『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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ヒノカミの語る厄災戦当時の話は本作オリジナル設定……というか、ヒノカミが関わったことで変化した事にします。


第7話 『悪魔』のガンダム

 

厄災戦。

それはこの時代よりおよそ300年前に起きた世界全てを巻き込む大戦争。

しかしそれは人間同士の争いではなく、人類が機械を相手に戦った生存戦争であった。

 

兵器の無人化のために人工知能を発展させ、より効率的に敵を排除する方法を追求させ続けていった結果、人類が生み出した兵器『モビルアーマー』はただひたすらに人間を殺すだけの存在となった。

『天使』の名が与えられたモビルアーマーを倒すために人類が生み出した兵器が『モビルスーツ』であり、その中でも厄災戦末期に製造され特に高い戦闘力を有していたものが、『ガンダム・フレーム』という特殊フレーム構造を採用した『悪魔』の名を冠する機体である。

 

『ガンダムバエル』を操る『アグニカ・カイエル』は多くの仲間たちと力を合わせ次々とモビルアーマーを討伐し、ついに人類を勝利に導いた。

戦後、彼と共に戦い活躍した7人のエースパイロットは当時の地球国家の承認を受け武力による治安維持組織を設立した。これが『ギャラルホルン』の前身である。

ギャラルホルンの中核を成す『セブンスターズ』とはこの7人の子孫、すなわち英雄の末裔なのだ。

 

だがアグニカとこの7人の他に、彼らにも勝る活躍をしたとある英雄がいた。

『真の悪魔』の名を関する『ガンダム』と共にどこからともなく現れた謎の女。

歴戦の戦士であり、人々を癒す医者であり、並外れた頭脳を持つ技術者。

『ガンダム・フレーム』の基礎構造を考案して人々に戦う力を与え。

誰よりも人々の前に立ちその身を盾として多くの命を救い。

そして戦いが終わるとまもなく、現れた時と同じようにふらりと姿を消した。

 

彼女の名は『ヒノカミ』。

年老いることのない永遠の少女。

当時の人々は人類の未来を切り開いた彼女を過去の歴史の偉人になぞらえ『革命の乙女』と呼んでいた。

 

「だが自分たち以上の英雄の存在など治世には邪魔でしかないと後のセブンスターズたちにより歴史から抹消されたのだ。

 これが記された書を見つけた時、私はギャラルホルンの腐敗の根深さに失望したものだよ」

 

「お、おい、マジなのか……!?」

 

「貴女が、革命の乙女……!?」

 

「そう呼ばれるのはこっぱずかしいが、呼ばれとったのは事実じゃ。このデビルガンダムがその証拠。

 『ガンダム』というフレーム名称もこの機体にあやかってつけたものじゃ。

 ある意味では全てのガンダム……『バルバトス』もこやつの子供ということになる」

 

ソロモン72柱の名を与えられた72機のガンダムは、当時としては圧倒的な戦闘力を誇っていた。

300年前の機体でありながら現代のギャラルホルンの主力量産機グレイズに勝るほど。

その内の一機はマルバが発掘し、動力であるエイハブ・リアクターをCGSの電源として利用している。

 

「だがデビルガンダムは本来、戦闘用の機体ではないんじゃよなぁ」

 

「なっ……!?だが伝承ではデビルガンダムは単独でモビルアーマーにも勝り、あらゆるモビルスーツとは隔絶した力を誇る最強の兵器だと!」

 

「その通りではあるがこやつは元来兵器ではない。

 モビルアーマー討伐のために生み出された『戦闘用のモビルスーツ』よりも強い、自然環境回復のために生み出された『非戦闘用の災害復興用重機』なんじゃよ。

 その構造と戦闘力はともかく、生い立ちはモビルスーツよりもむしろモビルワーカーに近い」

 

「んだそりゃ!こんなおどろおどろしいモンが重機!?」

 

「災害復興……ではまさか、貴女が厄災戦の後で姿を消したのは!?」

 

「そう。儂とデビルガンダムは争いで著しく傷ついた地球を癒すため、地下深くに潜り長い眠りについていた」

 

敵がいなくなって『ハッピーエンド』とはいかない。生き残った人は戦いが終わってからも生き続けねばならない。

ちょっとした超能力者程度の力しか使えないこの世界の彼女では荒れ果てた地球と人類は救えない。

だから彼女がデビルガンダムを頼ったのはモビルアーマー討伐はもちろんだが、一番の目的は戦後復興のためだった。

ヒノカミはデビルガンダムのコクピットの中で己を休眠状態に陥らせ、生命エネルギーの上限一杯を注ぎ続け、彼に地球の自然の再生を任せていた。

それでもデビルガンダムにとっては非常にわずかな量であり、振るえる力は大きくなかったが。

 

そして地球の自然環境が想定していたレベルまで回復したことで彼女たちは再び動き出す。

休眠前の地球の状態から休眠は100年程度で済むと見込んでいた。だが彼女らが目覚めたのはなんと200年以上も後だった。

どうやら再び地上の覇者となった人類は自然破壊を繰り返していたらしく、想定以上に自然回復に時間がかかってしまったようだ。

おまけに当時の戦友たちの子孫は特権階級に居座ってふんぞり返り、地球人たちは同じく戦場となっていた火星の復興に手を付けず火星の民を虐げていた。

呆れ果てたヒノカミは『もう地球でやるべきことはない』と判断し、デビルガンダムと共にこっそりと地球を離れ火星に向かった。

無人の荒野に降り立った二人は再び地下深くに沈み火星の自然環境回復に着手し始めたのだが、しばらくすると自分たちの真上に建物ができ始めたので……。

 

