『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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あと2回ですが、書き終えました。
朝と夜に投稿して本章完結となります。


第30話 ギャラルホルンの正義

 

ギャラルホルン宇宙軍を地上へ降下させると同時に、ラスタルは声明を発表。

 

今回の地球圏全土を巻き込んだ戦争を引き起こし、他にも数々の悪事を重ねていたネモ・バクラザンとエレク・ファルクを反逆者と認定。

彼らと彼らに加担する者全てを武力を持って討伐・拘束すると宣言した。

 

アリアンロッド艦隊はギャラルホルン最大最強を誇る大艦隊。

マクギリスが統治するようになってから居心地が悪くなったと火星から地球に流れてきた宇宙海賊たちとも幾度となく戦いを繰り広げ続けており、兵士たちの練度も数あるギャラルホルンの部隊の中で最上位だ。

 

そのアリアンロッド艦隊の屈強な兵士たちに銃を突き付けられ、ギャラルホルン地上軍は大いに狼狽える。

勝ち目など無いが、地上軍の重役はネモやエレクとの関わりが非常に強い。

不正と理解していながらセブンスターズの指示に従い悪事に加担し利益を得て、今回も『治安維持』という職務を放棄していた将校もまた当然罰せられるだろう。

故に彼らは保身に走り部下たちに徹底抗戦を命じた。

軍人として上官には従わざるを得ないと、多くの地上軍の兵はやむなく戦闘を継続した。

 

使い潰される末端の兵士たちに同情の余地はある。

だがここは戦場で、彼らは軍人だ。鉄華団もアーブラウ軍もギャラルホルン宇宙軍も、一切容赦はしなかった。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

『おのれ!ラスタル様の言葉を賜りながらまだ狼藉を重ねるか!

 ならばこのイオク・クジャンの裁きを受けたわらばっ!?』

 

『『『イオクさまーーーっ!』』』

 

『よ、よえぇ……なんであの程度の実力で堂々と前に出られんだ……!?』

 

『アレひっこめた方がいいんじゃない?

 えぇと……『世話が焼ける』人?』

 

『不名誉な仇名をつけないでください!火星で名乗ったでしょう!?

 私はジュリエッタ・ジュリスです!』

 

『……ズリズリ?』

 

『ジュ・リ・エッ・タ!!!』

 

『まぁなんでもいいや。そんで……』

 

『貴様らぁっ!戦士の名乗りを妨害するとはなにごはぁっ!!』

 

『『『イオクさまぁーーーーーっ!!』』』

 

『しぶてぇな……』

 

『アレ、やっぱり邪魔だよ』

 

『……あんなのでもセブンスターズの当主なんです。

 ある程度慮ってやらねばならなくて……』

 

『めんどくさ。じゃあ敵の方をさっさと片づけちゃおうよ』

 

『そうしましょう。アレでも人望だけはあるんです。

 何かあっても取り巻きがどうにかするでしょう』

 

『行くよ昭弘』

 

『あ、あぁ……』

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

『フッ……火星に続き、またお前と肩を並べることができるとはな!マクギリス!』

 

『……人違いではないかな?私の名はモンタークだ。

 それに、火星でその機体に乗っていたのはヴィダールという男だったはずだが?』

 

『うぐっ……わかった、この件については互いに不干渉としよう』

 

『心得た』

 

『そこまでバレてんなら隠す意味もねぇだろうに……』

 

『男はいつまでも子供なのですよ。それを受け入れ支えるのが良い女というものです。

 ……総員、陣形構え!一点突破!!今度こそ、我らの正義を示すのです!』

 

『『『ハッ!カルタ様!!』』』

 

『……つぅかなんだあの化粧。

 マクギリスの大将たちといい、セブンスターズってのはセンスおかしいのか?』

 

『何か言いましたか!?』

 

『なんでもねぇっすよ!

