『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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ちょっと主人公の過激なところが出ます。
今の彼女の立場はヒーローではなく、相手は気遣うべきヴィランではない、つまりタガが外れます。
不快かもしれませんが、彼女はこういうキャラです。


第10話 死神

ただの虚ならともかく、大虚の出現ともなれば尸魂界は確実に状況把握に動き出す。

やがてそれを退けた黒崎一護の存在を認識するだろう。

そしてその力の原因、彼に死神の力を譲渡してから連絡を絶っていた朽木ルキアの消息も。

 

現世の人間に死神の力を譲渡するのは重罪だ。

当たり前だろう。訓練を受けておらず、心構えもできておらず、素性もわからない一般人に貸し与えるには死神の力は強大で危険極まりない。

一時的な譲渡のつもりが力全てを奪われてしまったのは予想外だったが、ルキアは罪であることを承知の上で一護に力を渡した。

己が裁かれるのは良い。

しかし追手は死神の力を回収するために一護も狙うだろう。

だから朽木ルキアは一護の元を離れた。

あとは自分が黙秘すれば、少なくとも一護は守ることができると考えたからだ。

 

そして隣互はそれを知っていて、見て見ぬふりをした。

家族を守ってくれた恩はある。この町の平和に尽力してくれたことも知っている。

しかし彼女は尸魂界の死神であり、黒崎家や浦原商店の関係者としては潜在的な敵になり得る。

連れ帰ってもらった方が都合がいい。

助けを求められたのなら一考したが、彼女が尸魂界の掟とやらに従うと決めたのなら手を貸す必要はないだろう。

 

だから彼女は雨竜と一護がルキアを救うために追手の死神に戦いを挑んでもまだ遠くから見ているだけだった。

下手に死神に関わってはいけないと理解してもらうために両親のことを話したというのに、それは一護にとってルキアを見捨てる理由にはならなかったらしい。実に一護らしいと少しうれしくもあったが。

巻き込まれたのではなく、自分から戦場に赴いたのだ。

そこで負傷したとしてもそれは当人たちの責任。

流石に見殺しにするつもりはないので、ギリギリまで戦わせてから二人を回収するだけに留める。

そう決めていた。

 

「てめーは死んで、能力はルキアに還る。

 そしてルキアは尸魂界で死ぬんだ」

 

弟を切り裂いた赤髪の死神がそう宣言するまでは。

 

「……」

 

「姉貴?」「隣互さん?」

 

気付けば一護のすぐ隣に、隣互が立っていた。

 

「なんだぁ?次から次に。

 姉貴ってことは、てめぇもこいつの関係者か。

 まぁいい。まとめて死んどけ」

 

 

「お前が死ね」

 

 

「……は?」

 

赤髪の死神、阿散井恋次の目の前には真紅の斬魄刀を抜いた隣互がいて。

彼女の刃が恋次の首元に食い込んで。

頸動脈に届く直前で彼の前に差し込まれたもう一人の死神、朽木白哉の斬魄刀により受け止められていた。

 

「あ……が……!?」

 

恋次が血が溢れる首を抑えてよろめき、尻もちをつく。

 

(……見えなかった!!隊長が止めていなけりゃ、今頃俺の首と胴は繋がっていなかった!!)

 

仮にも六番隊副隊長。隊長には大きく及ばないとはいえ、圧倒的強者だという自負があった。

それが斬魄刀を持っているとはいえただの人間に何もできずに殺されかけた。

 

「なんじゃ、助けるのか?

 てっきり貴様らは同族の命などゴミとしか思わぬ下衆かと思うたが」

 

そして彼女は白哉とにらみ合っており、恋次のことなど視界に入れてすらいない。

 

「……貴様、何者だ」

 

「これから死ぬ者に名乗る必要があるのか?」

 

「……」

 

向き合う二人の放つ霊圧に、恋次もルキアも気圧され口が開けなくなる。

一護と雨竜は少し距離があるためまだ辛うじて会話ができていた。

 

「一護、彼女に一体何が……」

 

「わかんねぇ。あんなにキレた姉貴は俺も……あ……!」

 

あまりの変貌に狼狽える雨竜だが、一護は原因に思い当たった。

 

「しかし、尸魂界の掟とやらは随分と出来が悪いらしいな」

 

「なんだと……?」

 

「掟……法とは秩序を守るためにある。

 秩序とは社会を守るためにある。

 社会とは……そこに住まう人々を守るためにある。

 守るべき者を真っ先に切り捨てる法なぞ欠陥品よ」

 

「我らの誇りを侮辱するか……!」

 

「くかかか、古臭いだけの腐った柱を誇りとのたまうか。

 『埃』の間違いじゃろう?」

 

「……もういい。貴様は言葉を交わす価値すらない」

 

白哉は隣互の刀をはじいて距離を取り、自分の刀を垂直に立てた。

 

「散れ」

 

それは彼の斬魄刀の力を開放するための解号。

 

「『千本桜』」

 

白哉が己の斬魄刀の名を呼んだ瞬間、刀身が花弁を模した無数の刃へと姿を変え一斉に隣互へと襲い掛かる。

 

「焦がれよ」

 

そして隣互もまた白哉と同様に真紅の斬魄刀を自分の正面に立て、宣言する。

 

「『赫月(あかつき)』」

 

名を呼ぶと同時に彼女の斬魄刀は柄から刀身の先まですべてが炎へと変化し、彼女はそれを振りぬいて無数の刃全てを焼き払った。

生じた炎が彼女の周囲を踊るように渦巻いている。

 

「さぁてゴミ掃除じゃ。その『埃』とやら、欠片も残さず焼き尽くすこととしよう」

 

その光景を見ていた一護の脳裏には、幼い頃の記憶が呼び起こされていた。

不真面目で、イタズラ好きで、大抵のことは笑って許す姉だが、いくつかの例外が存在する。

 

家族や仲間……守るべき者を安易に切り捨てる行為を、彼女は決して許さない。




・斬魄刀『赫月』

圧縮された超高熱の炎で構成された斬魄刀。
個性を用いず再現された『赫灼熱剣』であり、柄まで炎でできているので『炎舞』の個性を持つ隣互でなければ掴むことすらできない。
炎が刀の形で強固に固定されているため、刀から炎を取り出して個性で扱うことはできない。
この斬魄刀で他の物を燃やすことで生じる炎を個性で操る。

主人公にはいくつか地雷があり、踏み抜くとまさに烈火の如く激怒します。
その一つが、家族や仲間を簡単に切り捨てること。
白哉と恋次が仕方なくルキアを連れて行こうとしていたなら最後まで見ていたかもしれませんが、彼らの振る舞いがまるで弄んでいるようだったので逆鱗に触れました。
相手が殺す気で来てるのでこっちも遠慮しません。
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