『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第10話

 

突貫してくる異形のモビルスーツに気付いた途端、ガンダムグシオンを操るブルワーズのクダル・カデルは部下……いや道具であるヒューマンデブリたちに前に出るよう命じた。

彼らに与えられた任務は足止め、使い捨ての囮、そしていざとなれば敵諸共処分されること。

それが分かっていても少年たちは逆らうことはできない。自分たちは人間ではなく、人権などないのだからと。

 

マシンガンを撃ちながら突撃する3機のマン・ロディ。

しかしデビルガンダムにそんな豆鉄砲は通用しない。避ける必要すらないと突っ込む。実際にわずかな傷もついていない。

ブルワーズのモビルスーツのお株を奪う重装甲を前にいらだつクダルはデブリたちに更に前に出て、直接叩き伏せるように命じた。

3機のモビルスーツが近接武装のナタを構え一斉に襲い掛かる。

 

だが巨大な頭部を脚部に変形させ人型となったデビルガンダムは拳を構え、無手にて3機を迎撃した。

1機目はナタを躱して胴体に掌底を撃ちこみ。

2機目は脚部クローで機体を掴んで投げ飛ばし。

3機目は白羽取りの後ナタを叩き折り蹴り飛ばす。

クダルはデブリたちを役立たずとののしりながら、しかし動きが止まり隙ができたと、担いだ巨大な鉄塊『グシオンハンマー』を構えて突撃する。

スラスターを全開にして突っ込んでくるグシオンを前に、デビルガンダムはその場を動かず右肩のサブアームを展開しエネルギーを集中させる。

 

「爆熱……!」

 

赤熱し始めた異形の腕を引き絞る。

 

 

「デビルフィンガァーーーーッ!!!」

 

 

そして真正面からグシオンを迎撃した。

交錯した直後、クダルは手ごたえの無さに違和感を感じて機体が掴んでいた武器を見る。

 

『……んあぁぁんっ!?』

 

ハンマーは柄しか残っておらずただの棒切れになっていた。

そしてグシオンを振り向かせた瞬間、機体に衝撃を受ける。

 

『がっ……あぁ!?』

 

デビルガンダムの左肩のサブアームが展開し、グシオンの胴体をガッシリと掴んでいた。

そして右肩のサブアームもまた何かを掴んでいる。

 

『……ひぃぃっ!?』

 

それは高熱で半ば融解しているグシオンハンマーの先端だった。

ドロドロのゴミを放り投げたデビルガンダムは、続いてグシオンを掴んでいた左肩のサブアームを赤熱させ始める。

 

『離せぇ!離せっつってんのよぉ!!』

 

幸いにもグシオンの胴体部に内蔵したバスターアンカーの砲口は塞がれておらず、デビルガンダムの方を向いている。

ほぼゼロ距離での直撃。並のモビルスーツなら原型すら留めぬほど破壊されているだろう。

 

(ーー)

 

『はぁぁぁんっ!?』

 

だが爆炎の中から出て来たのは、未だ健在なデビルガンダム。サブアームに込められた力もわずかにすら緩んでいない。

 

『くそっ、くそぉっ!!何してんのよガキどもぉっ!

 さっさとこいつを引きはがせ!オレを助けろぉっ!!』

 

「…………」

 

クダルの無様な命令に従い、3機のマン・ロディが襲い掛かってくる。

武器を失った機体に至っては素手で殴りつけたりグシオンを掴んでいる指を引っ張ることしかできないが、もちろんデビルガンダムはびくともしない。

グシオンもバスターアンカーを狂ったように連射するがそれは本来禁じ手。砲身にかかる熱と衝撃が大きく、案の定すぐに使い物にならなくなった。

これでグシオンは戦闘力の一切を失った。あとは脅して降伏させるつもりだった。

 

だが、気が変わった。

ヒューマンデブリとは貧しさから親に売り払われたり、悪党に誘拐されたりして奴隷にされた子供たちのことだ。CGSや鉄華団にもデブリと呼ばれていた子供がいる。昭弘もそうだった。

彼らは今クダルを必死に助けようとしているがそれはコイツが慕われているからでは断じてない。

どんな状況でも自分の命令に従うよう、徹底的に調教されたのだろう。それがどれほどの苦痛であるか言葉にするのもはばかられる。

 

「やれ」

 

(ーー)

 

デビルガンダムはグシオンを掴んでいたサブアームの熱を、電撃に変換した。

 

『ぎぃやぁぁぁあーーーーーーーーーーーっ!!!』

 

電撃の余波を浴びたマン・ロディが反射的に手を放し距離を取る。

機体の操作系統そのものにも影響が生じ、グシオンの手足が痙攣しバタバタと暴れる。見た目と色も相まって本当にカエルのようだ。

 

『あがっ、はぁ、はぁっ!?あぎゃあぁぁぁぁああーーーーーーーっ!!!』

 

一度止めて、もう一度流す。人間が死なない程度の絶妙な出力でだ。臓器や神経に後遺症が残るかもしれないが知ったことではない。

 

『ぁ……ァ……ァァァァァァアアッ!!!』

 

気絶はさせない。逃げ出すことは許さない。命乞いすら認めない。

何度も電流を流す。何度も、何度も、何度もだ。

 

 

 

『ひ、ひぃっ!』

 

『て、撤退だ!こんな化け物オレたちだけじゃどうにもなんねぇよ!救援を!!』

 

クダルがまともに言葉すら口にできなくなってようやく、デブリの少年たちは自分で考え行動しようとした。

 

『そうはさせん!』

『逃がさないよ』

 

『『『っ!?』』』

 

母艦を目指そうとしたマン・ロディの前にアインのグレイズと三日月のバルバトスが立ちはだかる。

 

『投降するというなら、危害は加えん。

 人道的な待遇を約束しよう……頼むから大人しくしてくれ』

 

更にクランクと昭弘のグレイズも包囲網に参加した。

マン・ロディの武装の一部は使えなくなっており、おまけに数まで逆転された。

デビルガンダムもいつ再び襲ってくるかわからない状況とあらばもはや勝ち目などないと悟ったはず。

 

『何言ってんだよ……人道的?バカじゃねぇの!?

 オレたちはデブリだ!人間じゃねぇ!

 ここで無様に生き延びても、どうせすぐにゴミみたいに死んでいくんだ!!』

 

だが一人のパイロットがクランクの説得を聞いてむしろ反発した。

クランクは己の失敗を察すると同時に、子供にここまで言わせてしまう現実を悲しんだ。

そのパイロットが操るマン・ロディが傍に浮いていた武器の残骸を掴んでクランクのグレイズへと襲い掛かる。

 

『待てぇっ!!』

 

『!?』

 

そのマン・ロディに昭弘のグレイズが飛びついた。

 

『このっ、放せぇっ!!』

 

『その声、昌弘か!?昌弘なのかっ!?』

 

『えっ……』

 

『オレだ、昭弘だ!昭弘・アルトランドだ!!』

 

『……兄貴……!?』

 

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