『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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主人公が親を持つのは4度目ですが……1度目は物心ついて間もなく失い、2度目は記憶が混濁している焦燥感からまともに接することができず、3度目は打倒AFOに心血を注いでいる内に亡くしているので、まともに親と接した経験がありません。
4度目にしてようやく、自分の正体を知ってなお受け入れてくれる、肉体年齢でも精神年齢でも年上な黒崎一心という父を得ることができました。
普通の親子関係がわかっていないので親馬鹿な彼に応じて甘えてきた結果、半ば暴走してます。
……妙なところに闇があるんですよね。キャラがぶれないように注意しないと。


第8話

「お姉ちゃんおかえりー!!」

 

「大きゅうなったな遊子ー!

 ……どうした夏梨、お主は飛び込んできてはくれぬのか?」

 

「いや突然帰ってこられてもリアクションに困るって。

 それにいい年こいてそこまではっちゃけるのもさぁ……」

 

「……父上!夏梨が冷たい!」

 

「なぁに、心配いらない!恥ずかしがっているだけサ!

 それより父さんともハグをしよう!さぁこの胸に飛び込んでおいで!」

 

「よし行くぞ!」

 

「バッチコーーーイ!!」

 

「はぁ…なんで隣姉(りんねぇ)はクソ親父といると同じノリになるんだろ……」

 

今までも年に数日程度は帰省していた。それでも家族たちとは久しぶりの対面ではある。

朽木ルキアが黒崎家を訪れ一護が死神となった日、記憶を操作して虚による被害は事故ということにして処理されていた。

なので隣互は『事故の話を聞いて慌てて海外から帰った』という体を装い、黒崎家の日常に戻ってきた。

実際には虚の大量発生を受けて修行を中断した、一時的なものではあるが。

 

「騒がしくてごめんなさいね、雨竜くん」

 

「……いえ、お気遣いなく」

 

そして食卓には隣互だけでなく、彼女に強引に連れてこられた石田も座らせられていた。

体の傷は隣互の回道……死神の用いる回復用の鬼道という術により治療されている。

 

(おい黒崎!なぜ僕が君の家の夕食に招かれているんだ!!)

 

(知らねーよ!なんでおふくろまであっさり受け入れてんのかもわかんねーよ!)

 

「で、そっちの人は誰?一兄の友達?」

 

「っ!ちげーよ!友達なんかじゃねー!!」

 

「そうよ、雨竜くんは友達じゃないわ」

 

一護は妹からの質問に全力で否定したが、同様に否定の言葉を続けた母を疑問に思う。

 

「雨竜くんはお母さんのイトコの息子さんなのよ」

 

「「……は?」」

 

「やはり知らされておらなんだか……。

 儂らと石田はハトコ同士、親戚なんじゃぞ?」

 

「「はぁーーーーーー!!?」」

 

「へぇー、ウチって親戚いたんだ」

 

立ち上がり揃って絶叫する一護と石田を無視して家族の団らんは続く。

隣互は硬直する二人にだけ見えるように、右手を広げて滅却師十字を見せる。

そのまま人差し指以外の指を折り、人差し指を黒崎真咲へと向けた。

黒崎真咲が滅却師の一族である石田の親族ということは、つまり彼女が滅却師。

 

「後でちゃんと説明してやるさ。

 じゃからまずは、飯にしよう」

 

「「……」」

 

混乱する二人を放置して黒崎家の夕食が始まる。

石田は社交的ではないので初対面の相手と軽快に会話するなど不可能だが、黒崎家は尻込みする彼に構うことなく盛り上がっている。主に父親である一心が。

それに付き合う隣互の姿を見て先ほどまでとのギャップに困惑し、彼らを怒鳴りつけ鎮めようとする一護に少し同情した。

会話の中で石田が家を離れ一人暮らしをしていると知った一心が泊っていけと言い出し、真咲らも同調。

普段なら断固拒否するところだが、隣互や真咲から話を聞きたい石田は渋々同意した。

そして夜中、遊子と夏梨を寝かしつけて一同が居間へと集まる。

 

「宗玄さんと叶絵さんの葬儀に、足を運べなくてごめんなさい。

 私は石田家から追放されたも同然だから……」

 

「ではやはりあなたが」

 

「えぇ。私は石田家と同じ純血統の滅却師の家系、黒崎家の元滅却師です」

 

会話は真咲から雨竜への謝罪と、一護に素性を明かすことから始まった。

 

「『元』?おふくろは滅却師じゃないのか?」

 

「ある日突然力を失ったの……6年前の、あの雨の日に」

 

「!?」

 

「6年前……まさか僕の母さんが倒れた日!?」

 

「おそらくは。叶絵さんは体が丈夫じゃなかったから、きっと反動も大きかったのね」

 

「儂が虚に狙われやすい体質だとは昔に話したな?

 6年前のあの日までは儂は母上に守られていたおかげで無事育ったのじゃ。

 しかし母上が力を失ったため儂は黒崎家を離れ、修行のために浦原商店に身を寄せておったのよ」

 

「……はぁ!?海外どころかすぐそこじゃねーか!!

 だったらもっと手軽に家に帰ってこれただろ!!」

 

「子供が家を離れるんじゃから、相応の理由が必要であろう?

 頻繁に姿を見せては家族以外の交友関係なども残ってしまう。

 周囲を巻き込みたくないから距離を取るのに、それでは本末転倒というものよ」

 

「そりゃ……そうだけどよ」

 

「……ま、儂はこっそり主らの様子を観察しておったがの」

 

「!?このクソ姉貴!!」

 

「その、浦原商店というのは?」

 

知らない単語が出てきた雨竜が尋ねる。

 

「近所の駄菓子屋……ってのは仮の姿だ。

 あそこは尸魂界から追われた死神関係者の隠れ家。

 うさんくせー奴らだが、信用はできる。

 昔からなんだかんだ世話になっちまってるしな」

 

「……?なんで親父がそんなこと知ってんだよ」

 

「はぁ……一護よ。

 儂は斬魄刀と霊子兵装……死神と滅却師の両方の力を使っておるよな?

 後者は母上由来じゃ。では前者は?」

 

「……まさか……」

 

一護は目を限界まで見開いて、錆びた機械のような動きで一心の方を向く。

そして父は不敵ににやりと笑った。

 

「……嘘だぁーーーーー!!!!」

 

「てめ、なんだその反応は!?」

 

「こら、遊子たちが起きちゃうでしょ?」

 

「だってこのクソ親父が!虚どころか霊も見えないこのクソ親父が!?」

 

「俺も事情があって死神の力を失ったんだよ……。

 旧姓は『志波』。

 俺は尸魂界の死神組織『護廷十三隊』の元『十番隊隊長』、『志波一心』だ」




石田のやらかしは主人公的にはアウト判定なんですが、親戚フィルターがかかりセーフになりました。
真咲さんが生きていたら、絶対に石田との交流が起きるはず。
そして真咲さんの事情を説明したら一心の方もある程度明かさざるをえなくなり……。
沢山の苦労を乗り越えた一護ではなく、年齢通り健やかに成長した一護なので、父親のことをすんなりと信じることも、スルーすることもできませんでした。
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