 ……ちゃんとすりゃあ別嬪だろうに、もったいねぇなぁ』

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「ネモとエレクにまで手が届くのも、時間の問題だな」

 

宇宙から地球を見下ろすアリアンロッド艦隊旗艦にて、部隊からの報告を受け取ったラスタルは満足げに頷く。

ギャラルホルン宇宙軍はアーブラウの軍勢と協力して地上軍を次々と無力化している。

想定よりも地上軍の抵抗は弱く、宇宙軍の士気は高い。

やはり連中の悪事の証拠をはっきりと提示したことが大きいだろう。

 

「協力、感謝する」

 

だからラスタルは連中の悪事の証拠を集めてくれた協力者に感謝を告げた。

 

「…………」

 

彼の視線の先には、未だに車椅子に座るヒノカミの姿があった。

 

オルガたちの有無を言わさぬ参戦禁止により、ヒノカミは武力を振るうことができなくなった。

しかし彼女は本来戦士ではなく賢者、パイロットではなくサポーターである。

マクギリスの伝手でラスタルに渡りをつけた彼女は、セブンスターズや各国の機関にアクセスできる回線の使用許可を願い出た。

 

許可を得た彼女は適当な機械とスクラップを組み合わせて即興でハッキング用端末を作り上げた。

宇宙からとなればどうしても回線が弱く苦労したが、何とか気付かれぬようデータを引き抜き続けていた。

そして今日、各国経済圏からギャラルホルン地上軍への救援要請のやり取りをリアルタイムで抑え、これで証拠は十分にそろったとラスタルは連中の討伐に動き出した。

 

 

「……儂から申し出たことでなければ」

 

「む?」

 

「この身が万全であるならば……ここにデビルガンダムがいたならば……。

 儂は、貴様をくびり殺していたよ。ラスタル・エリオン」

 

「…………」

 

セブンスターズの情報を集めるとなればギャラルホルンの過去のデータベースにもアクセスすることになる。

そしてその中には当然、ラスタルの行いの記録も残されている。

『秩序の維持』を名目に行ってきた、ラスタルの数々の非道の記録もだ。

ラスタルはヒノカミに全てが筒抜けになるとわかっていて回線の使用許可を出した。それをヒノカミも理解している。だからこそ、あと一歩で思いとどまっていた。

 

「いや、今でなくとも後で動くかもな。

 儂が弱っている内にこの場で始末するか?」

 

「やめておく。マクギリスや鉄華団との今後の関係を思えばもちろんだが、私とて過去の偉人に対する敬意くらいはある。

 人知れず長きに渡り地球を支え続けていたとなれば尚のことだ」

 

「マクギリスから聞いたか……」

 

「貴公には感謝してもしきれぬ。

 マクギリスの迷走を正し、結果的にギャラルホルンそのものを正す機会を与えられた」

 

ラスタルはセブンスターズの中で誰よりも強い権力を持つが、彼自身には私欲も野心もほとんどない。

悪事を働いてまでギャラルホルンとセブンスターズの維持に注力してきたが、それは他に世界の秩序を守る方法がないと判断していたからだ。

内心では彼もまたマクギリスと同じく、地位や出自が幅を利かせる今の組織の在り方を疎んですらいた。

そんな状況下でのイズナリオの不正に続き、ネモとエレクの暴走。もはやセブンスターズという制度そのものの継続は不可能となった。

力づくでの根本的な改革を実行し、新たな秩序を作り出せる土台が整ったのだ。

 

「ギャラルホルンは生まれ変わるだろう。奇しくも、かつてマクギリスが望んだような清廉な組織へと。

 鎮圧に参加し活躍しているガエリオとカルタはセブンスターズだが批判も少なかろう。

 信念も能力もある。いずれギャラルホルンを継ぎ、彼らなりの正義を打ち立てていくだろう。

 そうなればようやく私の役目は終わりだ」

 

「だから、それまで見逃せと?」

 

「いや、見届けてほしい。老いることなく永遠を生きる貴公に、若者たちの進む道をな」

 

「ふん、狸が。……いやちょっと待て。もう一人いるんじゃろ?

 鎮圧に参加しとるセブンスターズの若者が……」

 

「……人望とカリスマ性だけはあるのだが……」

 

「……エンブリラが草葉の陰で泣いとるかもしれんな……」

 

眉間をつまみながら言葉を絞り出すラスタルと、かつての盟友であるクジャン家の祖先の冥福を祈るヒノカミ。

間もなく彼らの下に、反乱分子の鎮圧と反逆者の捕縛を完了したとの報告が届いた。

 




強引ですが、これで不穏分子の一掃が完了しました。
次回、最終話となります。
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