『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第57話 世界の改変

 

『魔法世界の住民の大半は実体を持たぬ幻である』。

 

魔法世界における最大のタブーを、魔法世界の英雄が全世界に向けて発信した。

同席したテオドラたちも彼がここまで踏み込んでくるとは予想外であり、苦々しい顔で頭を押さえている。

そんな彼らの姿もまた全世界に中継されており、その反応からナギの言葉が事実と受け止められているはず。

今頃世界中に悲鳴と怒号が響いていることだろう。

 

「やりやがったな、この馬鹿野郎……!

 どうしてくれんだ!下手うちゃ魔力枯渇で崩壊する前に暴動と混乱でこの世界が滅びるぞ!?」

 

「そうはならねぇさ。言ったろ?

 『オレは魔法世界を救う方法を見つけてきた』ってよ」

 

 

 

「では、いい加減にその方法とやらを聞かせてもらおうかな」

 

「「「!?」」」

 

 

聞き覚えのない声が聞こえて、テオドラたちが一斉にそちらを向く。

 

「おう。来たか、フェイト。

 招待状が届いていなかったのかと心配したぜ」

 

「フェイト……!?完全なる世界の残党!?

 アナタが呼んだのですかナギ!?」

 

「突然こんなものが現れて、罠だと思っていたけどね」

 

フェイトはナギの名前が記された封筒を掲げる。

彼の後ろには月詠と、おそらく彼の従者であろう5人の少女たち。

やがて彼らの足元にあった魔法陣が消滅した。

 

ゲート破壊テロを起こしてから魔法世界に潜伏していたフェイトたちも『ナギ・スプリングフィールド杯』の中継は見ていた。

ラカンは彼らにとっても強大な敵。少しでも戦力を解析しようとするのは当然のことだった。

 

だが大会はフェイトにとって予想外の事態の連続であった。

幼く未熟なネギと小太郎ならラカンの力の半分でも引き出せれば上々と考えていたのに、合体技などというふざけた力でラカンを圧倒し。

表彰式で地球にいたはずのエヴァンジェリンが乱入したことから彼女が火星に来ていたことが発覚。

更に、彼の主であるヨルダに寄生され消息不明であるはずのナギ・スプリングフィールドが出現。

とどめは中継されたエヴァの発言から推測するにヨルダは封印されナギの手元にあるという事実。

 

となればフェイトは何としても主を取り戻さねばならないが状況は絶望的。

障害はラカンくらいかと思っていたのに、ネギと小太郎の成長に加えエヴァとナギまで現れたのだ。

『黄昏の姫御子』を手に入れれば幻想体であるラカンはどうにでもなるが、後者の面々には造物主であるヨルダの力『リライト』は通用しない。

従者たちと共に襲撃計画を練ってはいたが、勝算は薄いように思えた。

 

だが昨晩、悩めるフェイトの下に一通の封筒が現れた。

中には今回の公開会談の概要とフェイトへの招待状。

会談の場においてナギたちからは手出しをしない旨が書かれた誓約書と、転移魔法符が入っていた。

 

「適当な言葉で煙に巻くつもりなら耳を貸すつもりはなかったさ。

 だが世界中に残酷な真実を明かしてまでと言うなら興味がわいた。

 もはや明確な救済計画を提示しない限り、この世界の人間たちは納得しない。

 君の計画が不十分であれば人々は僕たちの計画を後押しするだろう。

 ……さて、サウザンドマスター。

 君はどうやってこの魔法世界を救済すると言うんだい?」

 

空席だった円卓の最後の椅子に座ったフェイトが顔の前で腕を組み、正面に位置するナギに圧をかける。

 

「……オレは魔法世界を救う方法を見つけた。

 魔法世界を救いに来た。

 だが『どうやって救うか』って質問には答えられねぇな」

 

「なんだって……?キミは僕や世界中の人間を馬鹿にしているのかい?」

 

「ちげぇよ」

 

 

 

「これから救うんじゃない。

 オレたちは魔法世界を救いに来て、もう『救った』んだよ。

 今から2週間くらい前にな」

 

 

 

「「「「「…………はぁ!?」」」」」

 

「だからオレから教えられるのは『どうやって救うか』じゃなく、『どうやって救ったのか』だ。

 まずは証拠を見せる方が先だな。……エヴァ!」

 

「あぁ」

「あぁ?」

 

ナギから話を振られたエヴァが、隣に立つラカンを掴む。

 

「「「!?」」」

 

そして彼を上から押さえつけ影に沈めた。転移魔法のようだ。

 

「……何の真似だい?彼をどこへやった?」

 

「すぐに戻る。数分待て」

 

そしてエヴァの宣言通り数分後、ラカンは会談の場に戻ってきた。

 

真上から。

 

「……ふんぬっ!おいババア!いきなり何しやがる!?」

 

