『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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『作戦聞いてる時に思ったけど……ヒノカミって結構変なところ子供っぽいよな』


第13話 マカラーニャ寺院

 

氷の一本道を超えて寺院に辿り着いた召喚士ユウナ一行。

入口でリュックがアルベド族と気づいた僧官に阻まれる事態も起きたが、彼女は正しくガードであると押し通した。

 

「……ようこそいらっしゃいました、ユウナ殿」

 

中に入るとシーモアが待ち構えていた。

彼の傍らにはトワメルがいて、彼からユウナの意思は聞いているはず。

 

「早速ですが、お聞かせいただきたい。

 私からの婚約の申し出……受けてはいただけないと?」

 

その上で改めてシーモアはユウナに尋ねた。

 

「大切なことだから、焦って決めるべきではないと思いました。

 だから旅を続けながら考えます。

 私が『シン』を倒す前に、必ずお返事します」

 

「そうですか……仕方ありませんね」

 

ユウナはシーモアに頭を下げ寺院の奥へと歩き出し、ガード一行は無言でその後ろに続く。

 

ギィィィ……

 

「……バレなかった……よな?」

 

試練の間に入り、扉が完全に閉じたところでワッカが恐る恐る声を出す。

 

「私たちから敵意を感じ取りはしたでしょうけど、元々アンタたちはシーモア老師が気に入らなかったみたいだからね。

 ジスカル様の件まで把握しているとは気づかれていないはずよ」

 

「じゃあ成功ッスね!」

 

「いや。ユウナの発言に対し奴の不穏な気配が増した」

 

安堵する若者たちにアーロンが冷や水を浴びせる。

 

「儂も同意見じゃ。バレてはおらんが、どうやら奴の望む状況ではないらしい。

 この作戦は失敗したかもしれんな」

 

「「「えぇっ!?」」」

 

「だったら次は……」

 

「『プランB』だね!」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

試練を超えて新たな召喚獣と契約し、寺院の広間へと戻ってきた召喚士ユウナ一行。

 

「よく戻られました、ユウナ殿」

 

「「「…………」」」

 

彼らを迎え入れたシーモアは大量のグアド兵を従え、ユウナたちの道を塞いでいた。

寺院の隅ではグアド族以外の人間たちが何事かと怯え震えている。

 

「何のつもりだ?」

 

アーロンが一番前に立ってシーモアとグアド兵たちを威圧し、他のガードたちがユウナを囲うように脇を固める。

しかしシーモアは妖艶な笑みを浮かべ、怯むことなく答えを返す。

 

「申し訳ありませんが、旅の終わりを待つほどの時間の余裕がないのです。

 ですからどうか、今この場で私からの求婚を受けていただきたい」

 

「断る、と言えばどうするつもりだ?

 ……尤も、この軍勢を見れば聞くまでもないようだが」

 

「それを答えるのは貴方ではない。

 ……さて、ユウナ殿?」

 

片手を差し出すシーモア。アーロンが一歩横に避け、ユウナが前に出る。

彼女は握っていたスフィアを前に掲げ、この場にいる全員に……シーモアやグアド兵だけでなく、他のエボンの民や僧官たちにも見えるようにしっかりと掲げる。

 

「……これが、私の答えです」

 

『儂がこれから言うことは、曇りなき真実……』

 

ジスカルのスフィアが再生され、寺院の広間に彼の告解が響き渡る。

突然死を遂げたエボンの老師による遺言。自身を殺す者の名を告げる。

 

『シーモアを止めてくれ。息子を……頼む……!』

 

「こういうことだ。……殺したな?」

 

グアド族以外の者たちが大きく目を開き、シーモアを凝視する。

 

「それが何か?」

 

だがシーモアも、そして彼が従えるグアド兵も一切動揺しなかった。

 

「まさか皆さまがご存知だったとは」

 

「兵士たちも全員グルか。ならばルカの魔物騒ぎも貴様らの仕業だな?」

 

グアド族は幻光虫を操る力を持つ。魔物を作り出し操ることができる。

ルカのスタジアムに突如現れた大量の魔物がどこから来たか不明のままだったが、グアド兵がスタジアムの中で作り出したとすれば説明がつく。

 

「強引な老師の交代劇による求心力不足を払拭するための自作自演……そんなところか」

 

「フフフ……ご明察です」

 

「父を殺して老師に成り代わり、私欲のために街や人々を傷つける。

 そのような方に従うことはできません!」

 

映像が終わったスフィアを隣のルールーに預けたユウナが明確に拒絶の意思を示す。

 

「シーモア老師……罪を償ってください」

 

「なるほど、私が自ら悔い改めるのを待つおつもりでしたか。

 ……残念です」

 

