『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第20話 対モビルアーマー共同戦線

 

「ヴィーンゴールヴで何度か顔は合わせたが、こうして話すのは初めてかな?

 マクギリス・ファリドだ」

 

「ジュリエッタ・ジュリスです。

 ラスタル様からは『モビルアーマーの撃破を最優先に』と命じられています。

 火星は貴方の管轄なのでひとまずはそちらの指揮下に入ります」

 

ジュリエッタは差し出されたマクギリスの手を握り返さなかった。

マクギリスはギャラルホルンの権威を失墜させた男。彼女の敬愛するラスタルの敵だ。

いや、『敵だと思っていた』。ラスタル自身も今のマクギリスの考えを読み切れずにいるという。

 

ラスタルは当初、マクギリスはギャラルホルンの掌握を狙っていると推測していた。

だが彼はイズナリオ・ファリドの失態で自身の繰り上がりを狙うのでなく、自身も含めた全ての陰謀を暴露することで自ら権力闘争から身を引いた。

火星で勢力を蓄えるつもりかと思いきや、赴任してからはひたすらに火星の治安維持に尽力し少なくない労力と費用を支払っている。代わりに得られたのは火星の民からの支持と名声だけ。

今回もモビルアーマーの発見を隠すことなく、確実に撃破するために地球支部への協力を呼び掛けている。

マクギリスの暴露により地位を脅かされた他のセブンスターズが彼の要請を突っぱねると決めた時、ギャラルホルンを滅ぼそうとしている真の敵はこの老害共ではないかとラスタルは本気で考えたほどだ。

故にラスタルは、忠臣であるジュリエッタに『マクギリスを見極めてこい』と指示し送り出した。

話を聞きつけたボードウィン家の御曹司が同行を願い出たのは予定外だったが。

彼はマクギリスの友人だったと言うし、マクギリスの心を揺さぶり感情を引き出すことができるかもしれない。

何より『モビルアーマーと戦わずして何がセブンスターズか』と豪語する彼は、少なくとも現ボードウィン家当主である父親よりは見込みがあると、素性を隠しての同行を許可した。

 

ラスタルより受けた指示を完遂すべく、ジュリエッタはずっとマクギリスを鋭く睨み続けている。

……『見極めよ』とは『物理的にしっかり見ろ』というわけではないのだが。

 

「ですが、使い潰されるつもりはありません。

 そちらの提示する作戦が従うに値しないものであれば独自に行動しますのでそのつもりで」

 

「それならば何も心配はいらないな。

 何しろ鉄華団の軍師はモビルアーマー討伐の第一人者だ」

 

「はぁ?鉄華団とは件の警備会社でしたよね?

 民間人に作戦の立案を委ねると言うんですか?」

 

「まずは話を聞いてみたまえ。反論するならばそれからだ」

 

「……わかりました」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

鉄華団、ギャラルホルン火星支部、ラスタルからの援軍の全員が集められた場で、ヒノカミは改めて厄災戦当時のハシュマルの戦闘映像を再生した。

映像が終わったところで正面のモニターに戦闘映像の切り抜きと採掘場周辺の地図を並べて表示する。

 

「これが、採掘場地下に埋まっているモビルアーマーである。

 今日までに再調査し、間違いなくこのハシュマルタイプであると断定できた。

 言っとくが、これでもモビルアーマー全体で見れば強さは中の上程度。

 子機はいても他のモビルアーマーはおらんから連携される心配もないし、厄災戦当時の基準で言えば攻略難易度はかなり低い。

 かといって気を抜いて勝てる相手でもないがな」

 

「「「…………」」」

 

「頭部のビーム砲は最悪無視してもいい。数発程度なら直撃しても装甲が防いでくれる。

 元々、モビルスーツのナノラミネートアーマーはモビルアーマーのビーム兵器に対抗するためのものじゃしな。

 故に警戒すべきは尻尾と脚、そして脚裏より発射される弾丸じゃ。

 そしてハシュマルタイプは機動力が非常に高い。その分強度は低めじゃが、それでも並の銃弾では全て弾かれる。動きが速過ぎて強力な砲を当てるのも難しい。

 よって近接戦闘を得意とする少数精鋭でモビルアーマーに、他の機体で子機のプルーマに当たる分担作戦を取る」

 

「ってことはオレは除け者かよ姐さん!