天高くから墜落してきたラカンは大きな音を立てて着地し、すぐにエヴァへと詰め寄った。

 

「実証してやるためだ。お前がどこに行っていたのか教えてやれ」

 

「ふざけんなまずは謝れ!オレじゃなきゃ死んでるぞオイ!」

 

「ラカンよ、お主はどこへ飛ばされておったのじゃ……?」

 

テオドラが尋ねると、ラカンは青筋を浮かべたまま彼女に向き直り叫ぶ。

 

 

 

「『宇宙』だよ!コイツ大気圏の外側まで飛ばしやがった!」

 

 

 

「はぁ!?テメェ生身で宇宙遊泳した上で大気圏突破してきたってのか!?」

 

「むしろなんで傷一つ負っていないのよアナタは!」

 

リカードとセラスもラカンのバグキャラっぷりに、これが世界中に中継されていることすら忘れてツッコミを入れる。

 

 

 

「待て……何故『幻想体が魔法世界の外に出られる』!?」

 

 

 

「「「!?」」」

 

しかしフェイトの言葉で異常事態に気付き動きを止めた。

 

「おっと、それだけではないぞ。

 何故宇宙に出たこのバカが魔法世界に戻ってこれた?

 魔法世界の外から火星に降りればそこは現実の火星のはずだ」

 

「あ……!」

 

「……そういやそうだな」

 

「そして私の転移魔法も、幻想世界と現実世界の壁を超えるほどの力はない。

 つまりここ魔法世界はもう『異界』ではなく『現実』に存在しているのさ。

 ゲートを破壊された後で、どうやって私とナギが旧世界から魔法世界に来たと思う?

 ……地球を飛び出して宇宙を超え、そのまま火星に降り立っただけだ」

 

「んな……!?」

 

「2週間前と言えば、この世界全域に謎のノイズのようなものが……!」

 

「そうだ。その瞬間に魔法世界は現実の火星の上に再構成されたのだ。

 そこに住まう住民はもちろん、空気や草木や砂の一粒に至るまでな」

 

「馬鹿な……馬鹿な、馬鹿な!

 ありえません!一体どうやって……!?」

 

「さぁて、んじゃいよいよ『どうやって救ったか』について語ろうか……。

 つっても、この世界じゃ聞き覚えのない技術なんだがな」

 

ナギは小さな藁人形を取り出し、その場の全員に見せつける。

 

 

「さよ嬢ちゃん」

 

『はぁ~~い』

 

 

ナギが名前を呼ぶと、彼の後ろに少女の幽霊が現れた。

 

ナギは『六道リンネ』として数年間活動してきた。

だから元の体に戻っても彼女の体で使っていた技術が、『シャーマン能力』がほんの少しだけ再現できる。

 

 

「オーバーソウル!相坂さよ・イン・藁人形!」

 

『きゃ~~~』

 

 

少女の霊体が強引に藁人形に押し込まれた。

ただの物質に霊体は納まりきれず、あふれ出す。

そしてあふれ出した霊体がナギの注いだ『巫力』により半実体化し、よりくっきりとした姿を持った少女がその場に立っていた。

 

『ちょっとふわふわします~~』

 

「わりぃな、オレのつたない技でよ。

 ……原理はこれと大体同じだ」

 

「霊体の、半物質化!?そんな技術をどこで……!」

 

「原理は同じ……確かに幻想体は霊体みたいなモンで……!」

 

 

「そうだ。さよ嬢ちゃんが『幻想異界と幻想体』、藁人形が『火星』に当たる。

 今の魔法世界は『火星』を媒介として現実に具現化されたオーバーソウルなのさ」

 

 

何千年も魔法世界の触媒となっていたのだ。

魔法世界をオーバーソウルするための媒介としてこれ以上の物体は存在しない。

 

「……答えになっていない!

 それが術だと言うのなら、術者が必要だ!

 世界一つを丸ごと実体化できる力を持つ術者などいるはずがない!」

 

「……ま、人間にゃあ無理だわな。

 だが確かに術者はいるぜ。

 そんじゃあ、ご登場いただこうか」

 

宣言したナギが指を鳴らす。

 

 

ボッ!

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

すると彼の後ろに燃え上がる炎が生まれた。

そして炎は少しずつ小さくなり人の形を取る。

 

「紹介するぜ。

 オレと魔法世界の恩神、『ヒノカミ』さんだ」

 

「よろしくのぅ」

 

三つ足の烏と白銀の蛇を従え、炎の光輪を背負う美女。

ただそこにいるだけで膝を屈してしまいそうになる圧力に、ナギとエヴァを除く全員が言葉を失った。

 




もちろん、地球から火星まではヒノカミが連れてきました。
原作でも将来的に楓が宇宙を生身でまたにかけてるしエヴァレベルならいけるでしょうけど、時間がかかりますからね。
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