『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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前話でもう終わりにしてもよかったんですが、小悪党やら何やらがいっぱい残ってると綺麗な終わりにならないので後を濁します。
もうしばらくお付き合いください。


第24話 愚か者たちの挽歌

 

「どういうことですかぃ親父ぃ!」

 

後日、歳星に戻ったマクマードの邸宅にジャスレイが押し入ってきた。

鉄華団からの書類を確認していたマクマードは彼を一瞥するだけで、つまらなそうに葉巻を吹かせる。その態度がジャスレイを更に苛立たせた。

 

「鉄華団を傘下に加えんならまだわかる!だが対等な同盟ってなぁねぇでしょう!

 天下のテイワズがあんな新参のガキどもと同列だって言うんですかぃ!?」

 

「あぁそうだ。名瀬の見る目は正しかった。

 アイツらはすぐにテイワズに並ぶほど……いや、下手すりゃそれ以上にデカくなる。

 だからこそ今のうちに対等な関係を結んでおくのさ」

 

「っ!?……確かに、あんなとんでもねぇモンをこの短期間で作り上げた腕は認めますがね!?

 所詮はガキだ!適当な口車に乗せて取り上げちまえばよかったでしょう!?」

 

「取り上げてどうする。アレ一個でアイツらからのテイワズへの信頼と、アイツらがこれから生み出すはずだった利益に釣り合うとでも?

 投資の基本すらわからねぇほどテメェも馬鹿じゃねぇだろうが。

 それとも敵に回すってか?鉄華団と……あの『デビルガンダム』ってのを」

 

「ぐっ!?」

 

ジャスレイもギャラルホルン火星支部が公開した映像は目にしている。

仮にもテイワズの武闘派、モビルスーツ傭兵部隊『JPTトラスト』の長。

モビルアーマーとやらの恐ろしさは嫌と言うほど理解したし、そのモビルアーマーとやらを上回ると目されるデビルガンダムと事を構えるなどまっぴらごめんだ。

 

「そんなことを考えてる暇があるなら、テメェも今後の身の振り方を考えた方がいいんじゃねぇのか?」

 

「~~っ、邪魔をしましたぁ!」

 

痛いところを突かれたジャスレイは強引に話を切り上げ逃げるように立ち去る。

 

ギャラルホルン火星支部の活躍により、火星周辺の治安は大幅に改善した。

しかしそれは争いが起きないということであり、傭兵部隊であるJPTトラストの需要が減ったことを意味する。

火星支部と組んで彼らの仕事を奪った鉄華団は自分たちで新しいシノギを作り出したが、JPTトラストは未だに何も見つけていない。

ほんの少し前までは自他ともに認めるテイワズのナンバーツーであったはずのジャスレイの地位は急落しつつあった。

 

対して今回の件で名瀬は大幅に名を上げ、次期ナンバーツー……ひいてはマクマードの後継者にして次のテイワズのトップの座に就くと確実視されている。奴がいる限りジャスレイが返り咲くことはできない。

だが鉄華団から指名を受けテイワズの総力を挙げた一大事業に取り組むタービンズを排除するのは不可能だ。

テイワズ全体が奴に注目しているため暗殺なぞしようものなら間違いなくジャスレイの仕業と知れ渡り矛先が向く。

そもそも名瀬がいなくなっても彼の地位が失われつつある現状が改善されるわけではない。別の人間が次のナンバーツーになるだろう。

 

鉄華団はジャスレイ自身も認めざるを得ない戦力を保有しており、しかもギャラルホルン火星支部と蜜月関係。

鉄華団と敵対すれば漏れなく火星支部とその長である英雄マクギリス、そして英雄を称える火星の世論そのものを敵に回す。

 

 

「くそっ、くそっ!くそぉ!!」

 

ジャスレイは行きつけのバーで手下たちに八つ当たりしていた。

彼は暴力でのし上がってきた男だ。だからこそそれが通用しない奴が相手では何も成すことができない。

 

「ジャ、ジャスレイさんっ」

 

「あぁん!?」

 

「ひっ!?」

 

その時店に駆け込んできた部下にも噛みつくが、恐る恐る端末を差し出してきたのでひったくるように奪い取る。

 

「…………!」

 

端末に表示された文章、とある人物からのメールを読み進める内に彼の表情が変化していく。

 

「……くは、くははは!そうか、そうか!

 そうすりゃよかったんじゃねぇか!」

 

「あ、あの……!?」

 

「出港準備だ!さっさとしろぉ!

 ひひ、ひひひひひ!これで何もかも俺様のモンだぁ!」

 

狂喜に彩られたジャスレイに気圧され、手下たちは慌てて動き出す。

彼らもまた暴力で、そしてただただジャスレイに従うことで成り上がってきた者たちだ。

それ以外を考えることも、自分たちの末路を予想することもできはしない。そんな頭は持っていないのだから。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

後日、ドルトコロニーで襲撃事件が起きた。

物資補給のためにこのコロニーに立ち寄った外部の人間一名が何者かに襲撃され凄惨な姿で発見された。

そしてその人物が乗っていた船から積み荷が……1機のモビルスーツが盗み出された。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

圏外圏の治安が改善したことで割を食ったのは警備会社や傭兵だけではない。

彼らに武器を売り飛ばす火星の武器商人もまた深刻な被害を被っていた。

 

ノブリス・ゴルドン。

 

彼はデビルガンダムを乗せた鉄華団の船がドルトコロニーに立ち寄るという情報を手に入れ、同じく困窮するジャスレイに商談を持ちかけた。

依頼内容は『デビルガンダムの奪取とそのパイロットの暗殺』。

最強のモビルスーツを手に入れ解析し量産できれば、わざわざ戦争を起こす必要などない。

圧倒的な武力により全てを支配できる。それは争いではなく一方的な蹂躙になるのだろう。

 

「へっ、小娘一人始末するなんざ簡単だったぜ!

