『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第18話

 

地球での護衛任務を終え火星に帰還した鉄華団。

その後彼らはヒノカミの素性を知り、デビルガンダムの能力を知り、そしてもう彼女らが力を隠すつもりがないと知った。

 

鉄華団は一躍有名になった。だが彼らは少数の子供たちでなんとかやりくりしている弱小組織なのだ。

暫くすればCGSから元ブルワーズの少年たちが入社してくれるだろうが、それでもまだまだ規模が知名度に追いついていない。

何より、鉄華団には拠点がない。CGSに戻ればマルバやそこで働く子供たちも危険に晒してしまう。

そんな鉄華団にヒノカミはとある提案をした。

夢物語のような内容に度肝を抜かれたオルガたちはしかし彼女が嘘をつかないことを知っており、彼女の計画に乗ると決めた。

 

以降彼らは火星を離れ、デブリ帯に引き籠ってひたすらに作業を続けていた。

 

そもそもこのデブリ帯が存在するのは、デブリの中に重力を発するエイハブ・リアクターが無数に混ざり周囲の物体を引き寄せているからだ。

リアクターは半永久的にエネルギーを発生させ続ける炉心であり、この世界におけるモビルスーツの動力源であり、ギャラルホルン以外はその製法を知らず、そのギャラルホルンへの信用が失墜し地球各国が自国戦力の増強を推進している状況では、まさに宝の山である。

 

ではなぜ誰も未だにデブリ帯に手を付けていないのか。それは単純に労力に見合わないからだ。

特殊な重力環境下で無数のデブリの中からリアクターを探し出すのは、例えるなら灼熱の砂漠の中の地中奥深くに埋まっているお宝を掘るようなもの。適当に掘り返して運よく見つかる保証はなく、欲をかけば自分たちが新たなデブリになるだろう。

だからこそデブリ帯を根城にしていたブルワーズもそこに潜むだけで、リアクターを探し出そうとはしなかった。

 

では我らが鉄華団がどんな風に作業を進めているかと言うと。

 

 

 

(ーーーー)

 

ガツガツガツガツガツ

 

『おかわりだ、早くしろ!もっとじゃんじゃん持ってこい!』

 

『いい加減休ませてくれよオルガ!もう何ループ目だと思ってんだ!!』

 

『……流石に、疲れた』

 

『フゥ……フゥ~~ッ』

 

モビルスーツとモビルワーカーを総動員し、手当たり次第にデブリを集め、デビルガンダムに食わせ続けていた。

全身のフジツボ型の突起から伸びたいくつものガンダムヘッドが牙をむいてスクラップをかみ砕き、巨大な頭部を模した下半身から伸びるいくつかの太いケーブルから次々と金属を放出していた。デブリに混ざっていたリアクターは呑みこまれず吐き出され、脇によけられて一つの塊になっていた。

 

デビルガンダムを構成するUG細胞は万能金属細胞。自己再生・自己増殖・自己進化の三大理論を兼ね備えている。

生体ユニットから供給されるエネルギーがあれば様々な金属を尽きることなく作り出し続けることができるが、この世界のヒノカミは著しく力を制限されている。何でもかんでも増殖で作り出すのは不可能だ。

だが他の金属を取り込み分解・精錬・再構築して放出するくらいなら消耗は少ない。

未だに信じがたいと言われてもデビルガンダムの分類は『災害復興用重機』なのだ。

なお排出される金属部品を見て思わず『〇ンコみてぇ』とつぶやいたシノが全員にどつかれたのは余談である。

 

そしてデブリを選別する必要がなく集めるだけでいいなら、ネットを広げて手当たり次第に引っ張ってくるだけで済む。

危険性は低く何も考えずに動き続ければいい。それこそ子供でもできる作業だ。

なのだがデビルガンダム側の処理速度が速すぎるためとにかく忙しい。流石の鉄華団の豪傑たちでも堪えているようだ。

 

「今はとにかくスピード勝負じゃ。悪いが踏ん張ってくれ」

 

『姐さん……そいつぁわかってますが……』

 

盟友と言えるタービンズには筋を通すべきと計画を説明したところ、彼らは協力を申し出てくれた。

だがやはり長丁場になるならトップであるマクマードに許可をもらわなければと彼らは一度歳星に戻っている。

そして鉄華団だけではデビルガンダムの消化速度に追いつけない。

デブリの収集までデビルガンダムにやらせては作業スピードが著しく落ちてしまう。

 

 

『オルガ、ハンマーヘッドが戻ってきたよ!』

 

『よぉ、頑張ってるかお前ら』

 

『ダンナぁ……っ』

 

