『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第21話 英雄たちの戦場

 

『いいか、絶対にラインを超えるなよ!?』

 

『本当にこれ以上近づくと反応するのか?こんなに離れているのに?』

 

『姐さんは嘘つかねぇよ!』

 

『全員持ち場に着きました!』

 

「よし、いくか」

 

(ーー……!)

 

通信を受けてヒノカミが乗ったデビルガンダムが動き出す。

彼らは今、戦場を一望できる上空に浮かんでいた。

 

デビルガンダムにはリアクターが積まれていない。

故に他のモビルスーツより近づいてもモビルアーマーは反応しない。

限界ギリギリまで近づいて、眠っている内に全力の一撃を叩きこむ。それも一考はした。

しかしヒノカミの制限に伴い著しく出力が落ちているデビルガンダムでは一撃でモビルアーマーを粉砕できる保証がない。

倒しきれなければ衝撃により起動した手負いのモビルアーマーは生存本能に従い狂ったように暴れ出すか脇目もふらず逃走するか。

同時にプルーマが方々に散らばり親機を修復するための資材集めを始めるだろう。逃げに徹されると少数による穴だらけの包囲網ではカバーしきれない。

そして何より、モビルアーマーを撃破できぬ威力の一撃でもこの採掘場に致命的な破壊を引き起こすだろう。

ハーフメタルは火星の住民が経済的な自立を果たすための貴重な足掛かり。可能な限り被害は小さくしたい。

 

よってヒノカミとデビルガンダムが取った作戦とは。

どうやってモビルアーマーのみを指定のポイントまで運び出すかと言えば。

 

 

 

「ハーーーシュマーーーーールくーーーーーーーん!!」

 

(ーーーーーーーー!!!)

 

 

 

遥か上空から重力を速度に変えてモビルアーマー目掛けて突撃。

リアクター反応ではなく爆音と衝撃波に反応してモビルアーマーの目に光が灯る。ビームを放出し瓦礫を吹き飛ばして、300年ぶりにモビルアーマーが立ち上がる。

同時に周囲に埋まっていたプルーマもまた再起動。

しかしデビルガンダムは速度を緩めることなく、両腕とサブアームを大きく広げ突っ込む。

 

 

 

「あーーーそびーーーーましょーーーーーーーーーっ!!!!」

 

(ーーーーーーーーーー!!!!)

 

 

 

そのまま4本の腕でモビルアーマーにしがみつき進行方向をほぼ90度転換、スラスターの出力を緩めず速度を維持したまま2機は遠方へと飛び去った。

 

 

『……マジでやりやがった』

 

『なんつー脳筋だ』

 

『ぼさっとするな!作戦開始だ!!』

 

親機を連れ去られたプルーマが追いかけようと動き出す。

プルーマは単機でモビルスーツに匹敵する戦闘力を持つ。数も十機以上と決して少なくない。

プルーマの殲滅を担当するモビルスーツ部隊は油断なく、一斉に前に出て包囲の輪を狭めた。

 

 

 

――――……

 

 

 

 

キィィィイイイン……

 

 

『来たぞっ!』

 

峡谷の隙間、モビルアーマーには狭くて動きづらい場所で待つ5機のモビルスーツ目掛けて採掘場の方角から何かが突撃してくる。

近づくほどにその正体がはっきりと見えてくる。

戦闘映像に映っていた通りの姿のモビルアーマーに、異形のモビルスーツが絡みつくようにしがみついていた。

二機はまるで隕石でも落ちるかのような速さで彼らに接近してくる。

 

『……あれはどうやって着地するつもりなのです?』

 

『何も考えてないんじゃない?』

 

『……総員、散開しろ!』

 

 

ドガァァァァァァン

 

 

寸前でマクギリスが叫び5機が即座に着弾予想地点から距離を取る。

接地した2機は地面を抉りながらまっすぐに進んでいき、崖の岩肌に激突した。

轟音と共に瓦礫が崩れ落ち、墜落した何かはその下に埋まってしまった。

 

『ほ、本当に減速しなかったぞ……!?無事なのか!?』

 

『姐さんなら無事だよ。モビルアーマーは知らない』

 

『いっそこれでくたばってくれりゃいいんだが……』

 

 

ギシャァァァァアアアアアッ!!

 

「おっとっと。連れて来たぞい」

 

 

モビルアーマーは翼を大きく広げて瓦礫と土煙を払うと共に鳴き声のような駆動音を上げた。

そして今の動きで弾き飛ばされたらしいデビルガンダムが身をひるがえして5機の前に着地する。

 

『無事ですね……どっちも……』

 

『当然だとも。では始めるとしよう。

 ……あぁ!私は今、アグニカが経験した戦場に!

