『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第6話

 

CGSが提出した証拠により、火星支部に戻ったマクギリスはガエリオと共にコーラルを拘束。

その背後関係を調べると、出るわ出るわ不正の山。

二人で分担して調査を開始し、マクギリスが己の引き受けた分を終わらせたのが昨日の話。

ちなみにガエリオはまだ苦労しているようだ。手を貸そうかと提案したが意地になった彼に断られたらしい。彼も優秀なのだが当分は缶詰状態が続くだろう。

 

だが、であればコーラルがクーデリアの身柄を狙ってCGSに襲撃を仕掛けたことは把握していて当然。

火星の民衆の旗頭である彼女を殺せば、暴動が起きてそれを鎮圧することで治安維持組織としての功績を積むことができる。

彼女を管理下に置けば、彼女を通じて民衆の動きを制御できる。

ギャラルホルンとしてはどちらに転ぼうともメリットしかない。

故に身柄を要求してくる可能性は想定していた。その時は白を切り通すつもりだったが。

だが『クーデリアの依頼を引き受けろ』と言ってくるのは予想外だった。

 

マクギリスは、これ以上は本人にも直接話す必要があると言う。

言葉に嘘は感じられず、何より身一つで再び乗り込んでくる胆力。

ヒノカミとマルバはクーデリアを連れてきて再び応接室へ。マクギリスがクランクとアインを部屋の外に出したので、この場にいるのは4人だけだ。この部屋は傍聴対策も万全であり、扉のすぐ外にいる者にすら内側の会話は聞こえない。

 

 

「アーブラウ代表、蒔苗東護ノ介。彼に面会しクリュセの自治権を勝ち取ること。

 これがクーデリア嬢の目的だとは把握しているが……現在蒔苗氏は失脚し、オセアニア連邦に亡命中だ」

 

「「!?」」

 

「確かでしょうか?」

 

「まだ日が浅い。火星に情報が届くのは当分先だろう。

 そして彼が不在の状態でアーブラウ代表選挙が行われれば、票を集めると予測されているのは『アンリ・フリュウ』という議員だ」

 

「ふむ……確か、かなりギャラルホルン寄りの女性議員でしたな?」

 

「『寄り』どころではないさ。

 彼女は陰ながら我が義父『イズナリオ・ファリド』の全面的な支援を受けているのだよ」

 

「なっ……!?」

 

「そりゃ内政干渉だろうが!永世中立の宣言はどうした!?」

 

「部下たちの模範となり、誰よりも誓いを守るべきセブンスターズがこの有様だ。

 それほどまでにギャラルホルンの腐敗は深刻なのだよ。

 蒔苗氏が失脚したのもイズナリオの手によるものだ。

 奴の私兵と化したギャラルホルンの暴力から己の身を守るには、行方をくらますしかあるまい」

 

「チッ……そんな連中のお膝元たぁ、地球も碌なモンじゃねぇな」

 

「……そうか、蒔苗氏がクーデリア嬢の会談要請に応じた理由が読めたぞ」

 

「想像の通りだろう。彼はクーデリア嬢の護衛にそのままアーブラウまでの己の護衛をさせるつもりだ。

 蒔苗氏が代表選挙に姿を現せば、ほぼ間違いなく再び代表に返り咲く。イズナリオの走狗にすぎないアンリ氏とは器が違うからな。

 そして護衛任務の見返りがハーフメタル資源の規制解除と独自流通の許可というわけさ」

 

「ではCGSの皆さまに私の護衛を引き受けてほしいと言うことは、貴方は蒔苗氏の勝利を望んでいると?」

 

「彼が再選すれば必ずアンリ氏の背後関係を洗い出すはず。

 それに便乗すればイズナリオの不正を暴き、失脚させることができる」

 

「そんで、自分が当主に成り代わろうって?

 テメェの家自体の存続が危ぶまれるんじゃねぇのか?」

 

「これは始まりに過ぎない。私の目標は『腐敗したギャラルホルンの再建』だ。

 ……コーラルは己の失態を隠すため、3機のグレイズと捕虜となっていた3名の情報をデータベースから抹消していたのだ。

 クランク氏とアイン氏もだ。火星支部が慌ただしい状況では、彼らの復隊は1年近く先となる。

 資金も用意してきた。私のポケットマネーなので賠償金とするには物足りないだろうが、しばらくの運営資金としては十分だろう」

 

「つまり、戦力として彼ら2名と3機のグレイズをこちらに預けると?」

 

「理解が早くて助かる」

 

「……ガエリオ殿や、他のギャラルホルンの者には?」

 

「内密に頼む。これは私個人の計画だ。

 無論、クランク氏らには承諾を得ている」

 

条件としては破格と言っていい。この世界とこの時代におけるモビルスーツの存在価値はそれほどに大きいのだ。おまけに正式な訓練を終えたパイロットまで。

だがそれ以上にリスクが高いことが判明してしまった。

クーデリア一人を地球に送り届けるだけなら徹底的に戦闘を避けて目標を達成することもできただろう。

だが蒔苗を連れてオセアニアからアーブラウまでとなれば絶対にギャラルホルンの妨害を受ける。たった3機のモビルスーツとモビルワーカーくらいではどうにもならない。CGSの虎の子であるバクゥを出してもまず無理だろう。