 せっかくの新・流星号の初陣だってのに!」

 

「初陣だからこそじゃよ。いきなり危ない橋を渡らせられるか。

 フラウロスは最後方から、その狙撃能力を生かし包囲網を抜け出そうとするプルーマを撃ち落せ。

 鉄華団からモビルアーマー側に参加するのはバルバトスとグシオンの2機じゃ」

 

「わかった」

「了解だ」

 

「他の鉄華団の機体は火星支部と連携し包囲網を形成・維持しプルーマの殲滅に当たれ。一機たりとも逃すな。

 鉄華団の指揮はクランクにお願いする。副官はアイン、補佐はユージン」

 

「了解した」

「ハッ!」

「任せな!」

 

「火星支部の部隊の指揮は当然マクギリスに」

 

「いや、私はモビルアーマーの方に回らせていただきたい。

 セブンスターズとして誰よりも前に出てこの身を張らねばならん。

 部隊の指揮は石動に任せる」

 

「……グレイズリッターでは心許ない。石動と乗機を交代しヘルムヴィーゲで出ろ。

 そして援軍の方々は我々との連携は難しかろう。

 故に独自裁量に任せる。包囲網の内側で遊撃として動いていただきたい。

 ただし、ヴィダール殿はモビルアーマー戦へ。

 機動力と突破力に優れたキマリスは、同じく機動力に優れたモビルアーマー討伐のために作り出された機体じゃからな。

 ハシュマルタイプ相手ならば大いに活躍できよう」

 

『望むところだ』

 

「モビルアーマーとプルーマの分断は儂が担当する。

 三日月、昭弘、マクギリス、ヴィダール殿はこの地点で待機し、他の機体の連合軍で包囲網を形成。

 作戦開始と同時に儂がここまでモビルアーマーだけを連れてくる。

 後はそれぞれで各個撃破。これが作戦の概要じゃ。何か質問は?」

 

援軍の面々は目の前の小娘が何者かとか、どうやってモビルアーマーを誘導するのかなど、聞きたいことはいくつもあった。

しかし鉄華団のみならずギャラルホルン火星支部の面々も彼女に全幅の信頼を寄せているようで、彼女の発言に一切に疑問を持っていない。

そして本当にモビルアーマーを分断できるというのならこの作戦でほぼ問題ないだろう。

 

「はい」

 

しかし沈黙する一団の中で、一番前に座っていたジュリエッタが手を挙げる。

 

「何かな?」

 

「私もモビルアーマーとの戦いに参加させていただきたいのですが」

 

「ふむ……理由を聞いても?」

 

「私は、モビルアーマーを倒しに来たのです」

 

そしてモビルアーマーを討伐した功績をラスタルへと持ち帰る。それが彼女の参戦した理由だ。

ギャラルホルンにおいて、モビルアーマー討伐者には七星勲章が授与される。

マクギリスが勲章を手に入れ席次を上げることが目的かもしれないとラスタルから聞いていた彼女は、マクギリスが強引にモビルアーマーとの戦いを望んだことで警戒し対抗しようとした。

 

「……レギンレイズとやらのスペックなら、ギリギリついていけるか。

 助力いただけるのだから可能な限り意向は汲み取るべきであろう。

 しかし命の保証はない。覚悟はよろしいか?」

 

「無論です。ですが死ぬつもりはありませんので」

 

「よくぞ言った。皆も聞いてくれ。

 散々脅したが儂はこの戦いで死者を出すつもりなどない。

 こんな過去の馬鹿どもの尻ぬぐいで諸君らの未来が奪われるなどあってはならない。

 生きるために、死力を尽くせ。以上じゃ」

 

「「「了解!」」」

 

「作戦決行は明朝、各々決戦に備えよ。解散!!」

 

少女が手を叩くと、鉄華団とギャラルホルン火星支部の面々は一斉に散っていった。

取り残された援軍の一団があまりの動きの速さにしばし呆然としているとそちらにヒノカミが近づいてきた。

 

「ヴィダール殿。念のためお主のキマリスを調整しておきたい」

 

『何故だ?機体は万全にしてきたつもりだが』

 

「おそらく足りぬ。ガンダムタイプは普段リミッターがかかっとるんじゃ。

 モビルアーマーと対峙するとそれが自動的に外れる。全力で怨敵を滅ぼすためにな」

 

『なんだと!?』

 

「ほとんど暴走みたいなもんじゃ。

 前もってその前提で処置しなければ機体が出力に耐え切れず自壊し、そうでなくともじゃじゃ馬すぎて扱い切れんくなる。

 別のリミッターを設定し抑え込まねばならぬ。

 当人が望むのでバルバトスにはリミッターはつけておらんが、やはり推奨はできん」

 

『……頼む。だが教えてほしい。

 モビルアーマーのことと言い、お前は一体どこでそれほどの知識を……?』

 

「他人からすれば自画自賛にも聞こえる話じゃ。できれば口にしたくない。

 この件が片付いた後でマクギリスにでも聞いてくれ。儂を除けば奴が一番詳しかろう」

 

『……わかった』

 

 

そして一夜が明け、決戦の時。

300年ぶりのモビルアーマー討伐戦が開始される。

 

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