『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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『ワッカにバレた時、怖かったんだ。
 何とかうまくやってきたこの旅が、全部壊れちゃうんじゃないかってさ』


第12話 マカラーニャ雪原

 

マカラーニャの森を進む途中、一行はバルテロという男と遭遇する。

ヒノカミとリュックは初顔合わせだが、他の面々は顔見知りらしい。ユウナと同じく旅をしているドナという召喚士のガードだそうだ。

彼はそのドナが『突然姿を消した』と大慌てで必死に探していた。

彼の憧れであるアーロンの言葉を受けて平静さを取り戻し、自分一人で見つけてみせると大声を上げながら走り去っていった。

 

何も知らないワッカがいるのでリュックに問い詰められないが、おそらくはアルベド族の秘密だろう。

まさか幻光河どころか雷平原を超えた先にまで現れるとは、本当に神出鬼没だ。

リュックはユウナのガードとなったが、引き続き別のアルベド族が襲ってくると身構えていた方が良いだろうと一行は意識を改めた。

 

しばらく進みマカラーニャの森の出口でアーロンに促され、ジェクトが息子である少年に残した10年前のスフィアを手に入れた。

伝わるどころか幼い息子には逆効果であったようだが、ジェクトはどうやら彼なりに息子を愛そうとしていたらしい。

スピラでの旅を続け父の足跡を辿る内に成長したことでようやく息子へと想いは届いたようで、少年は幾分晴れた顔をしていたのだが……だからこそシーモアが余計に哀れでならない。

 

想定以上に時間をかけてようやく森を出ると、そこはマカラーニャの雪原。

次の寺院は雪原を超えた先にある。シーモアも今はそこにいるという。再会は避けられそうもない。

そして雪原の入り口ではシーモアの執事のような立場のグアド族の老人、トワメルという男が待ち構えていた。

彼はユウナがシーモアとの結婚に了承の返事をしに来たと疑っていなかった。

 

ここに至るまで、道行く人誰も彼もが『ユウナとシーモアが結婚する』と口にしていた。グアド族が広めているらしい。

単純に嬉しくて騒いでいる、ということはあるまい。シーモアがグアド族を利用して外堀を埋めようとしているのだろう。付き合ってやる義理などないが。

 

「で、では、シーモア様とのご結婚は……!?」

 

「……はい。一度に色々と抱え込んでは躓いてしまいそうなので。

 ザナルカンドへの旅を終えるまで、返事はお待ちいただこうとお願いするつもりです」

 

「ユウナ様なら、そのようなことは……!」

 

「くどいぞ。旅を続けることが召喚士の使命だ。

 それを阻むなど許されん。エボンの老師ならば猶更だ」

 

「む、むぅ……仕方、ありませんな……」

 

筋が通っていないのはトワメルの方だ。

割り込んだアーロンに睨まれ渋々引き下がり、やがてマカラーニャ寺院へと歩いて去っていく。

目的地は同じだが同行しようとは思えない。

彼がシーモアの悪事を知っているかまではわからないが、いざとなれば寺院の教えよりもシーモアの指示を優先するだろうから。

 

トワメルの姿が見えなくなったところで一行はようやく寺院へと歩き出す。

 

 

「……待て!」

 

「「「?」」」

 

「機械の駆動音多数……アルベド族じゃ!」

 

「!?ユウナを囲め!」

 

雪原の真ん中でガードが一斉にユウナの周囲に立ち壁となる。当然、リュックもだ。

やがて彼らにも何かが近づいてくる音が聞こえる。

 

「んだありゃ!?」

 

「ジェットスキー!?」

 

「ジェッ……なんだって!?」

 

「速い!近づけさせてはダメ!

 すり抜け際に一瞬でユウナを連れていかれるわ!」

 

「させない!例えぶつかってこようとも、キマリはゆるがない!」

 

「違う、本命はその奥!……デカイぞ!!」

 

高速移動する機械に乗ったアルベド族たちが一行の周囲をグルグルと回る内に、真っ白な小高い丘の奥から一際大きな音が近づいてくる。

 

 

「リューーーーーーック!!!」

 

 

いつの間にか丘の上に立っていたアルベド族の男がリュックの名を呼んだ。

どうやらかなり近しい関係者らしい。

 

ギャヤヌウハナ(じゃまするなら)ヨミユダワミセガ(こいつがあいてだ)!」

 

いつの間にか周囲を走り回っていたアルベド族たちが遠ざかっていた。

入れ替わるように丘の向こうから巨大な大砲を備えた自走砲が姿を現す。

どうやら連中はあの兵器がここに辿り着くまでの時間稼ぎだったらしい。

 

