『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第9話

 

『よう、オルガ』

 

「お久しぶりです、名瀬のダンナ」

 

宇宙に上がった鉄華団はタービンズの代表『名瀬・タービン』と合流した。

彼らは木星圏の小惑星帯の開発や運送を担う企業複合体『テイワズ』の直参の組織であり、輸送部門を担当している。

マルバと名瀬は旧知の仲であり、CGSとタービンズの付き合いは長い。

行き場のない孤児たちの居場所を作ろうとしたマルバに対し、名瀬はその中でも特に裏社会で酷使されていた女性たちを保護している。

タービンズにはCGS出身の女性も多く在籍しているのだ。

立場を与えて守るためとはいえ全員を『己の妻』と言い切るのは、男としてはどうかと思わないでもないが。

 

『マルバから話は聞いてるぜ。地球への案内を俺らに依頼したいんだってな』

 

「はい、よろしくお願いします」

 

『大船に乗ったつもりで……と言うには小せぇが、オレらのハンマーヘッドは小粒でもピリリどころじゃねぇほど辛ぇぜ。安心しな』

 

「ウッス」

 

『しかし、あの小さかった坊やが今や社長とはねぇ……』

 

「坊やはよしてくだせぇ、アミダ姉さん」

 

『それも、ギャラルホルンとやりあおうってんだ。

 いつの間にかでっかくなっちまいやがって。

 ……どうだい?いっそテイワズにこねぇか?

 お前らとなら五分の盃を交わしてもいいぜ?』

 

テイワズは巨大企業ということになっているが、その実態はマフィアだ。

地球から離れた巨大宇宙船を拠点としていることとその勢力の大きさから、ギャラルホルンでもうかつには手が出せない。

名瀬と盃を交わしテイワズのトップである『マクマード・バリストン』を親と仰げば、彼の庇護下に入ることになりオルガたちの安全は保障されるだろう。

 

「ダンナを兄貴と呼ばせてもらえるのは光栄だが……スンマセン。

 俺らの親父はマルバ・アーケイただ一人だ」

 

『そうかい……アイツぁいい息子を持ったねぇ』

 

「縁は切られちまいましたが、自慢の息子であり続けたいと思ってます」

 

『くっくっく、そういう非合理的な義理人情ってのは大好きだぜ。

 ……脱線しちまったが、そろそろビジネスの話をしようか。

 めぼしい奴ら連れてこっちの船に来な』

 

通信を終えたオルガは、忠臣の三日月と参謀のビスケットと副団長のユージン、当事者のクーデリアとその従者フミタン、そしてヒノカミを連れてハンマーヘッドへと移る。

 

 

「ご要望は地球への道案内、その条件は……コレ本気かい?」

 

「あぁ。『ギャラルホルンとの交戦を可能な限り避けること』。

 これが唯一にして絶対の条件じゃ。

 あとは期限内に辿り着くならどれほど過酷な道でも構わん。全て踏み越えていく」

 

「どうせ地球に降りたら連中とドンパチやる羽目になるんだろ?それでもか?」

 

「その場合でも基本的には不殺を貫くつもりでいる。

 排除すべきは腐敗した体制を維持しようとするクズのみよ。

 争えば真っ先に犠牲になるのは末端の兵士たち。

 ことが終わった後で彼らから恨みを買うのは避けたい」

 

「どうか、よろしくお願いいたします」

 

今イサリビには傭兵という扱いでクランクとアインがいる。

彼らはすでに鉄華団に受け入れられており、子供らもギャラルホルンの人間全てが悪ではないと悟った。

『不正を正すために』とマクギリスにそそのかされ鉄華団への協力を決意した彼らだが、やはり同じ組織の仲間と殺し合うような真似はさせたくない。

 

「となると、デブリ帯の中を隠れて進むしかねぇか……」

 

モビルスーツの動力源であるエイハブ・リアクターにはエネルギーと同時に重力を発生させる効果がある。

宇宙で漂う残骸の中には未だに稼働中のリアクターがあり、それが宇宙のデブリを引き寄せ密集地帯を作り出している。

リアクターによる重力は航行する船の軌道すら歪める。巻き込まれれば今度は自分たちが新たなデブリだ。まともな船なら近づこうとすら思わない。

だからこそギャラルホルンから身を隠すにはうってつけである。

 

「そうなると荒事は避けられねぇな。

 あそこは今『ブルワーズ』の根城になってやがる」

 

そして同じことを考える者はいくらでもいる。

『ブルワーズ』は地球と火星の間の航路で暴れる宇宙海賊だ。

まともな連中ならテイワズ直参のタービンズに手を出そうなどと考えもしないが、道理をわきまえぬチンピラにはそんな理性を求めるだけ無駄というもの。

いや、まともな連中ならそもそも宇宙海賊になどならないか。

 

「海賊か。そいつらだったら容赦はいらねぇな」

 

「敵の戦力は?」

 