対するシーモアの返答はまっすぐ真上に掲げた腕。

そして合図に従い前に出るグアド兵たち。

予想通り、力づくでユウナたちを捕らえ全てを隠蔽するつもりのようだ。

一人一人は劣るとしても、これだけの人数が相手ではユウナとガードたちでも切り抜けることはできないだろう。

 

ただし、『とある一人』がいなければだ。

 

「フッ……」

 

アーロンは笑みを浮かべた。彼の後ろにいるユウナたちにも怯えた様子はない。

 

「……何?」

 

そこでシーモアも気づいた。一人、足りない。

そしてアーロンは迫るグアド兵を無視して頭上を見上げる。

 

 

「もういいな?」

 

「あぁ、言質も取れたし十分じゃろ」

 

 

「「「!?」」」

「な……!?」

 

頭上から声が聞こえた。

つられて見上げたシーモアとグアド兵たちの視線の先には、映像記録用のスフィアを構えた黒い服の小柄な女が宙に立っていた。

 

「さて、では『プランC』じゃ」

 

「「了解!」」

 

女はスフィアを寺院の出入り口の方に放り投げ、掌を叩きつけた。

出入口の近くにいたグアド兵たちは、女が投げたスフィアを回収しようとそちらを視線で追っていた。

 

「「「!?」」」

 

「な……!?」

 

彼らの視線の先に突如として、広間の奥にいたはずのユウナ一行が現れた。

 

「行け!!」

 

「任せたぞ!」

 

「ちゃんと追っかけてこいよ!!」

 

アーロンが飛んできたスフィアを掴み、他の一行を連れて寺院の外へと走り出す。

シーモアの指示を受けるまでもなくグアド兵たちが彼らを追いかけるが。

 

ガァン!

 

「「「!?!?!」」」

 

見えない壁が兵士たちを阻む。何度体当たりしても前に進めない。

扉を開き走り去っていくユウナ一行を、彼らは指をくわえて見ていることしかできなかった。

ヒノカミが掌を叩きつけた瞬間に、この寺院の広間は彼女の領域となっていた。

だから内側にいる人物を別の場所に転移させることも、指定した人物以外の出入りを防ぐことも呼吸と等しく容易い。

 

 

「さて、ジスカルのスフィアと先ほどの一幕。

 仮にスピラ中に広められれば、流石の老師と言えども隠し通せるものかな?」

 

「貴様……!」

 

 

『シーモアへの返答を先延ばしにしてこの場を切り抜けザナルカンドに向かう』。

これがユウナたちの作戦の『プランA』だった。

 

しかしシーモアが強硬手段に訴え、プランAが破綻した場合。

『グアド族以外も含めた公衆の面前でジスカルのスフィアを見せ、シーモアを糾弾する』。

これが『プランB』。

 

そしてこれでもシーモアが止まらぬ場合。

『プランBにおけるシーモアとグアド族の悪事を記録して新たな証拠とし、その事実をスピラ中に公開する』。

これが『プランC』である。

 

幸いにもマカラーニャの雪原入口のリンの店に討伐隊の隊士たちがいた。

彼らには事情をぼかしたまま、ユウナ一行が戻るまで店に滞在してほしいと伝えている。アルベド族の店員にもリュックが話をつけている。

流石に寺院には劣るが、討伐隊のネットワークもスピラ中に張り巡らされている。

数時間もあれば情報の拡散が始まり、数日でスピラ全土に届くだろう。

 

「その初動の数時間を稼ぐのが、儂の役目よ」

 

「っ、撃ち落せ!」

 

シーモアの号令に従い、グアド兵たちが空中に佇む女に一斉に魔法を放つ。

女は避ける様子もなく、いくつもの魔法が激突し爆発が起きた。

しかし煙が晴れた後には。

 

「「「……!?」」」

 

「その、姿は……!」

 

『かっかっか……『シン』とも渡り合う儂に、その程度の攻撃が通用するものか』

 

女の姿が、機械の鎧の鬼へと変貌していた。

ミヘン・セッションにてほぼ単独で『シン』と戦い退けた、正体不明の鬼人の姿に。

 

 

『儂がこの掌を離さぬ限り、貴様らはここから出られん。

 ……儂としては貴様らを皆殺しにしてやっても良いんじゃがな』

 

だが、ユウナはシーモアが悔い改めることを望んでいる。

そして今のヒノカミは、ユウナのガードだ。

無防備に広間の真ん中に降り立った鬼人は、ゆっくりとその場に胡坐をかく。

 

『見ての通り、今の儂は手は出せぬ。ついでに脚も出さんでおいてやろう。

 存分に攻撃してこい。そして自らの無力を思い知るがいい』

 

「貴様っ……!」

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