『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第19話 モビルアーマー

 

モビルアーマー。

それは厄災戦を象徴する最凶最悪の殺人兵器のことだ。

 

当初は人間同士が敵国を滅ぼすために作り出した、AIを搭載した無人兵器だった。

しかしいつしか暴走し、敵味方問わず全ての人類を滅ぼすことだけを目的とした化け物へと変貌した。

ただひたすらに効率よく人間を殺戮する方法を突き詰め進化していったモビルアーマーにより当時の人口のおよそ1/4、数十億もの人間の命が奪われた。

そしてモビルスーツとは、モビルアーマーを倒すために作り出された兵器なのだ。

ガンダムフレームが悪魔の名を与えられたのはデビルガンダムの影響だけではない。

彼らが倒すべきモビルアーマーに天使の名が与えられていたからだ。

 

 

 

「プルーマのタイプと厄災戦時代のこの地区での交戦記録から、このモビルアーマーは『ハシュマル』であると断定した」

 

ヒノカミがデビルガンダムに記録された当時のモビルアーマーの戦闘映像を再生する。

会議室に集められたクーデリア、マルバ、マクギリス、オルガと鉄華団たちがその映像をじっと見ていた。

 

「……なんつぅバケモンだよ。しかも手下の量産に自己修復だぁ!?

 こんなもんがクリュセのすぐそこに埋まってたってのか!?」

 

「300年前にはこのような恐ろしい兵器が、世界中を闊歩していたのですか……!」

 

「でもさ、なんで今まで誰も気づかなかったの?」

 

「ハーフメタルはエイハブ・ウェーブを遮断する。

 故にギャラルホルンでもハシュマルのリアクターを検知できず、ハシュマル自身も周囲のリアクターを検知できない。

 どうやってあの地に埋もれ機能停止していたのかはわからないが、あの地だったからこそ奇跡的に今日まで発覚しなかったのだろう」

 

「じゃが、この機体は300年前に撃破されたことになっとった。

 ……あの馬鹿どもめ、撃破が手間だから隠蔽しおったな」

 

ヒノカミは当時にハシュマル撃墜の虚偽報告を上げた者の顔を思い出し青筋を浮かべる。

だがこれはギャラルホルンの怠慢でもあるだろう。

何しろ300年あったのだ。世界中をしらみつぶしにしてでもモビルアーマーが残存していないか捜索しておいてしかるべき。そうすれば撃破が難しいにしても封印処理くらいはできたはずだ。

 

恨み言を言っても仕方ないと頭を振るう。

とにかく今はどうやってモビルアーマーを完全に破壊するか。必要なのは戦力だ。

 

「マクギリス。バクゥはどうなっている?」

 

「すまないが、治安維持を優先したからな。

 まだ解析と再設計の途中で預かっている機体はバラバラだ。急ぎ組み立てさせても良いが?」

 

「1機あっても意味がなかろう。

 あーくそ、こんなことになるなら儂らで増産しとくんだったわい」

 

「僕らもそんな余裕なかったし、マクギリスさんの戦場はほとんど宇宙でしたからね……地上用兵器を後回しにするのは仕方ないですよ」

 

ギャラルホルン火星支部に対し、いずれ地球支部がいやがらせをしてくる未来は目に見えていた。

そして何が一番堪えるかと言えば、エイハブ・リアクターの供給停止だ。治安維持組織として戦力不足は死活問題となる。

なので鉄華団からリアクターを必要としないバクゥの最後の一機をマクギリスに譲った。

いずれ量産し火星地表の戦力をこちらに置き換える計画を立てていたのだが、まさかこんなに早く必要になる事態が来るとは誰も予想していなかった。

 

「……そんで、セブンスターズの返答は」

 

「あぁ。伝えた通りで間違いない」

 

もしマクギリスがまだギャラルホルンで成り上がるつもりがあったのなら、情報を隠蔽し自分たちだけで対処して己の功績にしようとしただろう。

だが今の彼はすでにギャラルホルンを見限っておりそこでの評価などどうでもいい。

むしろ火星の英雄という偶像を纏う今は何よりも民の安全を優先すべきである。

だからこそ、火星でモビルアーマーが発見されたことは地球支部にしっかりと連絡した。そして応援も要請した。しかしその回答は。

 

「色々と言葉を並べていたが、要約すると『火星支部だけでなんとかしろ』だったよ。

 連中の思い通りにならない火星支部の……私の力を削ぎたいのだろう。

 討伐に失敗して死んでくれれば儲けものと思っているのかもしれないな」

 

「愚かな……失敗したら火星の住人は全滅じゃぞ!?

