『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第22話

 

作戦開始からおよそ1時間。採掘場に残されたモビルスーツ部隊はなんとか犠牲無くプルーマを撃退した。

後方支援担当だったフラウロスをはじめとする、損傷が少なくまだ戦える機体数機で部隊を再編成し、今もまだモビルアーマー本体と戦い続けている勇士たちの下へと急ぐ。

自分たちでは足手まといになるとわかっている。戦いに参加するつもりはない。

だがもし万が一の事態に陥っていれば自分たちが彼らの肉壁となり、彼らを逃がすための殿になる覚悟を持って走る。

 

そして辿り着いた彼らが目にした光景は。

 

「へいパぁス!」

 

ガァンッ

 

『あいよ』

 

ゴォン

 

「もいっちょお!」

 

ボコォ

 

『……なんか楽しくなってきた』

 

ズガンッ

 

モビルアーマーの周囲を高速移動しながらその動きを妨害するかのように交互に殴打するデビルガンダムとバルバトスだった。

 

最初はデビルガンダムが盾役としてどっしりと構え敵の攻撃を一手に引き受け、他の機体はその隙を突く形で戦っていた。

だが戦いを続ける内に三日月の操縦技術が急激に向上し、バルバトスの戦闘能力がモビルアーマーに追いついた。

その結果デビルガンダムに注がれていたモビルアーマーからのヘイトが、猛攻を加えるバルバトスに向き始めた。

このままでは今の戦法を維持できず、しかし攻撃役に『手を抜け』などと矛盾に満ちた指示をするわけにはいかない。

ならばとヒノカミは戦い方を変え、三日月と二人がかりでモビルアーマーをボコボコにする方針に切り替えた。

 

『……くそっ』

 

そして先程まで共に戦っていた他の4機のモビルスーツは、もう彼らの動きに追いつけない。

モビルアーマーを前に暴走しないようリミッターをかけたガンダムフレームと、最新鋭機であろうと所詮普通の範疇を脱しないモビルスーツでは、彼らに並び立つことすら出来なかった。

それどころか時折モビルアーマーが放つビーム兵器に対しデビルガンダムに庇われている始末。

まぁこれはデビルガンダムが敵のエネルギーを吸収しようとする振る舞いが結果的にそのような形になっているだけなのだが。

 

(……オレはまた、何もできないのか!?

 今度こそマクギリスの、友の力になると誓い火星にまで来たと言うのに!)

 

決定打はないが、2機の悪魔は少しずつ天使を追い詰めている。

どちらかが失敗しなければいずれモビルアーマーは討伐されるだろう。

だからここでヴィダールが何を成したとしても大した意味はない。失敗すれば自分が死ぬか足手まといになるだけ。

 

『うぉぁぁぁぁああああっ!!』

 

だが動かずにはいられなかった。

キマリスは突撃槍を構えて脚部を展開しスラスターを全力で噴かせ、悪魔たちを追い越し前に出た。

槍の先端がモビルアーマーの鉤爪の中央、砲弾を撃ち出す寸前の砲口に突き刺さった。

 

ギィィィイイイイッ!!

 

モビルアーマーの機体の内側で砲弾が誘爆し、怪鳥が片方の膝をつく。

 

『離すものかぁーーっ!!』

 

キマリスは衝撃で外れた槍を露出したモビルアーマーの脚部装甲の隙間に突き刺し片脚を封じ込めた。

 

『がぁぁぁああーーーっ!!』

 

奇しくも偶然、そして同時に同じ覚悟を抱いて飛び出していたグシオンが遅れてモビルアーマーにまでたどり着く。

リアスカートを巨大なペンチに変形させていたグシオンは、バックパックに内蔵された隠し腕も展開して4本の腕でモビルアーマーのもう一方の脚部を力の限り締め付ける。

 

『潰れろぉぉぉーーーーっ!!!』

 

これで両脚が封じられた。

組み付く2機を高速移動で振り落とそうと、モビルアーマーが両翼のスラスターに火を灯す。

 

「させるかぁ!」

『いい加減に……!』

 

しかし上空から飛翔したデビルガンダムが貫手を、バルバトスがソードメイスを翼の付け根に深々と突き刺した。

 

 

ギィァァアオォォーーー!!

