『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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『ユウナのお母さんのことを知らないワッカが色々言うもんだから、空気が重かったなぁ……。
 ユウナの親父さんのガードならアーロンは当然聞いてるだろうし、ルールーが知ってるんならキマリも知っててもおかしくない。
 でもヒノカミも言われる前に気づいてたなんて思いもしなかったな』


第8話

 

イカのようなタコのような、クラゲのような?

光る触覚をうねらせ揺蕩う謎の機械が水中で彼らを待ち受けていた。

武装は圧縮した水流弾と水中爆雷。つまり、火薬を内側に抱えている。

 

であればヒノカミにとってはただのカモだ。

『劫火絢爛』で内側に炎を起こし誘爆させてしまえばいい。

 

だがそれでは他のガードたちの経験にならないし、内包している火薬の量次第ではとんでもない大爆発がおきて少年たちやシパーフやその上に乗るユウナたちまで巻き込むかもしれない。

だからヒノカミはハンドシグナルで『爆雷の排除を引き受ける』と伝えた。

彼女は爆発も制御可能。機械が爆雷を放出する度に周囲への影響が生じないよう衝撃を抑え込んで爆破する。

傍から見れば誤作動か不発弾のよう。機械の中の生体反応……パイロットもさぞかし困惑しただろう。

その隙を突いて少年の剣とワッカのボールが敵機械を撃沈した。

 

そう、『ボール』である。

この世界で唯一と言えるスポーツ、水中格闘球技『ブリッツボール』で使用する競技用ボールである。

剣や槍よりもこっちの方が使い慣れているからと言って、何故それを武器にすると言う結論に至ったのか。

ヒノカミの巡った世界の中には突拍子もない物を武器にする者はそれなりにいたが少数派で、それぞれの世界の能力や技術を土台として説得力を持たせていた。

だがワッカのボールは本当にただのボールなのだ。それ以上でもそれ以下でもない。武器たらしめているのはワッカの筋力と技量のみ。

学者でもあるヒノカミは謎を解明しようとついつい思考を巡らせ、その間に沈みゆく機械から誰かが逃げ出していく。

ヒノカミは遅れて気付いたが、ワッカたちは気付いていないようだ。

邪魔されなければ問題ないと、ヒノカミも後を追わなかった。

 

 

「くっそ~~、アルベドの奴らめぇ」

 

シパーフの上に戻ってきた3人。

無事にユウナを守り切り敵と思わしきを撃退したわけだが、アルベド嫌いなワッカは未だ怒りが収まらぬ様子である。

 

「『召喚士が消えた』という話……もしかするとアルベド族の仕業なのかもしれないわね」

 

「一体何が目的だってんだ!?」

 

 

「ミヘン・セッションに参加していたアルベド族から聞いた話じゃが」

 

そこで口を開いたヒノカミに一同の視線が向く。

 

「聞いたって、アンタ話ができるのか?」

 

「アルベド語じゃろ?文法が簡単すぎて嫌でも理解できたわ」

 

「覚える必要ねぇだろそんなモン!」

 

「無理解と拒絶は不要な争いを招く。

 己一人ならばそれも自由じゃが、今は守るべき者がおるんじゃ。

 ガードを名乗るのなら避けられる争いは避ける努力をせい」

 

「う”っ……」

 

「……で、話を戻す。

 どうやらアルベド族は召喚士を『保護』しているらしい」

 

「「「『保護』?」」」

 

「『死なせたくないから』、だとさ」

 

「「「……!」」」

 

「ミヘン・セッションでの彼らの尽力も『召喚士に頼らず『シン』を倒したい』と彼らが強く願っていたからじゃ」

 

ユウナとガードたちが言葉に詰まる。

だが真実を知らされていない少年だけはやはり理解ができない。

 

「だからって何で『攫う』なんてことになるんだ?

 そりゃ危険かもしれないけど、無理やり旅を辞めさせるなんてさぁ」

 

少年と視線を合わせるヒノカミは、一瞬だけ彼の脇を見る。

縋るような眼でこちらを見ていたユウナが目に入った。

 

 

「……なぁ少年。寺院に大召喚士の像はいくつあった?」

 

「えっ?確か4つ……アレ!?たった4つ!?」

 

「そう、スピラに『シン』が生まれて千年。

 千年もの長い年月の中で、旅を完遂し『シン』を倒した召喚士は4人しかいない。

 従召喚士から召喚士になるための修行、祈り子との交信による精神的負担、魔物が溢れるスピラでの過酷な旅、そして何より『シン』の脅威。もしかしたら究極召喚を手に入れはしたが『シン』を倒すに至らぬ者もいたかもしれん。

 お主の想像しているよりもはるかに、大召喚士への道は険しいんじゃ。

 まさに死と隣り合わせ。殉職率を思えば自殺行為も同然よ」

 

「うへぇ~~……」

 

「仮にその現実を目の当たりにして挫折し旅を辞めたとしても、未来は暗い。

 スピラの民は召喚士の旅を全面的に応援するが、だからこそその使命から逃げ出した者への風当たりは強いなどというレベルではない。

 針の筵で心を病み、首を吊る者もいたじゃろう。己がそうなる未来を恐れて引き際を誤り、期待に押しつぶされる形で命を落とす召喚士もいたじゃろう。

 それを思えば、引き返したい召喚士たちにとってアルベド族の行いは救いともなろう。

 『旅に失敗したのはアルベド族のせい』にできるわけじゃからな」

 

「確かに……このシパーフのこともだけど、皆ユウナとオレたちガードに大サービスしてくれてるもんな。

 投げ出そうとしたら『あれだけ応援したのに』ってなっちゃうワケか……」

 

「実は儂も、アルベド族の言う『保護』とは追いつめられている召喚士たちに対してと思っとった。しかしまさか召喚士を手当たり次第とはな。

 才と意欲ある召喚士にとって彼らは妨害以外の何物でもない。

 襲われたらためらうな。ガードとしてな」

 

「ウッス、先輩」

 

「かかか、ガードとしては少年の方が先輩であろうに」

 

得意の口車に乗せられ、少年は納得したようだ。

 

「(ありがとう)」

 

ユウナは音を立てずに感謝を口にした。

 

そして向こう岸に辿り着き、大召喚士の娘であるユウナがエボンの民に囲まれてしまい、すぐには動けぬとしばしの自由行動となった。

その僅かな時間で。

 

 

「はじめまして!リュックでーーす!」

 

 

少年は先程の兵器に乗っていたアルベド族の少女と仲良くなっていた。

 

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