 モビルアーマーの脅威を理解しておらんのか!?」

 

「ねぇオルガ。ギャラルホルンってモビルアーマーを倒すための組織じゃなかったの?」

 

「連中自身はそう思ってなかったらしいな。

 アンタが見限るのも無理はねぇぜ、マクギリスさんよ」

 

「だがラスタル・エリオンだけは極秘裏に援軍を送ると連絡してきた。

 小隊規模だが、その中には常に奴が侍らせていた秘蔵のパイロットの名前があった。

 少なくとも奴だけは危機感を持っているのだろう」

 

ラスタルは事実上のセブンスターズのトップ。圏外圏を守護するアリアンロッド艦隊の長だ。

だがその彼であっても、セブンスターズの決議に表立って背くことはできない。

イオクとカルタはラスタルに賛同したが、カルタは父親が病に伏せているからこその代理に過ぎない。

結果としてラスタルとイオクの二票に対し他の三家が反対票を投じたため、火星への救援は却下となった。

ゆえにラスタルは他の家に気付かれぬ程度のわずかな手勢を送り出したのだ。

 

マクギリスからタブレット端末を受け取ったヒノカミは、自軍の戦力を再確認する。

 

鉄華団からはデビルガンダムと、地球の任務を終えた後正式に改修したバルバトスルプスとグシオンリベイクフルシティ。発掘されたばかりのガンダムフレーム……『フラウロス』も現在急ピッチで修復が行われている。他はブルワーズから奪ったマン・ロディの改修機が数機。

ギャラルホルン火星支部からはマクギリスのグレイズリッターと彼の忠臣の石動とやらが駆るヘルムヴィーゲ・リンカー。他はすでに旧式になりつつあるグレイズ部隊。

ラスタルからの援軍は最新鋭機のレギンレイズ。噂の秘蔵のパイロットのカスタム機らしい。他はグレイズリッターが数機と……。

 

「……『キマリス』?ガンダムキマリスか?」

 

「そのようだ。そのパイロットの『ヴィダール』という男も謎に包まれている」

 

「ふむ、流石に弱いということはあるまいが……」

 

ラスタルからの援軍はありがたい。しかしまだ戦力が足りない。

これを覆すにはデビルガンダムも本気を出す必要がある。

 

今日まで身内以外には可能な限りデビルガンダムの力を秘匿してきた。例外は討伐してきた海賊と地球で協力した蒔苗だが、前者は全員奴隷に落としたし、後者は約束通り今も秘密を守り続けている。

だがラスタルに把握されればセブンスターズ全体に知れ渡るだろう。

デビルガンダムの存在を覚えている者はいないだろうということだが、思い至れば『その機体は英雄の末裔たる自分たちが所有するべき』と主張しだすかもしれない。

あるいは物理的に存在を抹消しようとするか。いずれにしても大きな争いの引き金となりかねない。

 

(ならばいっそ援軍なぞ……いや、やはり手は必要か)

 

故にラスタルの援軍の前でデビルガンダムの全力を見せたくはないのだが、彼らの力も借りなければ被害は避けられない。

デビルガンダムは単独でモビルアーマーを撃破した実績があり、今回も可能ではあるだろうが、それはかかる時間と伴う二次災害を度外視しての話だ。

クーデリアとマクギリスが共同で出した緊急避難勧告で採掘場から半径十数kmは無人地帯となっているが、それ以上の破壊を引き起こしかねないのがモビルアーマーという存在。

鉄華団とギャラルホルン火星支部の力を借りてもまだ犠牲が出るだろう。

目指すは死者ゼロの完全勝利。

300年前に滅んだはずの過去の遺物が今を生きる命を奪うなど許せるものか。

 

「援軍の到着は明日じゃったな。

 一応大まかな作戦は頭に浮かんでいるが、説明は彼らが合流してからにしよう」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

そして翌日。

 

「あの時一緒にウチに来た人じゃん」

 

「……そういやキマリスはボードウィンの乗機じゃったな」

 

「何のつもりだ、ガエリオ」

 

『……誰のことだ?オレの名前はヴィダールだ』

 

「なぁクランクさんよ、ギャラルホルンの間で仮面って流行ってんのか?」

 

「そんな事実はない……はずなのだが、な」

 

「やはりマクギリスさんのご友人なのですね。

 きっと趣味嗜好も似ておられるのでしょう」

 

「ぬぅ……しかしフルフェイスマスクも中々良いな……」

 

「おい、同類がここにもう一人いんぞ」

 

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