで君らも麻帆良に帰れるヨ」

 

「助かったぁ~~!

 このままだと2学期が始まる前には帰れないと思ってたよぉ~~!」

 

「……ム?茶々丸殿がここにいるということは、あそこにいる御仁はどなたでござるか?」

 

「姐御じゃねーの?」

 

「ナハハハ、半分正解というカ……まぁ諸君らも、すぐにわかるヨ」

 

「半分?それって……っ!?」

 

懐かしい魔力の気配を感じて、アスナが言葉を途切らせ振り向き身を乗り出す。

タカミチ、ラカン、テオドラ、セラス、リカードも続いた。

 

「この気配は……」

 

「おい……おいおいおい!!」

 

全員の視線はローブで姿を隠したまま、ネギと戦う謎の人物を注視していた。

 

 

ネギと戦う相手は手足が長い大人の男のようで、体格差は圧倒的。

しかしその動きはネギと酷似していた。

この世界において、ネギと同じ戦い方ができるのは彼の知る限り自分の他には3人。

己の師であり長年共に暮らしてきた育ての親の『六道リンネ』。

彼女が戦い方を模倣した対象である実の父『ナギ・スプリングフィールド』。

そしてナギの仲間であり他人を模倣するアーティファクトを所有する『アルビレオ・イマ』。

 

だがまほら武道会決勝にて戦った時に、完全再現を発動する代償としてアルビレオの魔法書は力を失っている。

彼自身も麻帆良の地下で療養中らしく魔法世界まで足を運べるはずがない。

よって彼は選択肢から除外される。

 

残るは二択。

外見を鑑みれば一択だがリンネの模倣再現能力はすさまじく、かつてナギの仲間であるガトウを、エヴァすら驚愕する精度で再現してみせた。

だから性別や体格はもちろん魔力の波長すら判断基準にならない。例えどれだけ似ていても。

 

(……違う、そうじゃない。

 本当はわかってるんだ。だけど……!)

 

確信はある。そして間違えている可能性を怖がっているだけだという自覚はあった。

だが目の前の相手は明らかに手を抜いている。ネギの様子を見ている。

……彼が言葉にするのを待っている。

 

「……っ!」

 

攻撃の反動で距離を取ったネギは、未だにローブで姿を隠している男に力の限り叫ぶ。

 

 

 

「父さん!!」

 

 

 

ネギの声は結界の内側に取り残され隅に避難していた司会者のマイクまで届き、会場全体に響いた。

そして一瞬音が消えた。

同じく結界の内側で戦っていたエヴァと小太郎も動きを止め、立ち止まってネギたちの方を見つめる。

 

問いかけられた相手は答え合わせをするかのように、ローブのフードをはぎ取った。

 

 

 

「よぅ。待たせちまったな、ネギ」

 

 

 

『千の呪文の男』ナギ・スプリングフィールド。

 

英雄の息子が父と呼ぶ男が……すなわち伝説の英雄が、己の名を関する大会にその姿を現した。

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