ここは地球。アーブラウ国境、その激戦区。
苦戦に立たされるアーブラウ国境警備軍はどこからかやってきた『ガラン・モッサ』と名乗る傭兵と彼が率いる部隊によりかろうじて戦線を維持できていた。
ほんの少し前までギャラルホルンが強権を発揮しにらみを利かせていたこの地球では、国家間戦争なんてずっとずっと起きていなかったのだ。
敵も味方も戦闘経験ゼロ。主力兵器であるモビルスーツを手に入れ数を揃えたばかりで、兵士たちはそれを使いこなすどころか振り回されている有様だ。
だからこそ歴戦の傭兵であるガランの指揮により、アーブラウ側はまだ抗うことができていた。
(だが、じり貧だ……まだか、ラスタル……!)
ガランは己をこの地に送り込み時間を稼ぐよう命じた盟友を想い、彼がいるであろう宇宙に一瞬視線を向ける。
「……ぬ!?」
だから彼は誰よりも早く気付いた。
大気圏突入用のシールドを構え降下してくる機影に。
『っ!?敵の増援か!?』
「待て撃つな!」
そのシールドがアリアンロッド艦隊の運用しているものだと気づいたガランが、何も知らぬ自軍の兵士を制止する。
数は4。飛来した機体はそのままSAUの陣地へと墜落した。
そして間もなくその方角から轟音が聞こえてくる。
「確認に向かう!一部隊ついてこい!」
『『『ハッ!』』』
アーブラウ軍のフレック・グレイズがガランのゲイレールに続き走り出す。
彼らが目的地にたどり着くより少し前に、暫く響いていた戦闘音は止んでいた。
「……ぬぅ……!」
ガランが目の当たりにしたのは完膚なきまでに破壊されたSAU軍の兵器の残骸と、返り血のようにオイルを浴びた4機の悪魔。
ガンダムバルバトスルプスレクス。
ガンダムグシオンリベイクフルシティ。
ガイアガンダムフラウロス。
そして、デビルガンダム。
『お前が、ガラン・モッサか?』
「……あぁそうだ。お前たちは……援軍か?」
ガランはグシオンからの通信に応じた。続けて他の機体も通信に参加してくる。
『そうだよ。オレたちは鉄華団、アーブラウに味方しに来たんだ』
『オレらが来たからにゃあ百人力よ!
この戦、勝ったも同然ってな!ぶはははは!』
『…………』
普段ならヒノカミがお調子者のシノをとがめるところだが、今その声は聞こえない。
当然だ。この場には、ヒノカミはいないのだから。
火星にて作戦を立案しデビルガンダムに乗って出撃するつもりだったヒノカミを、鉄華団の子供たちが阻んだ。
無理もない。なぜなら彼女の体はまだボロボロで、肉体の修復はまだ主要な臓器と両腕までしか終わっていない。会議にも車椅子で参加している有様だったから。
地球の戦争という緊急事態に無理を押して出てきたが、しばらくはベッドの上で絶対安静の予定だった。
だと言うのに彼女は『戦いはデビルガンダムに任せるが、コクピットの中で転がってるだけでも電池代わりにはなる』と平然と言い放ち、その場の面々を激怒させた。
オルガに至っては我慢ならず、思わず怪我人である彼女の顔面を力の限り殴り飛ばしたほどだ。
だが超少数精鋭部隊を送るとならば、そこにデビルガンダムは欠かせない。
モビルアーマーのエイハブ・リアクターを取り込んだデビルガンダムは単独でモビルアーマー並の戦闘能力を有するが、やはり生体ユニット……パイロットがいた方がよりその力を発揮できる。
となればヒノカミ以外が乗り込むしかないが生半可な者では負荷に耐えられない。何より、デビルガンダム自身が生半可な者が自分に乗り込むことを認めない。
仕方なくデビルガンダムにはパイロット抜きで戦ってもらおうかと考えていたところ、とある人物が立候補した。
反対意見も出たが当人は譲らなかった。そしてデビルガンダムもその人物ならば一時的に認めても良いと判断した。
『……いや、百人力どころか千人力……一騎当千というものさ、シノ』
(ーーーー)