マホウコ(まほうも)ショウカンジュウコ(しょうかんじゅうも)クフギヨレセタウゲ(ふうじこめてやるぜ)!」

 

「え~~っ!?」

 

「通訳!」

 

「『魔法と召喚獣を封印しちゃう』って!」

 

タッヒヤネ(やっちまえ)!」

 

催促されたリュックがアルベド族の男の言葉を伝えた直後、巨大兵器が丘から降りて一行の眼前に迫る。

直後、兵器は機体後部から何かを射出した。ドローンのようだ。

 

「あれは一体……!?」

 

「どうやら魔法やらを封じているのはあの機械らしいな」

 

ヒノカミの目には、ドーロンが周辺の大気中の幻光虫をかく乱している様子が見えていた。

すでに実体化している幻想体にまでは作用しないようだが、魔法の発動と召喚獣の呼び出しは無理そうだ。

頑強な金属の装甲を物理攻撃だけで破壊し尽くすのも手間がかかるだろう。

 

「ワッカ!飛んどるアレを撃ち落せ!

 少年はリュックと共に兵器の周囲でかく乱!

 キマリとアーロンはルールーとユウナの盾となれ!

 ワッカが邪魔者を撃ち落した直後、魔法と召喚獣で一斉攻撃!」

 

「「「了解!」」」

 

いつの間にか指揮官役に収まっているヒノカミの指示に、一行は躊躇うことなく応じる。

ヒノカミの筋力ならあの程度の兵器なぞ一撃で殴り飛ばせるし、炎を操る力などの彼女の能力は幻光虫由来でないため妨害も受けない。

だが彼女が何もかもをなぎ倒していてはユウナたちの成長に繋がらない。

それを理解しているから、ユウナもガードたちも安易に彼女に頼ることはしない。

彼女が直接戦闘を避け補佐に徹している時は、彼女がいなくても乗り切れる事態ということだ。

 

そしてヒノカミの予測通り、まもなく兵器は沈黙しアルベド族たちは逃げ帰った。

だがアルベド族の男の捨て台詞により隠し続けていた秘密が露呈した。

どうやら男はリュックの兄だったらしい。

エボンの敬虔な教徒であるワッカに、リュックがアルベド族だとバレた。

 

「……知ってたのか?」

 

ワッカが声のトーンを落とし、周囲を見渡す。

ユウナやルールーが気まずそうに視線を逸らす中、ヒノカミは一歩前に出て彼の正面に立つ。

 

「知っとるも何も、気付いていなかったのはお主だけじゃよ。

 教えられるまでもなく儂もアーロンもキマリも気づいていたさ。

 ……で?それの何が問題じゃ?」

 

「なっ!?問題あるに決まってんだろ!

 反エボンのアルベド族と一緒になんていられるかよ!」

 

「っ、アタシたちはエボンに反対なんか……!」

 

反論しようとしたリュックを手で制止し更に続ける。

 

「リュックはエボンに反する行いをしたか?」

 

「あぁん!?」

 

「リュックはガードになってから、儂と同じく機械を使っていない。

 今も召喚士であるユウナを守るために戦った。同族に刃を向けてまでな」

 

「……そりゃ、そうだが……」

 

「それとも何か?貴様はアルベド族……いや、『アルベド族の血が流れている』というだけで受け入れられぬか?」

 

「「「っ!?」」」

 

ヒノカミはわざわざ途中で言葉を変えた。

彼女がワッカに突きつけた踏み絵が何かを理解し、アーロンとキマリ以外の表情が強張る。

もしここでワッカが『是』と答えたのならば……彼とはここで別れなければならない。

 

「道中でも我らはリンの……アルベド族の店に何度か世話になった。

 渋々ながらも貴様がそれを受け入れていたのは、彼らが教えに背く行いをしておらんかったからじゃろう?

 同じように教えを順守していたリュックに何の非がある。

 『アルベド族であると隠していたこと』だと言うのなら、気付かなんだ貴様が悪い」

 

「うぐっ……」

 

「以前言ったよな?『無理解と拒絶は不要な争いを招く』と。

 貴様はエボンに歩み寄ろうとする者を、流れている血で判断し否定するのか?」

 

「いや、けど……あぁもうっ!わぁったよ!

 ……オイ!オレの前で掟破りなんざ許さねぇからな!!」

 

「……うん!」

 

「ケッ!」

 

言い包められたワッカはブツブツと愚痴を呟きながら寺院へと歩き出し、リュックはその背中を追いかける。

 

「……ごめんなさい。アナタには、酷い役ばかり押し付けてしまうわね」

 

「適材適所じゃ。それに、これも年長者の務めじゃよ」

 

「だってさ、アーロン。アンタもちょっとは見習えば?」

 

「……フン」

 

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