『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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今までの外伝を読み終えていない場合も上記を留意した上で読み進めてください。


外伝9 ポスト・ディザスター
第1話 クリュセ・ガード・セキュリティ


 

「クリュセ独立自治区代表の愛娘から依頼があった。

 地球まで護衛と案内をお願いしたいってな」

 

クリュセ・ガード・セキュリティ……CGSの社長マルバに呼び出された社員の少年、ビスケットとオルガは尋ね返す。

 

「代表の娘って……クーデリア・藍那・バーンスタインですか!?

 俺たちと変わらない年で火星独立運動に関わってるっていう……」

 

「しっかし、なんでまたウチなんかに……」

 

「『なんか』とはなんだコラ。

 ……まぁオレもコイツもそこがわかんねぇって頭抱えてんだがよ」

 

そういってマルバは彼の隣に立つ副社長……オルガたちよりも年下に見える女を雑に指さす。

 

「今回の護衛任務も、独立運動の一環らしい。

 地球でアーブラウのお偉いさんに面会し交渉するためだとな。

 下手すりゃ彼女を疎ましく思うとるギャラルホルンとも事を構えることになるかもしれん。

 危険で重要な仕事じゃ……だからこそ『碌な実績もない』ウチに依頼してくる理由がわからん」

 

CGSは警備会社を名乗ってはいるが、まともな護衛任務などこなしたことがない。

精々、大きめの集会なんかで警備員の人手不足を補うために呼ばれることがある程度。警備会社としての信用はないに等しい。

無理もあるまい。なぜならこの会社の従業員はほぼ身寄りのない子供で構成されているのだから。

 

かつて義心を持っていた若きマルバは火星に溢れる孤児たちを何とかしたいと考え、彼らの受け皿となる会社を設立した。

しかしその経営は順風満帆と行くはずもなく、蓄えていた財産もみるみる内に減っていく。

間もなくふらりと現れたヒノカミという女の助力を得てここまで食い繋いできたが、まさに食い繋ぐだけで精一杯。

近所の農園に人と重機を貸したり、スクラップを回収して再利用したり、機械の修理や販売を担うなど、節操なく何でもやっている。警備会社どころか何でも屋だ。

マルバの手腕とコネ、ヒノカミの並外れた事務処理能力がなければ早々に潰れている。そんな経営状況の零細企業だ。

 

「じゃあ断るんですかい?」

 

「そこなんじゃよなぁ……個人的には、クーデリア嬢の力になってやりたい。

 彼女のおかげでここクリュセの治安は幾分マシになってきとるし、今回の地球行きが成功すれば更に上向きになるじゃろう。

 ……子供である彼女に任せっきりの現状を恥じる気持ちもあるしな」

 

「それにもしかしたら、『ウチの本当の戦力』を把握して声かけてきた可能性もある。

 だとすると下手に断って秘密をバラされたらヤベェ」

 

「……なるほど」

 

「ゆえに一先ず、直接会ってみることにしたんじゃ。

 その場にはお主らも参加してもらう」

 

「「了解」」

 

「他のガキどもに話すんじゃねぇぞ。

 まだウチで受けると決めたわけじゃねぇんだからな」

 

少年たちのまとめ役であるオルガと、その参謀役のビスケット。

賢い彼らなら下手なことはすまいと信頼して全てを明かした。

 

 

そして数日後、クーデリアがフミタンという従者一人だけを伴ってCGSに来訪してきた。

彼女と顔を合わせいくつかの言葉を話したところでマルバとヒノカミがアイコンタクトで会話する。

 

(……なぁヒノカミ。このお嬢さんは……)

 

(うむ……ただの世間知らずじゃな)

 

彼女がCGSに依頼してきた理由は、社員が子供だったからだった。

虐げられている者のために立ち上がった彼女が、火星で最も地位の低い孤児たちと共に地球へと向かえば相応の美談となるだろう。

だとすれば理由にもまだ納得がいくのだが彼女にはそんな打算などみじんもなく、ただ『子供たちと寄り添い痛みを分かち合えたら』という、彼女なりの善意からだった。

おそらく敵が自分の命を狙ってくる可能性すら想定していまい。

でなければそんな危険な旅路に子供たちを同行させようとは思わないはずだ。

 