 ……だがわかってんな、ノブリスさんよ?」

 

「もちろんだとも。私がデビルガンダムを解析し量産する。そして……」

 

「オレたちJPTトラストにだけそいつを卸す……ヒヒヒッ」

 

『黄金のジャスレイ号』とJPTトラストの艦隊に、ノブリスの船が合流した。デビルガンダムを受け取るためだ。

事が事、物が物だけに、フィクサーを気取るノブリスでも直接受け取りに出向くしかなかった。

信頼できる手勢を用意できないほど彼の力が弱まっているということでもある。

 

「ジャスレイさん!」

 

「んあ?どうしたぁ?」

 

「そ、それが……マクマードさんから通信が……至急ジャスレイさんに繋げと……!」

 

「……チッ」

 

ジャスレイは手下が持ってきた端末をめんどくさそうに受け取る。大方、マクマードの要件は。

 

 

『ドルトでデビルガンダムが強奪されたらしいが……テメェ今その辺りにいたはずだよなぁ。

 ……何か知らねぇか?』

 

 

画面越しに凄むマクマード。間違いなくバレている。

 

「いやぁ、知りませんねぇ。そんな話自体初耳でさぁ」

 

しかしジャスレイは堂々と白を切った。

既に最強のモビルスーツは自分の手の中にあるのだ。

自分が関与した証拠など残していないが、仮に辿り着かれても武力で排除してしまえばいい。

それが親子の盃を躱したマクマードであろうと。

いや、むしろ目障りな老いぼれを始末する絶好の機会ですらあると考えていた。

 

『そうか、ならいい』

 

「んぁ?」

 

しかしマクマードはすぐに表情を柔らかくして追及を打ち切った。予想外の展開にジャスレイは間抜けな声を出す。

 

『だがそうだな、お前がデビルガンダムを盗んだ馬鹿に会う可能性もあるか。

 それらしきを見かけたら脇目も降らずとにかく逃げろ。

 でなきゃ巻き込まれるかもしれねぇからよ』

 

「はぁ?逃げろ?」

 

『教えておこう。アレの持ち主から直接聞いた、デビルガンダムに関する重要な情報だ』

 

「……なんですかぃ?」

 

重要な情報とやらが気にかかったジャスレイは続きを促した。

 

『モビルアーマーには人工知能が積んであって、無人で暴れ回るってなぁテメェも知ってるな?』

 

「えぇ」

 

 

 

 

『実はデビルガンダムにも人工知能が積んであるらしくてな……パイロットがいなくても勝手に動くそうだ』

 

 

 

 

「「は?」」

 

同じ場にいると気づかれぬよう黙っていたノブリスも、思わず声を上げてしまった。

 

 

ドォンッ!

 

 

「「!?」」

 

そして彼らの傍にあるコンテナ……デビルガンダムを納めているものの中から轟音が響く。

 

 

『ソイツはパイロットの嬢ちゃんを相当慕ってるらしくてよぉ。

 勝手に調べようとしたり乗り込もうとしたりするのはもちろん、嬢ちゃんからしばらく引きはがすだけでも目ぇ覚まして動き出すんだそうだ。

 そんで敵と思わしき連中が目に入れば、暴れ出して皆殺しにするんだとよ。

 ……モビルアーマー以上の強さと苛烈さでなぁ』

 

 

ドォンッ!ドォンッ!!

 

 

「な……なんですかぃそりゃ!?

 どうすりゃ止まるんですかぃ親父ぃ!」

 

『方法は一つだ。パイロットの嬢ちゃんが『止まれ』と呼び掛け安心させてやるしかねぇ。

 ……だが生憎と、嬢ちゃんはどこぞの馬鹿が暗殺仕掛けて生死不明らしいからなぁ~~』

 

「ひっ……!?」

 

『止める方法は、もうねぇよ。

 どうせ嬢ちゃんを殺そうとした奴とデビルガンダムを盗んだ奴は同一犯なんだろうさ。

 ……精々、自分の馬鹿な選択を恨んでくたばりゃいいだろ。自業自得ってやつだ』

 

「「……!?」」

 

『……じゃあな。馬鹿息子』

 

「っ、親父!?親父ぃぃぃいいいいっ!!」

 

 

 

ドガァァァァァァン!!

 

 

 

一方的に通信を切られても尚端末にかじりついていたジャスレイと、ノブリスや周囲の人間たちが、一際大きな音が響いた方を恐る恐る見上げる。

 

 

(ーーーーーーーー)

 

 

ツインアイを赤く光らせ、両肩の禍々しいサブアームを展開し、全身からガンダムヘッドを生やした『真の悪魔』が、彼らを見下ろしていた。

 

「あっ、あっ、あぁぁぁぁ…………!」

 

 

 

(ーーーーーーーーーーーー……!)

 

 

 

「「「「「あぁぁぁぁぁぁあああああああああ!?!?!?!?!?!?」」」」」

 

 

 

間もなく、宇宙の片隅でいくつかの花火が上がった。

生存者はなく、残されたのはわずかなデブリだけ。

加えて、まるでその船自身が己の素性を隠そうとしていたかのように航跡の記録が残されていなかったので、ここで犠牲となったのは誰だったのかすらわからなかった。

 




ちょっと強引ですが、まとめて退場していただきます。
ぶっちゃけこいつらは生かしておくだけ邪魔でしかないので。
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