『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

705 / 786
第29話

 

オルガ率いる鉄華団主要メンバーはモビルスーツに一歩遅れて、小型艇にてアーブラウを目指して地球に降下。

蒔苗と対面し正式にアーブラウの傭兵として契約した。

SAU軍を撃退した4機のガンダムはSAUとの国境警備をガランに任せ、残る2つの経済圏の侵攻軍に対応するため二手に分かれた。

組み合わせは前衛と後衛でバランスよくなるようにバルバトスとグシオン、デビルガンダムとフラウロス。それぞれに鉄華団のサポートメンバーも同行する。

彼らはSAU軍を相手にした時と同じように自分たちだけで敵陣に切り込んでいき、浮足立っているところをアーブラウ正規軍が攻める形で侵略を押し返していった。

数だけは多いが所詮は人間。しかも長い間まともな戦いを経験しておらず、勝ち戦のつもりで武器を取ったような連中だ。

モビルアーマーの脅威を知った彼らがこの程度の敵に怯えることは無い。

鉄華団の面々も『侵略者を気遣う必要はない』と今回は容赦なく敵のコクピットを潰し命を奪っていく。

 

 

想定外の事態に、ネモとエレクはラスタルに抗議した。

 

「なぜ鉄華団の連中を地上に降ろしたのだ!?

 奴らはマクギリスと結託し火星を手中に納めんと画策する無法者ぞ!?」

 

当然ラスタルは聞く耳を持たず、逆に問い返した。

 

『今回の戦争に干渉しないと決めたのは貴君らではないか。

 各経済圏は多くの傭兵を雇い入れている。宇宙からも海賊崩れを集めたと聞いた。

 だと言うのに鉄華団だけを認めないというのは筋が通らんだろう』

 

「しかしっ!」

 

『彼らは警備会社であり、今回はアーブラウとの正式な契約も済ませている。

 持ち込んだモビルスーツもたったの4機。むしろ他の傭兵と比べれば著しく小規模。

 仮に彼らが地上で暴走を始めたのならば、その時に地上軍を指揮し討伐するのが貴君らの役目であろう。

 それとも、まもなく2年が経つというのにまだ彼らに出し抜かれたことを根に持っているのかね?』

 

「……!?」

 

『アリアンロッド艦隊の力も必要かな?

 だが我々をも動かしたいのならばセブンスターズでの議決を取ることだ』

 

「くっ……!」

 

皮肉を交えて正論を突きつけられ反論する言葉を失ってしまった。

彼らの予想通りマクギリスがテュールの軍勢を引き連れて来たのならともかく、わずかな手勢だけの鉄華団ではギャラルホルンが動く理由には弱すぎる。例え質がずば抜けていてもだ。

そしてラスタルらがセブンスターズの議決によって地上軍を動かせないように、ネモらも宇宙軍を動かせない。

 

彼らが手をこまねいている内におよそ半月が過ぎ、アーブラウは侵入してきた敵国の軍を自国から追い払うところまで盛り返すことができていた。

しかしアーブラウ軍はここで止まらなかった。

逆に3つの経済圏に侵攻を仕掛けたのだ。

 

これには3つの経済圏も悲鳴を上げ、即座にネモらとギャラルホルン地上軍に泣きついた。

その厚顔無恥に呆れ果てるが無視もできない。

連中が『死なば諸共』と自分たちとの密約をバラすような真似をされてはたまらないし、ここでアーブラウの一人勝ちになればそれこそ火星とマクギリスが手が付けられなくなる。

 

 

 

『こちらギャラルホルン。

 各国に告ぐ。直ちに戦闘行為を停止せよ。

 武力による国境の変更は認められぬ。

 受け入れられない場合は武力を持って排除することとなる』

 

間もなくネモの息がかかったギャラルホルン地上軍司令が全軍に出動を命じ、他国の領域に侵略していたアーブラウ軍の前に立ちはだかる。

 

 

 

「うるさい」

 

 

 

そしてバルバトスの前にいた部隊長と思わしき機体は一撃で叩き潰された。

コクピットはぐしゃぐしゃだ。パイロットは生きてはいないだろう。

 

『『『な……!?』』』

 

『……ぬるい。ぬるいなぁ小童ども』

 

驚愕する兵士たちの耳に蒔苗の声が響く。

ギャラルホルンの通告に対する声明を発表するため、エドモントンからの中継が世界中に発信されている。

 

『今更になって出てきて、中立じゃと?