『そんなツラすんじゃねぇよ。ちゃんと親父から許可もらってきた。

 こっからはオレらタービンズも全力で協力してやるぜ。

 ともかく交代だ。そいつらを休ませてやりな』

 

『すんません!テメェら、休憩だ!』

 

『『『はぁ~~~~っ』』』

 

鉄華団の面子がイサリビへと戻り、代わりにハンマーヘッドからタービンズのモビルスーツとモビルワーカーが出撃する。

周辺のデブリを集めてデビルガンダムのところへ持っていき、デビルガンダムから排出された金属部品を組み立て始める。

 

『……だいぶ形になってきたな。まだまだ先はなげぇが、とんでもねぇ早さだ』

 

『えぇ。姐さん方がまとまった部品の状態で吐き出してくれるからです。

 手順書通りにくっつけてきゃいいんだからオレら馬鹿でもなんとか作業ができる』

 

名瀬は一角に集められたリアクターの団子ではなく、宇宙に浮かぶ巨大な建造中の物体を見て思わず感嘆の息を漏らす。

リアクターは宝の山だが、今の鉄華団にとってはあくまでオマケだ。

彼らが組み立てている巨大建造物こそが彼らの計画の要であり鉄華団の新たな拠点となる。

その存在はまだ誰にも知られていない。それが何かは誰にも知られてはいけない。さもなくば欲深い者が必ず権力や暴力を使って奪い取ろうとするだろう。

だがあまりに巨大だからこそいつまでも隠し通すことはできない。だったら気付かれる前に完成させるしかなかった。

 

『生活物資とガスとオイルも一通り積んできた。受け取りに来てくれ』

 

『ありがとうございます。料金の方は……』

 

『わかってるよ。これまでとこれからの分もまとめて、リアクターと物々交換だな?

 だが換金の手間賃として多めにもらってくぜ?』

 

『もちろんです。ひとまず10基でどうですか?

 予定より長引いて出費がかさむようなら都度相談で』

 

『……ポンと2桁を出すか。今んとこどんだけ拾ったんだったか?』

 

『48ですね。ダンナがいない間に運よく大群と出くわしまして。

 ですが、コイツに組み込んで使う分も考えればあと50は欲しいところです』

 

『まったく、贅沢になっちまったなぁテメェらも』

 

(ーー!)

「名瀬、おかわり」

 

『……へいへい。お前ら、たらふく食わせてやりな』

 

『『『はぁ~~い』』』

 

それからまた数時間……いやローテーションを組んで数十時間働き続けた鉄華団とタービンズは揃ってダウンし、しかしヒノカミとデビルガンダムはそれからも一人と一機で黙々と作業を続けていた。

確かにオルガたちも、今までヒノカミが休憩したり食事をしているところをあまり見たことはなかった。

だがそれはただのパフォーマンスであり、本当は食事も睡眠も一切必要ないのだとようやく知らされた。こうして証明されてしまえば嘘と笑い飛ばすこともできなくなった。

 

合間にギャラルホルン火星支部の要請で火星近郊の海賊討伐任務をこなしたりしながら、ついに作業開始から1年以上が経過した。

努力のかいあってデブリ帯のデブリは著しく減少し、ようやく計画の第一段階……彼らが作っていたものの『ガワ』が出来上がった。

これなら当初の予定よりも早く計画が完遂できるだろう。ここからが正念場だと気合を入れなおした鉄華団とタービンズ。

 

しかしそこで火星から緊急連絡が届く。

 

「マルバから?何があった?」

 

「ハーフメタルの採掘場で、地中から妙なモンが見つかったそうです。

 ガンダムフレームとモビルワーカーもどきだとか」

 

「……モビルワーカー『もどき』?」

 

「あぁ。えらく古くて、ガンダムフレームと一緒なら多分厄災戦時代のモンらしい。

 しかもおんなじような反応がいくつもあって、その奥にはさらにデケェ何かがあるとか。

 その時代を生きてた姐さんならコレが何か知ってんじゃねぇかってよ」

 

オルガはマルバから送られてきた画像データを端末に表示しヒノカミに渡す。

 

 

「…………っ!?」

 

 

直後、ヒノカミは音を立てて立ち上がった。

 

「姐さん?」

 

「マルバに即刻作業を止め、採掘場から全員を避難させろと命じろ!大至急じゃ!!」

 

「はぁ!?」

 

「クーデリアとマクギリスにも連絡を取れ!

 この場はタービンズに任せ、我らも作業を中断し火星に戻る!」

 

「っ!?そこまでのヤマなんですかい!?」

 

 

「コイツは『モビルアーマー』……厄災戦の生き残りじゃ!」

 

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