『この私と……デビルガンダムならばなぁ!!!』
悪趣味な仮面と長髪のかつらをつけたモンターク……いや、マクギリス・ファリドがデビルガンダムのコクピットで狂喜に震えていた。
長年鍛え上げ続けたこの世界でも有数の強靭な肉体。
モビルトレースシステムに適応できる剣士としての高い技術。
デビルガンダムに対する狂信者染みた敬意。
そして何より……『推し』が同じという事実。
今ここに、ヒノカミの強火厄介オタクの悪魔と人間がタッグを組んだ。
そもそもマクギリスこそが敵の狙いであり、この戦を引き起こした理由とも言える。
いくら危険だとわかっていても他人任せにして火星で待つなど彼の掲げた正義に反する。
なので最初から彼は地球に向かうつもりであり、浮いている機体があるのは好都合だった。
『憧れのデビルガンダムに乗れるから』というのが参戦理由ではないのだ。断じて。
『じゃあさっさと潰そうよ』
『あぁ、手始めにSAUを血祭りにあげるとしよう』
『他にも敵は大勢いるんだ!時間かけていられねぇぞ!』
『行くぜぇ!真・流星号!!』
バルバトスが飛翔し。
デビルガンダムが浮遊し。
グシオンが四つ腕全てに銃を握り駆け出し。
フラウロスが四脚獣形態となって足裏の無限軌道を唸らせる。
「っ!?おい!」
そして彼らはガランたちを置き去りにしてSAU軍の本陣の方角へと走り去って行った。
しかも四機がそれぞれバラバラにだ。どうやら連携してではなく手分けして当たるつもりらしい。
数の差を考えれば自殺行為。普通はそんな選択肢は取らない。
だが生憎と彼らは普通とは程遠い。
重ねて言うが、ギャラルホルン以外の軍隊は碌な戦闘経験もない烏合の衆に過ぎない。
膨大な量を、圧倒的な質で覆す。それが可能だと判断したからこそ超少数精鋭の派遣が決まったのだ。
『ありがたい、ここまで合わせていただけるとは……!』
単機で多数のモビルスーツを前にするデビルガンダムは無手ではなく、両手に2本の長剣を握っていた。デビルガンダムが自己増殖で作り上げたものだ。
更に肩のサブアームを背中の後ろに、掌を下に向けるように展開しフレキシブルスラスターとする。
マクギリスが憧れ習熟したガンダムバエルの戦闘スタイルに機体特性を近づけているのだ。
『はぁぁぁぁぁっ!!!』
噂のデビルガンダムに怯え、しかし一斉に銃を乱射することくらいしかできないモビルスーツの軍勢。
マクギリスがコクピットの中で走り出すと機体が追従して走り出し、腕を振るうと剣が敵機を細切れにする。
敵部隊は一度の交錯で全て物言わぬ鉄屑となった。
『……なんという速さ!なんという力!
これがデビルガンダム!究極のモビルスーツ!!
私は今、伝説と共にあるのだ!!』
(ーー……)
『……だが、全ては躱しきれなかったか。
引き出せる力も、やはり彼女の様にはいかないな。
つくづく己の未熟と、彼女の偉大さを痛感する……!』
(ーー!)
『故にどうか今暫く、弱き私に力をお貸しいただきたい!デビルガンダムよ!』
(ーー!!)
火星より来訪したたった4機のモビルスーツ。
彼らが降り立ったその日の内にアーブラウ国境に攻め入っていたSAU侵攻軍は5割の戦力を喪失し、一時本国への撤退を余儀なくされた。
・ガイアガンダムフラウロス
射撃戦に特化したガンダムフレームを、パイロットであるシノに合わせて鉄華団が改造。
バクゥのパーツを組み込み、元々は遠距離射撃時に機体を固定するための砲台形態を高速移動可能な四脚獣形態へと作り変えた。
重量増加のため二足歩行形態での機動力は低下しているが、四脚獣形態での機動力と地上踏破能力は並のモビルスーツを大きく凌駕する。
SEED編ではDESTINYまで波及しませんでしたがその後もしばらくSEEDの世界にいたので、SEED DESITINYの兵器や技術も多少は把握しているということでどうか……。