 まさかそのような言い分が通ると本気で思っておるのか?

 だとすれば……灸をすえてやらねばならんなぁ……!』

 

アーブラウが四方八方から攻め入られ窮地に陥っても不干渉を貫きながら、アーブラウが有利になった途端にこの振る舞い。

ギャラルホルンのやり方は露骨すぎた。オルガらを通じて内情を聴いた蒔苗でなくとも、ギャラルホルンがどの勢力に味方しているのかは誰にも一目瞭然だった。

 

故にアーブラウの兵士は誰一人としてためらうことなく、蒔苗の宣言に従った。

 

 

『アーブラウ全軍、攻撃を継続せよ!

 阻むというなら全て敵!悉く撃ち滅ぼせぃ!!』

 

 

『『『うぉぉぉーーーーーっ!!』』』

 

鉄華団の悪魔たちだけでなくアーブラウ正規軍もまた彼らに続き、ギャラルホルン地上軍に容赦のない攻撃を開始する。

今まで自分たちが立ちはだかれば、相手は逃げるか従うかだけだった。

今回もそうなると思い込んでいたギャラルホルン地上軍の兵士たちはあっけにとられ、ようやく状況を理解して反撃を開始した頃にはすでに結構な数のモビルスーツが破壊されていた。

 

 

 

「なんと野蛮な……だが……!」

 

自軍の兵士たちが打ち倒されていく姿をモニター越しに見ていたネモはほくそ笑む。

これでギャラルホルンがアーブラウを攻め落とす口実ができた。

4機の悪魔は確かに脅威だが他のモビルスーツは勢いだけの雑兵であり、ギャラルホルンの物量を前に祖国を守り抜くことなどできるはずがない。

ここでアーブラウを滅ぼすことで、汚名続きで低く見積もられていたギャラルホルン地上軍の力を知らしめ、図に乗った若造を蹴落とす足掛かりにできると考えた。

 

「くっくっく……全軍!アーブラウ軍に総攻撃を……む?」

 

ネモが地上軍司令に命じようとしたところで、遥か上空から降下してくる無数の機影に気付く。

まさか鉄華団かテュールの軍勢が増援に来たのかと身構えたが。

 

「……アリアンロッド艦隊だと!?」

 

シールドを構え降下してくるのは同じギャラルホルンの宇宙軍。

よく見れば地球外縁軌道統制統合艦隊の機体も混ざっている。

アーブラウがギャラルホルンという組織そのものに喧嘩を売ったのだから、宇宙軍も参戦するのは理解できる。

だがあまりに動きが早すぎる。まるで出番を待ち構えていたかのようではないか。

 

「まさか、この展開を読んで……手柄を狙っていたのか!?」

 

2年前にイズナリオの手駒となって不正を働き、おまけに鉄華団に出し抜かれた地上軍の評価はギャラルホルンの中でも一際低い。

ここでまた宇宙軍に功績を奪われてはいよいよ立つ瀬がない。

ネモは慌ててラスタルに通信をつなぐ。

 

「何のおつもりか、エリオン公!

 地上を守るは我らが務め!手出しは無用に願おう!!」

 

『……貴様の魂胆など全て見通している。

 我々の目的はアーブラウ軍の鎮圧ではない』

 

「なんだと……!?」

 

『……言葉では理解しかねるだろう。

 ゆえに嫌でも状況を理解できるよう、行動で示すとしよう』

 

アーブラウ軍とギャラルホルン地上軍がぶつかり合う戦場に降下したギャラルホルン宇宙軍。

立ち上がったモビルスーツ達は銃を構え、銃口を向けた。

 

ギャラルホルン地上軍へと。

 

「なっ……!?」

 

『ネモ・バクラザン!エレク・ファルク!

 貴様らの悪行の証拠は全て揃った!

 総員!ギャラルホルンの秩序を乱した反逆者と、それに与する者共を殲滅せよ!』

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。