『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第2話 ギャラルホルン

 

クーデリアが来訪したその夜。

 

「!?通信に異常!」

「エイハブウェーブ確認!」

「サイレン鳴らせ!来るぞ!!」

 

マルバたちの予感は的中し、CGSへの襲撃が始まった。

その相手もまたやはり予想通り、この世界の治安維持組織であるはずのギャラルホルンだった。

 

オルガの指揮の下、CGSのモビルワーカー部隊が出撃する。

見た目は旧式だがヒノカミと雪之丞が魔改造を施したこれらはギャラルホルンの新型モビルワーカーの性能を遥かに凌駕している。

機体の数と仲間たちとの連携もこちらが上。

攻め入ったはずのギャラルホルンのモビルワーカー部隊は瞬く間に押し返されていく。

 

「……!?上空に大型の機影!」

 

「マジで出してきやがったのか!」

 

だが敵の主戦力はモビルワーカーではない。

この世界では所有することにすら制限がある人型機動兵器、モビルスーツだ。

その戦闘力は一般的なモビルワーカーの数十倍に値するという。

後はモビルスーツに任せればよいと、ギャラルホルンのモビルワーカー部隊は撤収していく。

 

「グレイズ!数3!」

 

「全機さがれぇ!!」

 

この可能性も想定していたCGSはモビルワーカーにスモークを搭載しており、オルガの合図に従いこれを一斉に放出して煙の中に身を隠して屋内に撤退する。

そして同時にCGSの建物の大型シャッターが開く。グレイズからはその様子は見えておらず、3機とも無警戒に地面に着陸した。

 

 

 

「ねぇ、やっぱコクピット狙っちゃだめ?」

 

「いかんと言うたじゃろがい!一機も逃さず生け捕りにするんじゃ!」

 

「つってもよぉ姐さん、相手は殺す気で来るんだぜ?」

 

「言いたいことはわかるが、完全にギャラルホルンと敵対してはCGSが潰される!

 少しでも多くの交渉材料を用意するためにも殺しは無しじゃ!」

 

「めんどくさい……」

 

「アンタが言うなら、従うだけだ!」

 

 

煙が晴れる寸前。ヒノカミ、三日月、昭弘、シノの操る機体が飛び出す。

 

 

「バクゥ隊!出るぞ!!」

 

 

足裏に無限軌道を備えた四脚型の『巨大なモビルワーカー』が大地を疾走し、散開してギャラルホルンのグレイズを取り囲むように走り続ける。

 

『なっ、なんだこの機体は!?」

 

『モビルスーツなのか!?ぐぁっ!』

 

「足と腰のスラスターを狙え!ここから離脱させぬよう機動力を奪うんじゃ!!」

 

「「「了解!」」」

 

鋼の巨獣の背中に取り付けられた450mm2連装レールガンが何度も火を噴き、グレイズの下半身を執拗に狙う。

 

「こらシノぉ!射線がズレとるぞ!

 ウチの建物に当てる気か!!」

 

「わ、わりぃ!」

 

ガァンッ!

 

『ぐぁぁっ!?』

 

「……っし!」

 

「でかした昭弘!押し倒せ三日月!」

 

「わかった」

 

額に角を持つ隊長機が膝をついた瞬間、三日月の操るバクゥが飛びかかり上から押さえつける。

 

『ぐっ、このぉ!どけケダモノがぁ!』

 

「うるさい」

 

三日月のバクゥはグレイズの四肢の関節部に足裏を押し当てたまま無限軌道を高速回転させる。

強固なモビルスーツのフレームは容易にへし折れたりはしないが、バタバタと暴れて満足に動かすこともできなくなる。

 

『オーリス隊長!』

 

『くそっ、聞いていない!聞いていないぞ!

 貴様らはろくな戦力も持たない、ガキばかりの弱小警備会社のはずだろう!?』

 

「へっ!『能あるタカはハゲ隠す』ってなぁ!」

 

グシャァ

 

「それを言うなら『爪』だろうが……」

 

「シノ。後日もっかい補習授業な」

 

「いぃっ!?」

 

シノのバクゥに頭を踏みつぶされ、隊長機が完全に動きを止める。

 

『ぐぅぅ……アイン!撤退だ!』

 

「逃がさねぇ!」

 

『がっ!?』

 

『くっ、つかまれアイン!』

 

昭弘の狙撃を受け、おそらく新兵が操縦している方の機体の片足が動かなくなった。

もう一機が肩を貸し引き下がろうとするが、脚部が損傷している以上、この場を離れるにはスラスターが付いた背を敵に向けて飛び去るしかない。

 

「馬鹿だな、アイツら。シノよりも」

 

「んだと三日月ぃ!」

 

「まったくだ。姐さんに背ぇ向けるなんざ……」

 

 

 

「『撃ち落してくれ』と言うとるようなもんじゃろがぁ!!」

 

 

 

ガァンガァンガァンガァン!

 

『うぁぁぁっ!!』

 

『馬鹿な!この距離で!?』

 

レールガンから発射された4発の弾丸が2機の背にある各2基のスラスターの開口部を的確に撃ち抜き、爆発させる。

グレイズのスラスターは背部と腰部のいずれかを選択して取り付ける後付け式。

爆散してもフレーム本体に致命的な影響を与えることはなく、しかし推力を失い2機は墜落する。

 

『う……ぐぅ……』

 

『撤退中の相手の背を撃つなど……卑怯な!』

 

「警告も無く一般の会社に夜襲を仕掛けた貴様らは卑怯ではないんか?」

 

『『!?』』

 

2機のグレイズの周りを4機のバクゥが取り囲み、背中の砲塔を油断なく向けていた。

隊長機の方は再びCGSの建物から再出撃したモビルワーカーに抑え込まれ、無理やり開けられたコクピットハッチからギャラルホルンの兵士が引きずり出されていた。

 

「儂らはテロリストではない。善良な一般市民じゃ。

 投降するなら身の安全と三食昼寝付きは保証してやる」

 

『その声……女……!?』

 

「……善良?」

 

「そいつはちぃと無理あるぜ姐さん……」

 

「やっかましいわい!」

 

『子供……!?』

 

「今更何を驚いておる。ウチの従業員がほとんど子供であることくらい調べて……いや、それすら知らされておらなんだか?」

 

『……』

 

「子供らの前で手荒な真似はしたくない。勝負はついた。潔く降伏せよ」

 

『……人道に則った扱いを所望する』

 

『クランク二尉!?』

 

「さっきからそう言うておるじゃろがい。

 シノと昭弘は儂と追撃の警戒。

 三日月はオルガに連絡。彼らの迎えを連れてこい」

 

「「「了解」」」

 




・モビル『ワーカー』:バクゥ

陸戦に特化した四脚獣型の機動兵器。
モビルスーツの所有制限が厳しいこの世界では人型兵器を安易に用意すると問題視されるため、コズミック・イラではモビル『スーツ』に分類される本機をモビル『ワーカー』であるとして強引に押し切って運用している。
とはいえ、モビルスーツ並みに強いモビルワーカーなんてその存在が知られるだけでもまずいことに変わりはなくCGS格納庫の中に押し込め秘匿していた。
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