追いつめられた蒔苗から多大な見返りを引き出せるだろうが任務を達成できなければ無駄死にだ。

ヒノカミがクーデリアからの依頼に前向きだったのは成し遂げれば火星で暮らす人々の、ひいては子供たちのためになるから。なのにその過程で子供らを犠牲にしては意味がない。

 

「改めて、どうかな?私は貴女ならば成し遂げられると確信しているが」

 

「買いかぶりすぎです。我らはただの零細企業。

 ギャラルホルンと正面からことを構えるなぞ自殺行為でしかない」

 

 

 

「いやできるはずだ。『真の悪魔』を従える『革命の乙女』と呼ばれた貴女なら」

 

 

 

「っ!」

「は?」

「え?」

 

『革命の乙女』。今の時代でそう呼ばれているのは火星独立を掲げるクーデリアのはずだ。

だがマクギリスはヒノカミをまっすぐに見つめてそう口にした。

 

「……なんのことでしょう?」

 

「誤魔化さずとも結構。その反応で私はより一層確信した。

 貴女こそが300年前にアグニカ・カイエルと共に立ち、世を平和に導いた『先代』の『革命の乙女』であると」

 

「300年……300年!?何言ってんだアンタ!?」

 

「平和に……厄災戦のことでしょうか……?」

 

ヒノカミは眉間に皺をよせ、盛大にため息を吐いた。

 

「……どこで気づいた?」

 

態度を豹変させたヒノカミはマクギリスを睨みつける。

しかし彼はそれすらにも喜びを感じているかのように、自慢げに語り出す。

 

「私はアグニカ・カイエルを崇拝していてね。彼に関する書物は全て目を通し、記憶している。

 そしてセブンスターズにはその成り立ちからして、厄災戦に関しては非常に多くの記録が残っている。

 そこに『ヒノカミ』の名があったのだよ。『施政者にとって都合が悪いから』と表舞台から抹消されたものの中にね」

 

「…………」

 

「決定打となったのは先日、貴女がバクゥとやらをモビルワーカーと言い切った理由だ。

 『リアクターがなく人型でもないからモビルスーツではない』。

 『AIによる無人制御ではないからモビルアーマーではない』。

 ……単語だけならともかく、ギャラルホルンでもない者が『モビルアーマー』がどのようなものかまで把握しているはずがない。

 お恥ずかしい話だが、我々セブンスターズの中にすら知らぬという者がいるほどだからね」

 

「……また、儂のうっかりかぁ……」

 

額に手を当て俯いたヒノカミはついに観念した。

 

「……ついてこい」

 

立ち上がったヒノカミは未だ状況についていけないマルバとクーデリアを促し、その後ろには軽快な足取りでマクギリスが続く。

ヒノカミは部屋の外で待っていた面々を手で制し、4人だけでCGSの倉庫の奥へと進み、誰も入らぬよう厳命して内側から扉に鍵をかける。

そこはヒノカミが個人的に所有している一室のはずだが、中には何もなかった。マルバもここに入るのは初めてだったのでその異様さに驚く。

 

「よっこい、しょっと」

 

3人を放置してヒノカミは金属製の床をはぎ取っていく。すると土の地面が見えてきた。

4メートル四方ほどの大地が露出したところでヒノカミは作業の手を止め、少し離れてしばらく待つ。

 

 

ゴゴゴゴ……

 

「「……?」」

 

ボコォッ!

 

「「!?」」

 

間もなく大地を突き破って何かが出てきた。

 

「なんだこりゃ?モビルスーツの……頭?ちぃとデケェが……」

 

ガバァッ

 

「うぉあっ!?」

 

「ほれ、入った入った。安心せい、食われたりせんから」

 

マスク部分が上下に開くと牙が生えた口ができた。ヒノカミはその奥へと入り、3人を手招きする。

おっかなびっくり全員が中に入ったところで口が閉じた。まもなく振動と妙な浮遊感を感じる。

 

「これは……沈んでいるのですか?」

 

「随分長いな……どこまで行くんだ?

 つぅかウチの下に何があんだ?」

 

「もう着く」

 

ヒノカミが言う通り、まもなく動きが止まった。

再び口が開き、一行は外へと出る。

 

「キャァッ!?」

「うぉわっ、な、なんだこりゃ!?」

「おぉ……!」

 

クーデリアとマルバが目の前に佇む巨大な何かを見て悲鳴を上げるが、マクギリスだけは感動のあまり打ち震えている。

広い地下空洞は数え切れないほどのパイプに埋め尽くされており、それらは全て中央に鎮座する巨大なモビルスーツの頭の下に繋がっている。

そしてその巨大な頭の上から、一般的なモビルスーツのサイズに近い上半身が生えていた。

4人の中に己の主君を見つけ、上下二つの頭のツインアイに禍々しい光が灯る。

 

「これが……これが伝承にある『真の悪魔』……数多のモビルアーマーを葬った最強の『ガンダム』……!」

 

「あぁ。これが儂の愛機、『デビルガンダム』じゃ」

 




そりゃヒノカミなら、厄災戦時代にやってくるよね。
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