『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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『『アルベド族は眼に模様がある』。
 こんなにわかりやすい特徴があるのに、ワッカはずっと気付かなかった。
 嫌いなのは仕方ないって思ってたけど、だからって何も知らなくていいわけじゃないよな』


第9話 アルベド族の少女

 

「……で、どういうつもりじゃ貴様」

 

「え、えぇ〜〜っと……あは♪」

 

「?なんのこと?」

 

「コイツが、さっき襲ってきたアルベドの兵器を動かしとった奴じゃ」

 

「「えぇっ!?」」

 

どうやらこのリュックと言うアルベド族の少女は、スピラに来たばかりの少年を助けた命の恩人らしい。

であれば敵として排除する気は失せたが先ほどの一件ははっきりさせておかねばなるまい。

彼女がアルベド族だと気付いていないアルベド嫌いのワッカとの衝突を避けるために『女子だけの話し合い』ということにして距離を取り、ヒノカミは即座にリュックを問い質した。

 

「……ごめん!でもユウナんを死なせたくなかったから!」

 

「やはり狙いは召喚士か。しかし先程のは随分乱暴で短絡的じゃな」

 

『召喚士が消える』という噂は広まっているが、その原因は不明となっていた。

つまり今までは誰にも気づかれぬように拉致していたのだろう。

だが機械を使ってシパーフを強襲などすればアルベドの仕業だとバレてしまう。

召喚士はスピラの民の希望だ。

それを奪おうとしていると知れ渡ればアルベド族はスピラ全体から『排除すべき敵』と見なされるだろう。今までの『風当たりが強い』程度には留まらない。

 

「わかってるよ……でもユウナんは絶対に守らなきゃって……。

 アタシの親父、『シド』って言うんだ」

 

「!?じゃあリュックは、私の従姉妹!?」

 

「お主ら親族なんか!?」

 

改めて二人を見れば、確かに魂に近似性がある。

しかしとなれば大召喚士ブラスカの妻はアルベド族ということになる。

尤も、ヒノカミは初めて会った時からユウナの素性をなんとなく察していたが。

 

「ヒノカミ、わかってると思うけど……」

 

「誰にも口外せぬ。無論、ワッカにもな。

 儂自身はアルベドに思うところなど何もない」

 

「……ありがとう」

 

機械の鎧を使い、ミヘン街道にて討伐隊と共にアルベド族と協力して戦ったヒノカミならば理解してくれると信じてはいたが、ハッキリと明言されてようやくルールーは安堵する。

その隣では丁度リュックがユウナにミヘン・セッションの話をしていた。

 

「参加してた仲間から聞いたよ!『シン』を痛めつけて追い返したって!

 討伐隊の人たちも頼もしくて、『ヒノカミ』っていうのはとんでもなかったって!

 究極召喚なんかなくてもきっと『シン』を倒せるよ!だから……」

 

「無理じゃな」

 

「!?なんでアンタがそんなこと言えんのさぁ!?」

 

「儂がユウナのガードになった。それ以上の説明が必要か?」

 

「リュック……この人が、その『ヒノカミ』さんなの」

 

「ほぇ?」

 

「そういえば、尋ねていいかしら?

 アナタでは本当に『シン』は倒せないの?

 ミヘン・セッションでの戦いを見ると、チャップたちが希望を持つのも無理はないと思ったのだけれど……」

 

「儂が本気で『シン』を倒そうとすればまき散らされるコケラや周辺への被害を慮る余裕がない。

 ミヘン・セッションではそれらの対処を討伐隊たちに任せたが、全力を出せば彼らを巻き込んでしまう。全力が出せぬのでは倒しきれぬ。

 あらゆる被害と損害を無視して、儂自身の命を懸け討伐隊やアルベド族が全滅する覚悟で当たれば可能性は十分にある。

 その一度で『シン』を完全消滅させられるならばまだ挑む価値もあろうが、数年で蘇るとあってはな……」

 

「そう……」

 

「おまけに『シン』は戦う度に少しずつ成長しておる。先の戦いでの討伐隊の損害も甚大じゃ。

 次は追い返すどころか壊滅するやもしれぬ。

 故に『シン』が再び活動を始める前に、何としてもザナルカンドに辿り着きたい」

 

「なるほど、それでアナタはずっと焦っていたのね」

 

「猶予は数か月。最悪、儂の力で一気にザナルカンドへ飛んでいく。

 『ズルをするな』と追い返されるかもしれんが間に合わなければ試すしかあるまい。

 ……わかったか?儂がガードについている以上、ユウナが旅で挫折する事態は万に一つもない」

 

「そ、そんなぁ……」

 

ルールーとの対話でようやくというか、否が応でも目の前の少女が鬼の正体だと理解せざるを得なかったらしい。

召喚士に頼らず『シン』を倒せるかもしれない希望の星が、『シン』には勝てないと認めた。

そして究極召喚を求める召喚士の旅にガードとして手を貸している。

召喚士を拉致同然に保護しようとしているリュックが感じる絶望は並大抵ではあるまい。

 

「理解したなら去れ。そして他のアルベド族にも伝えておけ。

 襲ってくるならば撃退する。手段が強引になればこちらも相応の手段であたる。

 些事に時間を割くのはこちらも望むところではない」

 

「うぅぅ~~……っ」

 

既に随分話し込んでしまった。あまり長引くと男衆からの追求もあるだろう。

3人はリュックを置いて引き返そうとする。

 

「……待って!アタシも一緒に行く!!」

 

「「え!?」」

 

そして彼女らの背中にリュックが声をかけた。

 

「貴様もユウナのガードになると?」

 

「何言ったって親父は諦めてくんないよ……。

 だったらアタシがこっち側でみんなを止めないと。

 ……それに、アタシだって諦めらんない。

 何とか他の方法がないか、最期まで考えたいし……」

 

「リュック……」

 

「……どうするの、ユウナ?」

 

「私は、是非。でもみんなは大丈夫かな……」

 

アーロンは問題ないだろう。キマリはユウナが望むなら反対はするまい。

少年は元よりリュックの知り合いだから反対どころか賛同するかもしれない。

となれば残るは……。

 

「ワッカが問題ね。模範的な『エボンの民』だもの。

 リュック、アイツの前ではアルベド族だってこと、秘密にしておいて」

 

「りょうか~~い」

 

「……それと、あの少年はまだ召喚士の宿業を知らぬ」

 

「え?それって……」

 

「「……」」

 

「ユウナたちの望みじゃ。伝えるのはしばらく待ってやれ」

 

「……うん、わかった」

 

 

合流した一行に、リュックをガードとすることを伝える。

予想通りキマリと少年は反対せず、ワッカは彼女がアルベド族だと気付かなかった。

アーロンは彼女の目を見て察したが、覚悟があるならばと受け入れた。

 

新たな仲間を加え8人となった召喚士ユウナとガード一行は幻光河を離れ、グアド族の住む街『グアドサラム』へと入る。

 

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