「おい!それがウチか!?」

 

「んむ。儂らはCGSの地下に潜んでいたのではなく、儂らが潜んでいた場所の上にCGSができたんじゃ。

 真上で汚染を広げられたらたまらんからな。何をしようとしているのか確認するため儂が直接向かい、貴様と出会ったわけじゃ」

 

「クリュセ周辺は他の火星の地域の中でも、特に農作物の生育が良く収穫が多いと聞き及んでおります。これは貴女たちが……!?」

 

「そうなるな。デビルガンダムには人工知能が積んである。

 儂がおらねばペースは落ちるが、独自に思考し活動できる。

 今もこうして少しずつじゃがこの火星の大地を癒し続けておるんじゃ」

 

「人工知能だと!?それでは疑似的なモビルアーマーではないか!」

 

「そこは否定できんの。こやつも以前『自然を蘇らせるには人類が邪魔だ』と結論づけたこともあった。

 地球での浄化活動期間が大幅に伸びたことから、やはり間違いあるまい。

 だがそもそも機械は道具。その振る舞いを決定づけ責を負うべきは人であろう」

 

(ーーーー)

 

「それはそうかもしれないが……いや、アグニカと並ぶ英雄である貴女の機体だ。

 人類を滅ぼすモビルアーマーと同列視するなど侮辱に当たるか」

 

「お主の儂とアグニカに対する妙な信仰心はなんなんじゃ?」

 

静かで冷静に見えるマクギリスだが、その内心がとんでもなく弾んでいることをヒノカミは察知できる。

新しいおもちゃを与えられた純粋無垢な子供のよう。あるいは厄介なアイドルの追っかけ。

そして彼はついに感極まったようで、勢いよくヒノカミに跪く。

 

「貴女がアグニカと共に戦った真の英雄ならば、ギャラルホルンの上に立つべきは貴女だ。

 どうか腐敗した今のセブンスターズに鉄槌を降し、再び我らを導いていただきたい。

 クーデリア嬢と共に地球に降り立ち、その威光を世に知らしめたまえ!」

 

「誰がするかぁっ!そもそも儂もアグニカもギャラルホルンとはなんも関係ないんじゃからな!?」

 

「!?関係が、ない!?」

 

「戦後に荒れた治安を早急に安定させるために確かな武力を持つ組織が必要じゃった。

 そこで各国が強力なモビルスーツとそのパイロットを求めアグニカや仲間たちに声をかけた。

 その中で要請に応じた7人が後のセブンスターズじゃよ。

 考えてみろ。儂とアグニカ合わせてたったの9人で数多のモビルアーマーを狩り尽くせたわけがなかろう。

 名を遺すべき英雄はもっともっと大勢いた。だからガンダム・フレームが72機もあるんじゃろうが」

 

「あー……つまり英雄たちの中で、お国のお偉いさんに尻尾振った連中でできたのがギャラルホルンってか?」

 

「欲ではなく義侠心で参加した者もいたがな。イシューとかクジャンとか」

 

「そんで歴史から抹消されたのもテメェだけじゃねぇってことか」

 

「で、では……ギャラルホルンに、アグニカの遺志は……!」

 

「あるわけないじゃろ。参加断っとるんじゃし。

 アイツは堅苦しい組織に押し込められる器ではなかったよ」

 

自称アグニカの信者であるマクギリスが崩れ落ちる。

彼は腐敗したギャラルホルンにアグニカの崇高なる志を再び宿すために陰ながら尽力してきたというのに、そもそも最初から宿っていないと断言されてしまった。

ギャラルホルンに『カイエル』の血筋がいないのは『アグニカは生涯未婚を貫いたから』と伝承されているが、この分では本当に結婚していなかったのかすら怪しい。

ちなみに彼に子供がいたかはヒノカミも知らない。彼女が眠った時には確かに未婚だったが、なんだかんだアレは女性にモテていたのでどこぞで子供を作っていてもおかしくはないだろう。

 

 

「……んで、いい加減こちらから尋ねたいんじゃが、ギャラルホルンの連中が儂とデビルガンダムのことを知らぬというのは事実か?」

 

「あ、あぁ……。私のように熱心なものでもなければ……。

 少なくとも他のセブンスターズの者が私の前や公の場で口にしたことはない」

 

「そうか……クーデリアよ。

 火星独立のため地球に向かうというお主の決意に変わりはないか?」

 

「っ!?は、はい!」

 

「あいわかった。ではお主の依頼は儂が引き受ける。

 デビルガンダムが使えるならなんとかなるじゃろ」

 

「本当ですか!?」

 

「子供らのためにも火星の環境は良くしてやりたい。

 今のギャラルホルンの悪行も、どうにかできるなら止めたいからな」

 

「本当にそんなにつえぇのか、このデビルガンダムってのはよ」

 

「あぁ、強い。儂とデビルガンダムだけでも依頼を完遂できるくらいにはな」

 

「!?おい、お前まさか!?」

 

 

 

「クーデリアの依頼は儂が個人的に引き受ける。CGSを離れてな。

 ギャラルホルンと敵対するのは儂一人だけでいい」

 

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