 

 

機動力を完全に奪われ、モビルアーマーが地に臥した。

人工知能が埋め込まれている頭部が無防備に大地に投げ出される。

 

『っ!今です!!』

 

好機と見たレギンレイズが2機のガンダムに遅れて動き出す。

装備したパイルを正面に構えてモビルアーマーの頭を目掛けて全速力で突進する。

 

 

(ビームを撃たれても一撃ならナノラミネートアーマーで無視できる!勝っ……!?)

 

 

だが彼女は功を焦りすぎていた。まだモビルアーマーには強力な武装が残っている。

レギンレイズのモニター一杯に迫りくるテイルブレードが映し出された。

反射的に速度を緩めるが、回避は間に合わない。

 

 

ガキィィン!

 

 

『なっ……!?』

 

『世話が焼ける……!』

 

しかし刃が突き立てられる寸前、レギンレイズの後ろから追いかけていたヘルムヴィーゲがバスターソードを投げつけた。

テイルブレードは大きく弾き飛ばされモビルアーマーまでの道が完全に開けた。

 

『使え、ジュリエッタ・ジュリス!』

 

『っ……はぁーーーーーーーーーーっ!!!!』

 

レギンレイズは目の前の大地に突き刺さったバスターソードを掴み、構え直してもう一度スラスターを噴かせる。

武骨で巨大な刀身が、ビームを撃ち出そうと開いていた砲口に深々と突き刺さった。

 

 

ギィアァァ……アオォォォォ……--……

 

 

断末魔のような駆動音を最後にもう一度鳴らし、ついにモビルアーマーは完全に沈黙し崩れ落ちた。

 

 

『……たお、した?』

 

 

「どれ……うむ、完全に死んだな」

 

『昭弘、大丈夫?』

 

『ぐっ、あぁ、すまねぇ』

 

『君も随分と無茶をしたな、ヴィダール』

 

『あぁ……我ながら大人げない感情に振り回されたものだ』

 

『フッ、男というものは中々大人になり切れないものさ』

 

デビルガンダムがモビルアーマーの頭部に近づき、手を触れて完全な機能停止を確認する。

モビルアーマーの足元にいたため倒れ込んだ残骸の下敷きになったグシオンとキマリスが、バルバトスとヘルムヴィーゲにより引きずり出される。

全員の無事を確認したところで、ジュリエッタが尋ねる。

 

『……マクギリス・ファリド。何故私を庇ったのです?』

 

『君は作戦を聞いていなかったのか?

 誰一人犠牲を出さぬこと、それがこの戦いにおける完全勝利だ。

 私はそのために最善の行動を取ったに過ぎない』

 

『……礼は、言っておきます。

 ですがこれで七星勲章は私の……ラスタル様の物です』

 

 

 

『『……は?』』

 

 

 

彼女の発言に疑問の声を返したのはマクギリスだけでなく、ヴィダールもだった。

 

『……あぁ、そういえばあったな。勲章などというものも。

 妙に功を焦っているなと思っていたが、そんなくだらない理由だったのか』

 

『なっ!?』

 

『……ジュリエッタ、君は勘違いしているぞ』

 

『ヴィダール、アナタまで!?どういうことですか!?』

 

 

 

『オレたちはセブンスターズの協議の決定に背き、極秘裏にやってきたんだ。

 『火星でモビルアーマーを討伐した』などと表立って言えるはずがないだろう?』

 

 

 

『…………へ?』

 

『『ラスタルの忠臣ジュリエッタ』は火星には来ていない。もちろんモビルアーマーとの戦いにも参加していない。

 ここいたのはギャラルホルン火星支部と鉄華団だけであり、モビルアーマー討伐の功績はこの両組織にのみ付与されるのさ』

 

『はぁっ!?』

 

『セブンスターズが援軍要請に応じなかった時点で功績は全てマクギリスのものになる。

 最初からエリオン公個人にメリットなど無いのだ。

 その上で援軍を送り出すと決めた彼に正義を感じたから、オレは同行を願い出た。

 君もそのつもりで、ギャラルホルンの正義のために闘志をみなぎらせていると思っていたのだが……』

 