 いや、アグニカと同じ戦場にいる!!』

 

『やっぱり綺麗だなぁ。地球で見た鳥みたいだ』

 

『ふん!煮ても焼いても食えねぇなら鳥以下だ!』

 

「げらげらげら!ならばスクラップにしてデビルガンダムの餌にでもするか!」

 

(ーー!--!)

 

『『…………』』

 

300年の時を超えて蘇った死を告げる天使を目の前にしても気の抜けるような会話を続ける火星の住民たちに、まだ常識が壊されていない二人は驚きを通り越して呆れ果てていた。

 

ギィィィィーーーーッ!

 

しかしモビルアーマーの奇声を聞き、呆けている場合ではないと身構える。

 

『そうだ、オレは何のためにここに来た!

 ギャラルホルンの正義を……モビルアーマー討伐を成すためだろうが!』

 

『細かいことは、どうでもいい!

 すべてはラスタル様のために!!』

 

「気勢はいいが、気負ってしくじるなよ!」

 

改めてもう一度忠告をして、デビルガンダムが前に出る。

しかし脚部は変形させず二足歩行のままで、その移動速度は先ほどまでとは比べ物にならないほど遅い。

当然、モビルアーマーは迎撃しようとする。

ここに追いやられるまでの一連の出来事で、モビルアーマーの敵意はデビルガンダムに集中していた。

真っ先に排除すべくテイルブレードを射出し生命反応を発する敵機の胴体部に撃ち出す。

 

ガキィン!

 

その攻撃をデビルガンダムは腕で受け流し弾いた。メインアームの方でだ。サブアームは収納している。

必殺の攻撃を防がれたモビルアーマーは怒りも驚愕も見せずただ淡々と攻撃を加え続ける。

しかし伸縮自在変幻自在のテイルブレードによる攻撃は全て躱され、弾かれ、いなされる。デビルガンダムは一歩も後ろに引かない。

 

この作戦におけるデビルガンダムの役割は囮。ゲームで例えるならボスからのヘイトを集めるタンク役だ。

デビルガンダムは自身のエネルギーのほぼ全てを防御面、フェイズシフト装甲と自己再生に注ぎ込んでおり、これならば苛烈な攻撃を受けてもまず破壊はされない。

だが正面から攻撃を受けては弾き飛ばされてしまう。それでは盾にはなれない。

だから彼女の技術で補う。歴戦の武闘家としての動きをモビルトレースシステムによって寸分の違いなく再現し、直撃を避け続ける。

 

ギィィアァァァァァッ!

 

テイルブレードだけでは通じぬならばと、モビルアーマーは高速で大地を滑るように移動して接近し巨大な脚部を振り下ろす。

 

 

「………ぉぉぉ」

 

 

デビルガンダムは攻撃を寸前で完全に見切って躱し、逆に両腕で地面に叩きつけられた脚部を抱きしめるように掴む。

 

 

「ぉぉぉおおおあああああああああっ!!!!」

 

(ーーーーーー!!)

 

 

一度引っ張って巨体のバランスを崩させ、防御に回していた機体のエネルギーを一瞬だけ全てパワーに回す。

デビルガンダムはモビルアーマーを持ち上げて渓谷の壁面に叩きつけた。

 

『はぁぁぁっ!』

『うぉりゃぁぁあっ!!』

『受けよっ!』

 

そして無防備になったモビルアーマーに、三機のモビルスーツが接近し各々の武器を叩きつけた。

 

 

ギィアァァオォォォォ----ッ!

 

 

残念ながら装甲の表面を凹ませたくらいで大したダメージにはならなかった。だが確かにダメージが通った。

直後3機は反撃を受ける前に距離を取る。

 

『チィッ、装甲の隙間を狙うはずが!マジで暴れ馬になってやがる!』

 

『ホントだ。パワーも出てるけどブレも大きいや。さっさと慣れないと』

 

『どうしたお前たち、ぼんやりと立って眺めているだけか?

 戦う覚悟がないなら早々に撤収したまえ』

 

『っ!?ちょっとタイミングをつかみ損ねただけです!馬鹿にしないでください!』

 

『やれやれ、頼もしいやら恐ろしいやら。

 ……懐かしいな、こういうの』

 

「げっげっげ、結構結構。

 この調子で削り切るぞ!最後まで気を抜くな!」

 

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