コンコン

 

「来たか、入れ」

 

「「失礼します」」

「…………」

 

オルガとビスケット、そしてオルガの忠犬である三日月が応接室に入ってきた。

三日月に話は通していないが、彼がオルガについてくるのは想定の範囲内だ。

 

「彼らが、ウチの社員たちのまとめ役です。挨拶しろ」

 

「オルガ・イツカです」

「ビスケット・グリフォンです」

「三日月・オーガス……です」

 

「クーデリア・藍那・バーンスタインです」

 

互いに自己紹介をしたところで依頼内容の再確認。

報酬などもう少し踏み込んだ話までしてから、クーデリアは改めてCGSに護衛をお願いしたいと頭を下げてきた。

 

正直なところ、マルバは難色を示していた。

確かに額は魅力的だが危険が大きすぎる。もしギャラルホルンとの戦闘になれば従業員である子供たちに死者が出る。

それを覆そうと思えばCGSの『本当の』戦力を吐き出して挑むしかないがそれでもまだ失敗する可能性が高く、加えて秘密が公になってしまうので結局ギャラルホルンに睨まれかねない。

断るべき……そう考えてヒノカミにアイコンタクトを取ろうとしたが、彼女は提示された書類を凝視し眉間に皺を寄せている。

 

 

「……お話はわかりました。当社としては、ご依頼を引き受けても良いと考えております」

 

「っ、オイ!?」

「本当ですか!?」

 

「ですが、クーデリア嬢もご存じかと思いますがわが社は零細……。

 貴女の命を預けるに足るかを、実際にその目で判断していただきたい。

 その上でとおっしゃるのであればお引き受けしましょう。三日月」

 

「なに?」

 

「お二人に社内を案内してやってくれ。

 年の近い同性もいた方がよかろう。アトラにも声をかけ同行してもらえ」

 

「わかった……ました」

 

「見学を終えた頃には遅くなります。

 今日は泊まっていかれるとよろしいでしょう」

 

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

 

オルガとビスケットを残すために三日月に二人を任せる。

扉が閉まり4人だけになったところでマルバがヒノカミに食い掛かる。

 

「おい!何考えてんだ!?テメェもこの仕事がヤベェことくらいわかってんだろ!?」

 

「わかっとるよ……お主よりもよほどな」

 

ヒノカミは机の上に置かれた書類の一か所……活動家であるクーデリアの支援者、すなわち今回の仕事を受けた場合彼女に代わり報酬を支払うことになる人物の名前を指さす。

 

「……っ!?」

 

それだけでマルバはヒノカミの行動の理由を察する。

見た目は冴えない中年だが、彼の危機察知能力と経営手腕は伊達ではない。

 

「そういうことかよ、クソッ!

 ビスケット!雪之丞にモビルワーカー全部動かせるようにしとけって伝えろ!」

 

「え?え!?」

 

「オルガ、お主は部隊編成じゃ!24時間体制で最大限の警戒を敷け!

 ただしあのお二人には気取られるなよ!?」

 

「まさか、攻めてくるってんですかい!?」

 

「そのまさかだ!最悪ギャラルホルン……モビルスーツが出てくる可能性もある!」

 

「「!?」」

 

「最短なら今晩にでもじゃ!……腹括れ!」

 

「「了解です!!」」

 




外伝9『鉄血のオルフェンズ』。

ガンダム作品の中でもトップクラスに悲惨な作品ですが……蹂躙します。
外伝8とは火星繋がりで書き始めましたが、そちらで色々疲れたのでもう吹っ切ることにしました。
ヒノカミの出力こそ最底辺まで抑えられていますが、彼女を好き放題暴れさせとことんまでご都合主義で進めていきます。

本作はCGS社長のマルバを昔からヒノカミが支えてきた展開となっています。
雪之丞曰く彼も昔は気のいい奴だったらしいので、本作では気のいい奴のまま年を取っています。
大人組は彼らとデクスターくらいしかいません。
他は皆火星の孤児たちで、彼らの背には阿頼耶識もありません。
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