『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第7話

「さて、主らに紹介したかったのはコレじゃ。オールマイト。

 ヒーロー活動で近くまで来ていたので呼び出した」

 

「いや『コレ』って酷いな。

 ……ゴホン。わたしが来た!」

 

改めて二人の前でポージングするオールマイト。

これでも『平和の象徴』とまで言われる日本ナンバー1ヒーロー。

ヒーローオタクの緑谷は脳の血管が千切れそうなほど興奮し、暴君と名高い爆豪も彼なりに姿勢を改める。

 

「貴様にも改めて紹介しておこう。

 儂の弟子、緑谷出久と爆豪勝己じゃ」

 

「よ、よろしくお願いします!!」

 

「しゃっす!」

 

「うん!よろしくね!

 ……すごいね君たち。2年もヒノカミにしごかれてるんだろ?

 指導は的確なんだけどスパルタで有名だからさぁ……」

 

「は、はい!そうだ、サインを!

 色紙……はないから、えぇと……!」

 

「HAHAHA!安心したまえ!

 君たちのことは前もって聞いてたから準備してきたよ!」

 

「サイン入り限定ブロマイド!

 しかも僕らの名前入り!?

 ……家宝にします!!」

 

地面に届くのではないかという勢いで何度も頭を下げる緑谷。

 

「……っし」

 

爆豪は大きな反応はしなかったが、ズボンのポケットにしまう際に少しだけにやけていた。

 

「そこまで喜ぶ姿を見せられると嬉しくはあるが、師としては嫉妬もするのぅ」

 

「あぁあっ!すいませんヒノカミ!勝手に盛り上がっちゃって……。

 でも、ありがとうございます。

 僕らのためにオールマイトを呼んでくださって……」

 

「なに、顔合わせの機会には丁度良いと思うたでな。

 だが今日はそれだけではないぞ?」

 

「うむ!」

 

オールマイトとヒノカミが無言で海に近い開けた場所に移動し始め、緑谷たちはその後ろをついていく。

途中ヒノカミが立ち止まり、二人を手で制した。

オールマイトはさらにもう少し進み、離れた場所で緑谷たちに向き直る。

 

「さぁ……かかってきたまえ!」

 

「「……!?」」

 

「フレイムヒーロー『ヒノカミ』の名において、爆豪勝己の個性の使用を許可する。

 ……ナンバー1ヒーローの力をその身で確かめてみろ。

 そしてナンバー1ヒーローに、今のお主たちの力を見せつけてやれ」

 

ヒノカミが距離を取り、残された二人の前にはファイティングポーズをとるオールマイト。

ようやく状況を理解すると、緑谷は嬉し泣きしながら、爆豪は目と口角を吊り上がらせ前を向く。

 

「「お願い、します!!」」

 

「はじめぃ!」

 

真っ先に駆け出したのは爆豪ではなく緑谷。

幾ら鍛えているとはいえまだ中学生、そして何より無個性。

緑谷の攻撃ではオールマイトには通じないと本人自身が理解している。

だから緑谷は爆豪が攻撃する隙を作るための囮になろうと動く。

 

「やっ!はぁっ!」

 

「うんうん、いい攻撃だ!……そして」

 

「チィ!」

 

「死角からの奇襲……定石だよね!」

 

緑谷が離れた一瞬を狙い爆豪が背後から迫るが、オールマイトは反応して振り返る。

だが爆豪もこの程度で攻撃が通ると思っていない。

 

「眩しっ!そして熱っ!」

 

まず先に閃光、それから爆発を放つ。

ただし爆発は攻撃のためではなく、反動で距離を取るためだった。

 

「うおおおぉっ!」

 

反対側からもう一度迫っていた緑谷が腕を突き出す。

少し目がぼやけているが、全体像くらいはわかる。

オールマイトは緑谷の拳を受け止めるつもりで掌を広げた。

 

「っ!いったぁ!?」

 

少年の拳とは思えない、固い何かが食い込む。

ダメージ自体はほとんどないが予想と異なる感触に顔をしかめてしまう。

ようやくはっきり見えるようになった目で緑谷が引いた拳を見る。

 

(石ー!?)

 

爆豪が陽動を仕掛けた隙に、海岸に転がっていた拳大の石を掴んでいたのだった。

しかも、一番尖っている部分がオールマイトに向くように握りしめて。

更に緑谷は引き下がると同時にオールマイトの顔面をめがけてその石を投げつけてきた。

 

「うぉっ!怖っ!」

 

石を避けた拍子に背後の様子がオールマイトの目に入る。

彼らがいるこの海浜公園は、2年前までは漂流物と不法投棄のせいでゴミだらけだった。

この場所を使わせてもらうことへの感謝として、訓練を兼ねて3人で少しずつ掃除してきたが、まだまだ大量のゴミ山が残っている。

爆豪はその内の一つの頂上にいた。

そしてゴミ山の頂上に乗っかっていた巨大な冷蔵庫に腕を添えていた。

 

「おい……おいおいおい!?」

 

「……死ねぇえ!!」

 

「おいぃぃっ!?」

 

爆風を使って冷蔵庫をオールマイトへと投擲。

普通に人が死ぬ速度でだ。

オールマイトならば受け止めることも弾くことも容易いがあえて足で蹴り、反動を利用して二人から距離を取ることを選んだ。

 

「君たち覚悟決まりすぎじゃない!?

 何?殺る気スイッチ入ってんの!?」

 

重ねて言うが、二人はまだ中学生。

実戦経験を積んだヒーローどころか、ヒーロー候補の高校生ですらない。

どんな経験をすれば、ただの中学生がためらいなく人を殺しにかかるようになるのだろうか。

 

「クソッ!やっぱナンバー1にこんな子供だましは通じねぇか。

 ギア上げんぞデク!ついてこいや!!」

 

「うん!!」

 

「ひいぃぃぃっ!」

 

ヒーローとしては一般人相手に、ましてや子供に過剰に反撃することはできない。

かかってこいと言った手前、逃げ回るわけにもいかない。

攻撃自体は凶悪なヴィランと比べれば大したことはないが、先ほどまで尊敬のまなざしで自分を見ていた少年たちが、目を血走らせて襲い掛かってくる姿はオールマイトの精神面にダメージを与えていた。

結局オールマイトは二人の少年が力尽きるまで、怯えながら攻撃を捌き続けた。




爆豪くん。サインもらえてよかったね。
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