「確認する限り、強襲装甲艦二隻とモビルスーツが十数。

 勝てねぇ相手じゃねぇが、この戦力でぶつかれば相応の犠牲は出る。

 それでも自分から戦場に向かうってのかい?」

 

マルバとヒノカミは子供らを危険な目に合わせることを嫌うはず。

確かに未来を考えればギャラルホルン側に被害を出すのはまずいが、それで味方を殺しては意味がない。

世間知らずのお嬢さんはともかく、ヒノカミの方はもう一度念を押せば意見を改めると思っていた。

 

「犠牲など出ぬよ。むしろ役者不足じゃ」

 

「「?」」

 

 

「最強の『悪魔』、デビルガンダムの力を見せるにはな。

 その程度の木っ端、儂一人でお釣りがくるわい」

 

 

「姐さん!?」

 

「……そいつが、隠し持ってたアンタの相棒って奴かい?

 大層な自信だが流石に無謀が過ぎるってもんだぜ?」

 

「どのみち一度儂の力を見てもらわねば今後の計画も立てられまい?

 とはいえ言葉では納得できんじゃろう。よって……」

 

 

 

暫くして、デビルガンダムはバルバトスと3機のグレイズを引き連れデブリ帯の中に突っ込んだ。

バルバトスは最もパイロット適性が高い三日月、彼に次ぐ昭弘にはオーリスのグレイズが託された。残る2機はクランクとアイン。

4人は後方からデビルガンダムの戦闘を確認し、危険と思えば参戦する手はずとなっている。

イサリビの護衛はタービンズの手練れに任せた。

 

『っ……動きづれぇ……!』

 

『焦るな、昭弘少年。

 ほぼ初めての宇宙、しかも無数のデブリとリアクターが生み出す力場の中だ。

 それだけ動けているなら上出来だぞ』

 

『ウス……つっても、三日月と比べちまうとなぁ……』

 

『ん?呼んだ?』

 

『何故アイツはあんなに軽やかに動けるんだ……?』

 

「天性のセンスじゃな。あ奴は『なんとなく』で乗りこなしてしまうんじゃよ」

 

『……本当に子供らに『阿頼耶識システム』は使っていないのだな?』

 

「無論じゃ。あんな欠陥品、追い込まれた戦時中でもなければ使うものか。

 バクゥから儂特製のサポートAIを移設しそちらで補助しておる」

 

『コイツがあるから、オレらみてぇな馬鹿でもモビルワーカーやモビルスーツを動かせるんだ』

 

『すさまじいな……お前は本当に大した技術者だ。

 そのAIとやらをギャラルホルンでも普及できれば……』

 

「無理じゃな。セブンスターズの連中はAIに拒絶反応を示すじゃろう。

 それにこれも阿頼耶識と同じく、子供らを戦場に出せてしまう技術じゃ。

 安易に広めてそれこそ海賊や外道に悪用されれば……む?」

 

『どうした?』

 

「反応あったぞ。モビルスーツ、数は4」

 

『なんだと?エイハブ・ウェーブは検知できていないぞ?』

 

「デビルガンダムはセンサーの感度もけた外れよ。

 まだ連中も気づいておらぬ。これより儂が突貫する。

 お主らは距離を取って隠れながら進め。

 こちらの方が数が多いと悟られれば撤退するやもしれんからな」

 

『4機だぞ!?本当に一人で行くつもりか!?』

 

「最初からそう言っとるじゃろ。

 三日月と昭弘はクランクの指示に従え。

 アインはその補佐じゃ。では行ってくる」

 

ドゥッ!

 

『『『『!?』』』』

 

下半身を巨大な頭部に変形させたデビルガンダムが急加速し離れていった。

おそらく敵がいるであろう方向に一直線に。

そう、一直線にだ。

 

『デブリを無視し……弾き飛ばして!?』

 

『へぇ、頑丈なんだな。あのデカブツ』

 

『あの巨体で、なんという推力だ!』

 

『『空も飛べる』ってのは、ひょっとしてマジなのか!?』

 

 

 

 

「いたいた。……随分ずんぐりむっくりで不格好じゃな」

 

(ーー)

 

「はぁっ!?あれ『グシオン』か!?魔改造が過ぎるじゃろ!?」

 

相手もこちらに気付いたらしい。

ガンダムフレームを流用しているらしい緑色の太った機体が一つと、似たような姿の量産機が3つ。

 

「……取り巻きのパイロットたちの感情、これは『恐怖』か?」

 

(ーー?)

 

「あぁ。連中はヒューマンデブリを買いあさっとるらしいからな。間違いなかろう。

 ……となれば話は早いな!あのガンダムを落とすぞ!

 さすれば他は勝手に戦意喪失するじゃろ!」

 

(ーー!!)

 

「あぁ、我らで思い知らせてやろうぞ。

 ……本当の『恐怖』をなぁ!」

 




ヒノカミが教育しているとはいえ流石に阿頼耶識無しでいきなりエースパイロットってのは厳しいので、補助AI搭載設定を採用しています。
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