『ただのイノシシ娘だったとはな』

 

『~~~~~~っ!!!!』

 

 

考え足らずを指摘され言葉を失い顔を赤くさせるジュリエッタと、小馬鹿にするような笑みを向けるマクギリスと、仮面の上から額を押さえるヴィダール。

三日月と昭弘はなんだかんだと疲労がたまっておりコクピットの中で脱力し目を閉じている。

 

そしてヒノカミはと言うと……。

 

(やはりこの状況でこっそり持ってくのは無理じゃなぁ)

 

今、鉄華団はエイハブ・リアクターを集めている。

そしてモビルアーマーに搭載されているものは特に強力で、できるなら撃破した後で回収できないかと考えていた。

だがラスタルからの援軍がいる。ここでリアクター反応だけがモビルアーマーから離れていけば流石に感づかれる。

鉄華団だけ、せめてマクギリスの息がかかった火星支部の者しかいないならばまだ誤魔化しようもあるのだが。

 

(となれば……)

 

この場でリアクターをデビルガンダムに吸収させてしまうしかない。

しかしそれはヒノカミという生体ユニットを必要としていたデビルガンダムが、生体ユニット無しでもモビルアーマー並の出力を発揮できるようになってしまうことと同義だ。

 

世界の強度が弱く、ヒノカミが全力を発揮できない世界では、ヒノカミはデビルガンダムには敵わない。

仮にデビルガンダムが高出力リアクターを手に入れた後で暴走を始めたら、ヒノカミではもう彼を止められなくなる。

助けを求める声に応えてこの世界にやってきた彼女が、この世界を滅ぼす存在を持ち込んだことになってしまう。

だから300年前にこの世界に来てから今日にいたるまで、デビルガンダムにはリアクターの吸収と解析はさせなかった。デブリの一掃中に見つけたモビルスーツサイズのものでさえ。

 

 

 

「ま、いっか。食っていいぞ」

 

(ーー!?)

 

「いや、もう大丈夫かなって。300年も一緒にいたんじゃぞ儂らは」

 

(ーー!?!?)

 

 

 

厄災戦を終えて長い眠りにつき、地球環境を再生させた後で、ヒノカミを目覚めさせたのはデビルガンダムだ。

もし彼自身がヒノカミから離れる気があるならば、ヒノカミを眠らせたまま独自に行動しモビルスーツ用のリアクターの一つでも手に入れればよい。

いずれ異界にいるヒノカミの本体が状況に気付き対処するだろうが、その前に一定数を集めるか解析して自己増殖で生み出すかすれば彼はこの世界で自由を手に入れることができていた。

 

しかしそうしなかった。

彼は300年間、ヒノカミに寄り添い共に歩むことを選び続けた。

少なくとも彼自身が人類を見限ることはないと信じた。今なら信じることができる。

 

「そんじゃ、あ奴らが気づく前にパパっとやっちまえ」

 

(ーー……)

 

「げらげらげら。そうさな。

 もしお主が意図せず暴走してしまったら……一緒に頭でも下げよう」

 

(ーー!)

 

 

間もなくモビルアーマーのエイハブ・リアクター反応が完全に消失した。

ギャラルホルンの兵士たちは損傷により自壊したものと判断した。

 




能力
・自己再生
・自己増殖
・自己進化
・熱エネルギードレイン
・ビーム湾曲
・転移
・フェイズシフト装甲
・ミラージュコロイドステルス
・デスアーミー軍団生成
・高出力エイハブ・リアクター(New!)
武装
・ビームソード
・ビームクロス
・ガンダムヘッド
・火炎放射
・拡散ビーム砲
・デビルフィンガー
・メガデビルフラッシュ
・ガンマ線レーザー砲


デビルガンダムがこの世界で手に入れたものは『ヒノカミからの信頼』です。
これでデビルガンダムはどんな世界でも、ヒノカミがいない状況でも、鉄血のモビルアーマー並の出力を発揮できるようになりました。
ヒノカミが搭乗した状態での出力もリアクター分上乗せされます。
……まぁこの後で彼をどこかに連れていく話は今のところ考えていませんが。
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